【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「ランキング二位のウロフィスまで敗れた! 誰にも一位の座は譲らない、そういうことなのかー!」
その日のブルームランキングクラブは異様な熱気に包まれていた。
新たに選出された十位のファイターが一位のゴーデッドに挑戦状を叩きつけたことを皮切りに、ランキングの下の方から順にゴーデッドに挑んでいった。
八位の俺は黙して動かず会場のざわつきを誘ったが、ゴーデッドが挑戦者を返り討ちにしていく熱狂の前には俺の存在などすぐに忘れられた。
ゴーデッドの流石の実力には俺も舌を巻いてしまう。
ランキングに載るということは決して弱くない相手のはずなのに、ゴーデッドは圧倒的な力を見せつけていた。
もちろん事前に聞いていたように仲間になったランカーに対しては、倒しながらも怪我をさせないようにという配慮までしている。
こうして二位のファイターも負けた。
そもそも二位のファイターはゴーデッドの味方なので、負けるのは分かっていた。
「はあ……やるしかないか」
俺を除いた八人がゴーデッドに挑んで敗北した。
こうなると注目されるのは俺の動向だ。
こうなることは既定路線だった。
突如として現れた魔力を使える若いスターと長い間一位の座を守り続けている王者。
俺はリングを見下ろす控え室の窓際に立って、ゴーデッドのことを指差す。
ゴーデッドは俺に対し手招きし、世紀のマッチングが成立してしまった。
俺としてはどこかでゴーデッドがどこかで負けてくれないかなという思いもあったりしたが、グラトンの思惑通りに全ては進んでいる。
「ん……あんたは……」
リングに向かうのに控え室を出ると、グラトンの横にいたメイドが立っていた。
グラトンに仕えているということは、この女も悪魔なのだろう。
手には何か細長い箱を持っている。
「何の用だ?」
俺はこの場でメイドを倒してしまいたい気持ちを抑えて、平然とした態度を装う。
「落ち着いてらっしゃいますね。さすがはさすがはご主人様がお選びになられた御仁です」
「そりゃどーも。これから俺は命かけて戦うんだ。集中を乱さないんでほしいんだけど」
悪魔に褒められても嬉しくない。
俺は険しい顔をしてしまうが、試合前で気が立っているように見えるだろう。
「こちらをお使いください」
「……剣?」
メイドが箱を開く。
そこには一本の剣が入っていた。
「ゴーデッド様はお強いので。用意してある武器では魔力に耐えられないかもしれないので」
「……使わせもらうよ」
ほんの少し悩んだけれども、俺は剣を手に取った。
ちゃんとした武器がいることは間違っていない。
悪魔から武器を受け取ることは気が引けるものの、俺は差し出された武器のことが気になった。
「それではご武運を」
メイドは深々と頭を下げるとさっさとグラトンのところに戻っていく。
「…………これは。あのやろ……」
メイドがいなくなったことを確認して、俺は一度剣を抜く。
剣の根元に銘が刻んである。
「悪魔祓いの剣……だな」
ヴェルデータには刻まれていないものの、ブレイムズで作ってもらった専用の武器には誰のものなのか分かるように銘が刻んである。
剣からうっすらと魔力のような力を感じておかしいと思ったが、銘が刻まれているのを見て確信した。
この剣は元々悪魔祓いが使っていた剣である。
俺は怒りで顔を歪ませる。
どうやってこの剣を手に入れたのか、嫌な想像しかできない。
「…………ありがたく使わせてもらうよ」
だが今の状況においては渡りに船というぐらいの武器だろう。
ヴェルデータには及ばないだろうが、悪魔祓いが使っていた剣ならば魔力に対しても親和性が高い。
これから起こる悪魔との戦いにも悪くはない。
「この剣を俺に渡したこと……後悔させてやる」
まさか悪魔祓いに悪魔祓いの剣を渡しているとは思わないだろう。
誰の剣かは知らないけれども、先輩の無念は俺が晴らしてやる。
「よし……」
剣を鞘に収めて、俺はリングに向かう。
会場のボルテージは最高潮。
新星が絶対王者を倒すのか、あるいは絶対王者が絶対王者として君臨し続けるのか。
みんな早く結末を知りたくて、熱を帯びていた。
「……あまり疲れてる感じはしませんね」
「そうでもないさ。この歳になると連戦は疲れる」
俺以外のやつが戦ってゴーデッドを消耗させるという作戦だったが、ゴーデッドが疲れているようには見えない。
これからのことを考えると消耗していると困るのだけど、仮に本気で戦うことになっていたら明らかに作戦ミスだった。
「そろそろ動き出すだろうな」
「俺たちはできるだけ踊りましょうか」
「そうだな」
「……どうして魔力を」
ゴーデッドの体が黒い魔力のオーラに包まれる。
「お前が魔力を使えることを知っているのに、使わなければ不自然だろう?」
「ちょっと戦ってからでもいいような……まあ、しょうがないか」
俺は剣を抜いてオーラを解放させる。
戦う前からのオーラ合戦に会場は盛り上がる。
「それでは……いくぞ!」
ゴーデッドが一気に切りかかってくる。
手加減してくれるはずが、なかなか危険な一撃だった。
「ちょっ……」
そのまま連続して剣を振るい、俺はギリギリのところで防御する。