【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「勝利おめでとうございます!」
拡声器を持った司会の男がリングに上がってきた。
近くでも拡声器を使うものだからうるさい。
だが優先は俺より見ている客だ。
金を落としてくれる方が大事なのだからしょうがない。
「次の対戦相手、どうなさいますか?」
勝ったので、俺が次の相手を指名することになる。
「どうするかな……」
次を指名しろ、と言われても困る。
まだこのファイターとしての歴は浅く、ほとんどの人を知らない。
特別因縁がある人もいなければ、戦いたい人もいない。
見た目だけじゃ強い弱いすら判断もできないのだった。
「ん……あれは」
会場を見回していて、俺は一つのことに気づいた。
観客の中に見知った奴がいる。
「デラとパシェか」
外の観客側にドレスの女性と鎧姿の護衛がいる。
ドレスの女性はデラ。
俺と目が合うとニコリと笑って手を振っている。
そしてデラの横にいる見慣れたデカい鎧はパシェだった。
距離があるのでこちらは目が合っているのか分からないが見られているような気はする。
「酷い奴らだな」
こっちは奴隷として必死に頑張っているのに、そっちは優雅に試合の観戦かと思ってしまう。
なんだってこんなに扱いが違うんだ。
「どうかしましたか?」
「いや……とりあえずあいつで」
しかし今は俺が次の対戦相手を選ぶのをいまや遅しと待っている。
あまり時間をかけると客の俺に対する印象も悪くなる。
仕方ないので、奴隷側の控え室からこちらを見ているファイターを一人適当に指名する。
「ちぇっ……見てろよ?」
久々にデラとパシェを見れた嬉しさはあるものの、やっぱり納得のいかなさが沸々と湧いてきてしまう。
そんな怒りをぶつけるように俺は戦う。
「なんと破竹の勢いで、エリシオ十連勝〜!」
「しゃあ!」
休まず戦い続けて、十人の相手を倒した。
会場にはエリシオコールが起こるほど盛り上がりを見せ、外の観客の中にも俺のことを知りたがっているような動きもちらほらと見えていた。
「次はどうしますか?」
「そろそろ疲れたし、リタイア……」
十連勝もすれば俺に入ってくる金も相当なものになる。
観客として見ているギヴォスも目がお金になっているレベルだ。
「おおっと、ここで逆指名が入った!」
疲れてきたのでやめようと思っていた。
勝利数が少ないのにリタイアするとブーイングものだが、流石に十回も勝てば文句は言わせない。
そう思っていたのだけど、流れが変わった。
「ランク十位マルコスからの逆指名が入りました!」
外の観客側の上にも控え室があるのだが、こちらにいるのは有象無象のファイターたちではない。
そちらの控え室は個室になっていて、ブルームランキングクラブで成績上位のファイターたちが控え室を与えられている。
一位のキングから十位までの全体の中から選ばれた十人がそこにいるのだった。
指名してもろくでもない相手なら拒否することすら可能な上位十人には、もう一つの特権がある。
それが逆指名権だ。
文字通りファイターを逆に指名できる権利のことで、俺は十位の奴から逆指名を受けたらしい。
俺は外の観客側の控え室に目を向ける。
端の控え室にいる男が不愉快そうな顔をして俺のことを見下ろしている。
「受けますか? それとも拒否いたしますか?」
一応拒否もできるが、拒否すれば二度とリングには立たせてもらえない。
実質的に拒否権なんてないのだ。
「受けるよ。今日で十位交代だな」
俺はかかってこいと指を動かしてジェスチャーする。
マルコスという男の顔に明らかに怒りが見えた。
今日は上位のファイターに挑むつもりはなかった。
軽く目立って、金だけふんだくっていけたらそれで十分だと思っていた。
だが相手の方から戦ってくださいと指名してくるのなら拒否はしない。
俺が指名を受けるとまたしても会場のボルテージは上がる。
「調子に乗った新人を潰そうって腹なんだろうな」
普通上位のファイターが、初めて出てきた新人を逆指名することなどない。
そんなことしたらあからさますぎて上位のファイターの方が批判される。
しかし俺は十連勝を成し遂げ、悪目立ちしすぎてしまった。
ここらで負かして鼻をへし折ってやろうということなのだ。
「そう簡単にいくかな?」
俺を止めようとするのは立派だが、戦う以上は負けるつもりなんてない。
逆に鼻をへし折ってやる、とリングで対戦相手のことを待つ。
現れたマルコスというファイターはやや細身の坊主頭。
険しい顔をしているが、ファイターというよりはお坊さんみたいだなと俺は思っていた。
手には槍を持っている。
ここまでやはり剣を使う人がほとんどであったので、槍使いはだいぶ珍しい。
ただどんな見た目をしていてもマルコスは上位の十人に入るファイターであり、こんなところに送られるような奴隷であるということは忘れてはならない。
「たまたま勝ち残ったからと調子に乗ってるようだな」
「たまたまに見えてるなら、いますぐ医者に目でも見てもらってくださいよ」
「はっ! お前こそ今から医者の予約しておくんだな!」
「坊主頭の変態に暴言吐かれて心が痛いんですって?」
「この……」
少なくとも減らず口なら負けない。
挑発を返してやると、マルコスはあっという間に怒って青筋を立てる。