【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「切り札だったんだけどなぁ……まあ、しょうがないか」
神聖力と違って魔力だけなら俺が聖職者だとバレることはない。
しかしこんなところで切り札を出すことになるとは予想外だった。
どこかでは必要になるだろうと思っていた。
ファイターの中でも強い奴なら魔力ぐらい扱えてもおかしくない。
だからクイラーデにも魔力の方を見せたのだ。
「なかなか面倒な武器だな!」
アダモズは魔力で体を強化して大きな鎌を振り回す。
普通の武器と違うので剣で受けるのにもいちいち神経を使う。
長くて湾曲した刃を使って広く攻撃してくるだけじゃない。
刃を回り込ませて引いたり、単純に鎌を突き出すだけでも広い攻撃になる。
もちろんデカい鎌を相手にした経験などなくて意外と苦戦する。
何を思ったらこんな癖の強い武器を使うのか謎だった。
ただ戦い方は分かってきた。
「なら……これでどうだ!」
俺は振り下ろされた鎌をかわして、アダモズと距離を詰める。
細かくコントロールするのが難しく、大きく動かす武器なので懐に入られると弱い。
アダモズの方がオーラの扱いも下手で、俺に比べたらまだまだである。
「くっ……」
近づかれると嫌なのか、アダモズの表情が曇る。
デカい武器の対処法というのは割とどれも似たようなものだったりする。
オーラもどの程度使えるのか隠しておきたいので、あまり使いたくない俺はここで勝負を決めるつもりで攻撃を仕掛ける。
「…………一つ提案がある」
アダモズが剣を受け止めて押し合いになる。
オーラという条件に差がなくなると、細い体をしているアダモズより俺の方が力は強い。
グッと押し込んで顔が近づいたところで、アダモズが密かに声をかけてきた。
「なに? 提案?」
「負けてやる。だから手加減してくれ。手足は切らず、命も取らないでくれ」
「…………」
かなり不思議な提案。
乱れた髪の間から覗く目がじっと俺を見つめている。
「早く、決めろ」
「…………いいぜ!」
目的は分からないけれど、勝たせろでもなく五体満足に負けさせてくれなら聞いてやってもいい。
逆指名したアダモズの方は降参ができない。
オーラを使っての戦いは見栄えもするし、ある程度戦ったところで負けても文句は言われないだろう。
「さて、どうするつもりかな?」
一度互いに距離を取り、最初のような攻防が続く。
どう負けてやるつもりなのか様子を見ながら戦う。
「おおっとぉー? アダモズの様子がおかしいぞ!」
「……なんだ?」
アダモズの体が不自然にふらついた。
するとアダモズのまとっていた黒いオーラが大きく揺らぐ。
そしてそのままアダモズのオーラが消え失せる。
「……なるほどな。うまい手だ」
アダモズは負けるためにオーラを消した。
しかしただオーラを消すと、手を抜いたのだとバレてしまう。
あたかも魔力切れでオーラを維持できなくなった、という風を装った。
これなら負けてもしょうがないと思える演出で、思わず唸ってしまうようなやり方だ。
これが演技なら俺が思っているよりオーラをコントロールできる人だったのかもしれない。
「行かせてもらうぞ!」
何にしても今が攻めるチャンス。
俺は力任せに鎌を押し返す。
オーラありの俺の力に敵わずアダモズは大きくバランスを崩す。
一瞬、目が合う。
無防備に体を晒し、死なないようにしてくれよ? と訴えかけるような目をしている。
ただ実際は死なないようにしながら、手加減していないように見せかけて相手を倒すのは難しい。
「結構痛いぞ!」
俺はアダモズの肩口から脇腹にかけて斜めに剣を振り下ろした。
浅すぎず、かといって深すぎず。
ちゃんと斬ったと見えるような一撃にしながらも、手足は無事で治療すればのちにも響きにくいように細心の注意を払った。
血が飛び、俺の頬について流れ落ちる。
「……ふっ、見事だな」
アダモズは痛みに歪んだ顔で少しだけ笑みを見せると、そのままゆっくりと後ろに倒れてしまった。
「アダモズが倒れたー! 起き上がれない! この勝負、十位のエリシオの勝利だー!」
いいから早く運んで治療してやれよ。
俺はそう思いながらも観客の歓声に手を振りかえす。
アダモズが担架に乗せられて運ばれていく。
あとはどんな治療を受けられるか、とアダモズの気力次第となるだろう。
「エリシオがこれで八位に昇格だ! 疾風怒濤の勢いは止まりません! このままランキングを駆け上がるのかー!」
八位だったアダモズを倒したので俺が八位になる。
奴隷側観客席上の控え室にいるランキング外のファイターたちは複雑な顔をしている。
狙い目だと思った十位の俺が、実は魔力なんて切り札持ちだった。
割と衝撃的だっただろう。
もしかしたら挑まなくてホッとしているかもしれない。
「さて次はどうしますか?」
「魔力まで使って疲れた。今日は終わりにする」
目立つなと言われたし、悪魔がいるから目立たようにしようと思っていたのに魔力まで使わされて目立ってしまった。
流石にこれ以上はリスクの方が大きい。
俺は適当に一人のファイターを次に選んでリングを降りる。
「お待ちしておりました、エリシオ様」
控え室に戻ると一人の老人が待ち受けていた。
執事服を着た老人は俺に向かって深々と頭を下げる。
「……何のご用ですか?」
もちろん老人のことなんて俺は知らない。
ただ、嫌な予感がする。