【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「まあ作戦ならば止めるわけにもいかないか。でも……危険だぞ」
俺が魔力を使える悪魔祓いだと聞いてもクイラーデはなお心配そうな顔をする。
「……悪魔はファイトクラブに?」
そういえば悪魔がいると俺に忠告しようとしていた。
ファイトクラブの方に悪魔がいるとクイラーデは突き止めているのだろうか。
「……おそらくな」
「先輩はもう五年近くここにいると聞いていますが、何かわかったことは?」
クイラーデが聖職者だとは思っていなかった。
なぜならもう長いことグルデンダカンにいると聞いていたからだ。
一年二年ならまだしも五年もこんなところにいるのはなかなか楽なことじゃない。
流石にそれだけいれば情報も何か掴んでいるはずだ。
「はっきりとしたことは難しい。お前も分かっているように、そこら辺に悪魔がいるわけじゃない。最初は鉱山が怪しいと思っていたのだけど……どうやらそちらはただの死体供給場所でしかないようなんだ」
五年間遊んでいたわけではなさそうだ。
「死体の供給になど今はあまり興味はないだろう。悪魔が注目してるのは……お前が活躍したブルームランキングクラブだ」
なんとなくそうかもしれないと思っていたことを突きつけられて、俺はとりあえず神妙な顔つきをしておく。
「あそこは……いわば悪魔のための飼育場だ」
「飼育場?」
「新鮮で鍛えられた肉は悪魔にとっても上質なエサになる。特にトップ10入りしたファイターは一度でも負けると行方が分からなくなる」
「それは悪魔に……」
「そういうことだ。これまで確実な証拠はないけれど、そうだと俺は踏んでいる」
まあ、悪魔がいると分かっているなら俺が潜入することもなかった。
まだ確実なことがないのは分かりきっている。
「ただ、もうそれなら遅いですね」
俺は肩をすくめてしまう。
「俺はもう十位なんですよ? 目立つなと言われても後戻りはできません」
「それは……そうだが」
戻るつもりはないが、もはや戻れないところに俺は足を踏み込んでいる。
話に聞く限り十位以内のファイターになると、悪魔から見てA5ランクの和牛みたいなものだろう。
ファイター辞めたいですと言っても辞めさせてもらえるか分からない。
それどころか、負けてもいないのに他の負けた奴らと同じ結末になってしまうこともありうる。
「ともかくしばらくは目立たないようにしてろ!」
「そうしたいところなんですけど、周りがそうさせてくれるかが分からないですね」
「……お前もまだ若いのに、なんでそこまで命をかけるんだ?」
「簡単ですよ。悪魔のクソ野郎が嫌いなんです。命かけるほどに」
ーーーーー
目立つな。
そう言われたものの十位のファイターになった俺は試合に招待されてしまう。
そして招待とはいうものの、実質的には強制力を持った招集と変わりない。
悪魔に目をつけられるのは困る。
目立ちたくなくても俺はブルームランキングクラブの控え室に行くしかなかった。
「…………………………何が」
悪魔を見つけ出してやる。
それぐらいの気持ちでブルームランキングクラブにやってきた俺だったが、今はただ控え室に立ち尽くしていた。
「何があったんだ?」
リングがある会場は静かなほどだった。
相変わらず観客がいて、歓声は上がっている。
しかし前回来た時と様子が様変わりしているのだ。
おそらく俺以外に気づいている奴は悪魔ぐらいしか分からないような変化。
それは幽霊が一体もいなくなっているのだ。
人の活気が溢れて、多くの思惑行き交うリングには多くの幽霊がいた。
不思議とリングにはいなかったのだが、観客席を埋め尽くすほどに幽霊が集まっていて、俺には歓声が倍ぐらいに聞こえていたのである。
「あんなにいた幽霊が、一体すらいない……」
それなのに今会場に幽霊はいない。
会場がだいぶスッキリして見える。
歓声も半分、それどころか半分以下に感じられるほどだ。
「悪魔が、いる」
幽霊が突然全員成仏したなんてあり得ない。
となると可能性は一つしかない。
悪魔がいるのだ。
幽霊は悪魔に喰われてしまったという可能性しかなかった。
「とんでもないのがいるな……」
悪魔がいるとしても、化け物みたいなのがいると俺は背中に冷たいものを感じていた。
冷や汗が止まらない。
会場にいた幽霊がどれほどのものが知らないか、十や二十の世界ではない。
ここでどれだけの人が死んだのか分かるほどにいた幽霊が全て喰われるなんて、異常な出来事だった。
悪魔だって幽霊を食べるのに限度がある。
すぐに吸収して力に変えるとしても、何百と魂を喰うことはできない。
「普通は……な」
複数の悪魔がいてもこの数は食い尽くせない。
何百という魂を食い尽くす悪魔がここにいるということが結果として俺の目の前に現れている。
一等星や二等星どころではない。
それどころか四等星、それ以上の悪魔がいる可能性がある。
「お世話をさせていただきます。何かお申し付けなさることはありますか?」
俺の控え室に一人の女性奴隷が入ってきた。
お世話をしてくれる人で、俺が死ねと死ぬぐらいになんでも従ってくれる。
「水をくれ……二杯ぐらい持ってきてくれ」
あまりの異常事態に流石の俺も動揺するしかなかった。