レン
その夜、レンは何度も窓の方を見た。
カーテンの向こうに、誰か立っているような気がしたからだ。
「……気のせいかな。」
そうつぶやいて布団を頭までかぶる。
しばらくすると、また気になる。
そっと顔を出して窓を見る。
やっぱりいる。
細長い影が、じっとこっちを見ているような気がする。
風が吹くたび、ゆっくりゆっくり揺れる。
「……。」
レンは布団にもぐり直した。
朝になると、不思議と怖さはなくなっていた。
学校から帰ると、レンは庭へ出た。
「昨日の夜、あそこに誰かいた気がしたんだけどな。」
窓の外まで歩いていく。
すると、
「あっ。」
一本のひまわりが咲いていた。
昨日までつぼみだったはずなのに、大きな黄色い花を開いている。
長い茎が窓の高さまで伸びていて、ちょうどレンの部屋をのぞくような場所だった。
「きみだったのか。」
レンは思わず笑った。
ひまわりは風にゆらりと揺れる。
まるで、
「おはよう。」
と言ったみたいだった。
レンは花の前にしゃがみこんだ。
ひまわりは、朝になると太陽の方を向いて咲く。
でも、つぼみのころは、一日かけて太陽を追いかけるように向きを変えながら育つという。
毎日、お日さまを探していたから、こんなに背が高くなったのかもしれない。
「夜は、ぼくの部屋を見てたの?」
もちろん返事はない。
風が吹いて、黄色い花びらがふるりと揺れただけだった。
その夜。
レンはもう窓を気にしなかった。
カーテンのすき間から月明かりが差し込む。
窓の向こうには、昼間見つけたひまわりが静かに立っている。
昼は太陽を見つめて、
夜は家を見守ってくれる。
そんな気がして、レンは安心して目を閉じた。