召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
物部かすみ、神室霊華とデートする (その後)
物部かすみが大阪で起きた連続殺人事件の真相を話し終えた時、霊能力者の会合が行われている会場は水を打ったような静けさに包まれていた。神室霊華も、まさかあの事件の裏でそのような事があったとは想像できず、ただじっとかすみを見つめ続けていた。暫くして、神室霊華は我に返ったかのように表情を取り戻し、かすみに幾つか尋ねた。
「かすみさん、その息子さんは
今どうされているのですか?
それと、怪我をされた方は
今もお元気なのでしょうか?」
それに対しかすみは、今の状況と彼に起きたこととをいんで話した。
はその後病院で意識を取り戻したが、滝沢警部補が病室で事情聴取をしたところ、柳田浩一は全く何も覚えていないと滝沢に話した。そして、そもそもなぜ自分が病室に居るのかということすら、全く記憶していないらしい。いや、正確には、最初の殺人事件が起きた頃からの記憶がはっきりしないというのだ。勿論、これが演技であることは十分に考えられるため、後日、本人の同意の下ポリグラフによる検査を行うが、そこに嘘偽りを見い出すことはできなかった。そのため、結局この事件で柳田浩一を起訴に持ち込むことは不可能と判断した検察と警察は、彼が未成年であることを考慮して釈放することになった。しかしそうは言っても被害者が出ている事実はあるため、もしかしたら後日民事訴訟が起こされる懸念はあるだろう。そこまで警察は面倒見る必要はないが、滝沢は何を思ったのか、柳田浩一のこれからの進路や将来に関する相談に乗るようになったらしい。そてし今は、高校を中退し、滝沢の斡旋した仕事先で元気に働いているという。
そして、怪我を負っただが、実はかなりの重傷になった。通常の刃物による刺し傷であれば、数針縫ってお終いになる。尤も汚れていたり何かに汚染された刃物だと、刃物に付着した菌が血液中に入り込み、敗血症を引き起こすことがあるのだが、遠藤佑の場合、それらのケースとは全く異なり、医者でさえ首をかしげたくなる症状を引き起こした。それは左足そのものの壊死である。しかも救急車で運ばれたその日のうちに壊死したのである。そのため、彼は左足そのものを失うという大きな代償を負ってしまった。強い怨念や霊力を持つ霊体のエネルギーは、この世界の生物にどのような影響を及ぼすのか、残念ながらそのような研究は一切なされていない。だが現実には、幽霊に手や足を掴まれた途端、そこに手形が残り続けるとか、その部分が腐ってくるなどの事例は存在し、現にそう言う映像が投稿されたりするのを目にした方もおられるだろう。何れにしても、何かしら我々の知らない物理現象や物理法則にったことではあると思われる。尤も遠藤佑が、過去の虐めの代償として他の3人と同じように自分の命を失わず済んだことは、幸運と言うべきだろうか。
かすみから説明を聞いた神室霊華は、再び絶句した。まさか、そんなに直ぐに人の体が壊死するのだろうか?もしそれが本当であれば、
「我々がもし除霊中に霊体に襲われた場合、
そうなる危険性が常にある
ということですね?」
「はい、そうなります」
だから、除霊は細心の注意を払ってすべきである、とかすみは結論付けた。そして神室霊華はに立ち上がって、かすみを抱きしめた。
「かすみさんもそうならないように
気を付けてくださいね」
「有難う、霊華さん。
お互い注意して事にあたらないとね」
かすみのかなり衝撃的な話の後で神室霊華は自分の最近の体験を話すのだが、やはりかすみの話と比べると軽く感じてしまうようで、自虐的に
「すいません、皆さん、かすみさんの話の後で
私のつまらない体験を話すのお許しください」
と言って、つい先日起きたナラモトの件を掻い摘んで話した始めた。そして、
「降霊術において、不意に別の霊体が降霊された時、
どのように対処すべきなのか、正直私は全く
経験がなく、あたふたしてしまいました」
そんな時、丁度ここにいるかすみが家に遊びに来ており、彼女の助言で事なきを得て無事解決できたことを、神室霊華はかすみへの感謝と共に話した。そして、
「尤も、冷静に考えれば実は簡単な処置で
済んだのですが、冷静にならないと
とんでもないことになりかねない、
と言うことを身をもって体験することで
改めて気づかされました」
そして、
「ここにおられるかすみさんの師匠にあたる方が
よく仰っているのが、無理せず冷静でいる事。
これを常に心がければどんな問題も対応できる、
まさにこの言葉に尽きると思いました」
すいません、余り話がうまくまらなくて、と頭を下げて謝罪するが、会場からはまた割れんばかりの拍手が巻き起こった。かすみは、「もう、ええわ、こいつら」と首を横に振りながらポツリと呟くのだった。
かくして、神室霊華の話で霊能力者の会合は幕を閉じた。その後、この会場で立食形式のパーティーが催された。当然、この場の主役は神室霊華であるが、もう一人物部かすみがそこに加わったのは、かすみとしては漸く彼らから認められたと見るべきだろう。
そして帰りの車の中で、かすみは助手席に黙って座って車窓から見える夜景をぼんやりと眺めていたが、ふと神室霊華が一つお尋ねしたいことがあるのですが、と言ってかすみに問い掛けた。それは、
「かすみさん、乳首ドリルって何ですか?」
であった。その時、かすみの目に怪しい光が宿ったことに運転中の神室霊華は気づいていない。
「ほー、霊華さん、乳首ドリルが気になるんやね」
「何か、かすみさんの得意技とか仰ってましたから
一体何なのかが気になっただけですが」
実は玲は少しずつマスターしてるんですよ、とかすみはいた。正確には、玲は無理やりやらされている、と言うことなのだが。そんなことはつゆ知らず、神室霊華は、
「えー、あの玲さんもされているのですか?」
と益々興味を持ってしまった。これはかすみにとっては思う壺である。そしてかすみは、下卑た笑いで神室霊華を危ない世界に引きずり込んだのだった。
その後、家についてから神室霊華は自室でかすみから乳首ドリルをされたのだが、その時彼女の絶叫が夜空に木霊したことは想像に難くない。と同時に、かすみの満面の笑みと勝利の雄叫びが闇夜に轟いたことは恐らく容易に想像できるであろう。ああ、ここにまた一人犠牲者が出てしまったのだった。