【第一章完結】霊が導き、霊を導く悪魔祓いの異世界霊能者~異世界で霊視持ちの俺、聖魔の力で悪魔祓いやってます~
「良い若者じゃないか。話で聞いていたよりもな」
エダモスディは人の良さそうな笑みを浮かべて俺の腕に手を添える。
見た目上は人となんら変わらない。
「ありがとうございます。どうしてここに?」
いきなりの遭遇。
俺の心臓はうるさいぐらいに脈打っているが、表面は平静を取り繕う。
多少緊張しているように見えたところで、領主を前にしたと思えば不自然に見えることもない。
「領主様は時折こうして労いに来てくれるのさ」
「この仕事はキツイものだ。そんな仕事についている君たちを労うのは当然のことだ」
怪しさがすごい。
ご立派な目的で来てくれているようには聞こえる。
けれども普通の人はわざわざ焼却炉係を労わりに来ることはない。
民間で委託されているならともかく、今は教会が管理しているのだ。
先入観も偏見もなく考えたら人が良いと感じるのだろう。
だが悪魔がやっていると考えれば、やはり目的がある。
「確認しに来たんだろうな……」
きっと焼却場の様子を見に来たのだ。
死体の供給が途絶えたから気になって仕方なかったのだろう。
だからわざわざ自分で足を運んできたのだと俺は推測した。
目的がどうあれ、これでエダモスディと焼却場が繋がった。
時折来ているという言質もとった。
「この仕事は辛くないかい?」
「結構大変です。汗をかくし、重労働。ただ上司はいい人です」
「分かりやすいおべっかをいいおって」
心から褒めたつもりだったのだけどマーデルは渋い顔をする。
「ふふふ、まあ仲良くやれているようだな。少しは負担が減ってよさそうだな」
荒い性格になったと聞いていたのに、今のところはそんな片鱗もない。
人格者っぽい雰囲気だ。
「こき使える奴が増えたのはありがたいですよ」
「プニマッツの方はどうだ?」
「相変わらず寡黙に仕事してますよ」
部屋の中にプニマッツはいない。
焼却炉から骨を取り出しているんだろう。
「あいつももう二年になるか」
「二年? 知り合いなんですか?」
エダモスディの言葉に俺は引っかかった。
二年という言葉も引っ掛かりを覚えたが、口ぶりから以前からの知り合いであるように感じられた。
「ここを紹介したのが私なんだ」
「紹介……ですか?」
「プニマッツのやつは元聖騎士だ」
「あっ、そうなんですね」
それは知らなかった。
身辺調査はしていたはずなのだが、そんな経歴はあっただろうか。
情報管理が徹底もしていないので、過去の経歴については難しいところがあるのは否めない。
「魔物との戦いで足を悪くしてな」
「普通に歩いてますけど?」
足が悪いと言うがマーデルのように杖をついているならともかく、プニマッツにそんな雰囲気はない。
「日常生活に不便はない。だけど跳んだり走ったり、まして戦うなんてことはできないんだ」
激しい運動ができない後遺症の残る怪我。
時々聞くような話である。
神聖力での治療も万能ではなく、遅れるほどに治せる可能性は低くなる。
何かの原因で治療が遅れて、怪我が完治しなかったのかもしれない。
「雑務をしながら各地の教会を転々としていたが、ここに来た時にエダモスディさんに出会って死体処理の仕事を勧められたらしい」
「力仕事、それに聖騎士なら死体もこんな仕事の評判も恐れないだろうと思ったのだ」
「それから二年さ。相変わらず無口だが、落ち込んだような顔見せることは無くなった」
「そんな過去が……」
「人のことを勝手におしゃべりですか?」
「あっ、すいません。勝手に聞いて」
いつの間にかプニマッツが後ろに立っていて俺は驚く。
「どうせお前が自分の口で言うことなどないだろう」
マーデルは悪びれる様子もなく、フンと笑う。
「まあ、構いませんが。どうせ嘘でもなんでもないのです」
プニマッツはどかりと椅子に座ると自分の荷物から昼食を取り出す。
俺が戻ってきたので交代ということだ。
「……はぁ」
プニマッツと交代で焼却炉がある部屋に向かう。
幽霊が少なくなって少し静かになった部屋には山盛りの骨が置いてある。
俺はそれをハンマーで砕いていく。
エダモスディはその後すぐに帰っていった。
あまりプニマッツとは話しているような様子はなかったなと俺は一応観察していた。