召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
ロムリア探訪記: 12日目 (後編)
その後ロメロ5世は最神玲とエンペラールに礼を言ってから、エンペラールと地球への召喚に関する打ち合わせをするためその場に残り、玲は1人エンペラールの屋敷に戻って行った。そして1時間程してから、エンペラールも戻って来たのだが、早速玲に対し小瓶を手渡した。それはロメロ5世の血液の入った瓶である。玲は直ぐに部屋に戻り、冷凍装置を召喚してからその小瓶を冷凍保存した。なお冷凍装置は召喚物のため、地球に戻るときには一旦解除することになるが、小瓶については短時間であれば冷凍解除されても問題ないと考えている。それからエンペラールの執務室に戻り今日の予定を確認することにした。だがその前に、やはりと言うべきか、あの人が早速玲に色々と質問して来た。
「ねえねえ、レイさん、
先程のあの乗り物って何ですか?
どうやって動くのですか?」
:
「あの時に見せてもらった
食べ物は何ですか?
それよりもあの色鮮やかな器は何ですか?」
:
「風の力や太陽エネルギーで
どうやって発電するのですか?」
:
エンペラールの質問は尽きることなく続いたのだった。
漸くエンペラールからの質問タイムが終わったところで、少し遅いランチとなった。今日のランチは数あるロムリアの郷土料理の一つを扱う店だという。時間的にはピーク時を過ぎたので、直ぐに店内に案内された。ちなみに玲は、店に入る前から店内から漂う香ばしい匂いに感動していた。何となく炭火焼きの焼き鳥屋を思わせる香ばしさを感じたのだ。だがロムリアに焼き鳥屋があるとは思えないが、実は玲の想像した焼き鳥に近い料理が提供されるのである。地球で言うところの草食恐竜のお腹の柔らかい肉を鉄の串に刺し、その肉をロムリアに昔から伝わる香辛料や野菜を煮込んで作られるソースを混ぜ込んだタレに浸してから炭火で焼くと言うものである。ただし、焼き鳥屋では店の大将が1本1本丁寧に焼き上げるが、ロムリアでは各自のテーブルに備え付けられているコンロで各自が焼くことになる。丁度焼き肉屋のスタイルと言った方が分かり易いだろう。そしてここからが更にロムリアのオリジナルになるようで、ロムリア人が主食としているパクアと少し異なる品種のパクアがあり、それを2ミリ程の粒状に丸めて蒸したパスタが店で用意される。これは丁度、地球の北アフリカの主食であるクスクスに似た料理である。そして今焼いている串焼きにタレをつけて、このクスクスに似たパスタの中に突っ込んで、パスタで肉をコーティングする。そしてタレと肉汁が浸み込んだパスタと肉を一緒に食べるというのだ。玲はセラスティナの真似をしながら肉とパスタを一緒に食べた。すると、
「う、うわ~、これ、
滅茶苦茶癖になる美味しさですよ」
と感動の声を上げた。
「ちなみにね、常連さんなんかは、
この状態から更に少しだけってから
食べたりするんだって」
と言ってセラスティナは実演して見せた。玲も早速真似してみて、
「あ~、なるほどね~、
またパスタの香ばしさが加わって
違う味わいになりますね」
とまたまた感動の声を上げた。エンペラールは、地球にもこんな料理があるのか玲に聞いてきたが、玲の知る範囲では串焼きは普通にあるが、こんな形で食べる料理は見たことありません、とエンペラールに伝えた。しかしこんな食べ方を良く思いつきましたね、と玲はエンペラールとセラスティナにそんな感想を伝えたが、セラスティナの説明によると、実はこの料理法は昔の軍隊飯から来ているというのだ。ロムリアが建国してから間もない頃、まだ周辺の国との戦争が続いていたらしく、簡単に美味しく栄養が取れる方法として、この串焼きが広まったらしいのだ。そして更に、粒状パスタを使う地域の兵士が皿に盛ったパスタと串焼きを別々に食べるのが面倒と思い、肉にパスタを付けて食べだした所、これが美味しく食べ易いということで直ぐに全軍に広まったというのだ。それ以降、この食べ方が昔の軍隊の主流になったという逸話が紹介された。玲は、戦争はそれ自体あってはならないことと思いつつ、一方で戦争により文明や文化が発展するという事実も理解していた。それはセラスティナから聞いた話だが、玲達が多用する転移術、これも元を辿れば古代における戦争のための道具として開発されたらしいという事実からも明らかである。そして今目の前にあるこの食事法と、この料理も戦争と言うか軍隊のあったおかげで出会えたと思うと、何やら複雑な感じを受けるのだった。
さて、美味しいランチを堪能した後で、エンペラールは再び自宅の執務室にて残務処理をするために先に転移で戻って行った。そして玲とセラスティナだが、
「あっ、そう言えば
かすみのお土産のことを話そうとして、
昨日ああなったんでしたね」
と言うことを思い出し、玲はかすみのお土産を買いに行きたいとセラスティナに提案した。
「そうだったんだわね。
あんなことが無かったら
昨日のうちに済ませてたのにねー」
とセラスティナはボヤキながらも玲に対し「カスミさん、どんなものが欲しいのかな?」と尋ねてきた。玲は、
「うーん、かすみが喜ぶのはですね...」
ロムリアかロムリアがあれば、うけるみたいですよ、あいつ変わってるでしょ?と笑いながら答えたのだが、セラスティナからは
「煎餅はないけど、饅頭ならあるわよ」
と思いもかけない答えが返って来た。「えっ、まじっすか?」と玲はビックリして思わずため口で聞き返してしまったが、どうやらロムリアには米は無いため煎餅は作れない。だが小豆と似たような豆があるようで、それに砂糖を混ぜて煮込んだ餡に似たものはあるという。そして「色がね、真っ赤なのよ」とセラスティナが言うように、その赤味が受けて餡をパンの中に詰めたものが流行っているのだとか。えっ?それってじゃないですか?と玲は尋ねると、
「名前は違うけど確かにあんぱんを
意識しているわね。何と言っても」
地球からの帰還組が作ったからね、であった。ただし、その店には饅頭のような物も置いてあるというので、玲とセラスティナは早速見に行くことにした。
「うーん、確かに饅頭っぽいですが、
やはり饅頭と言うよりも...」
パンですかね、とは玲の感想である。だが考えるより食べた方が早いということで、早速セラスティナが2個購入した。そして玲はそれを口に入れてみたのだが、
「あー、でも何となく、饅頭ですかねー」
と見た目とのギャップで脳がバグりそうだが、味は確かに饅頭っぽかった。そうすると、やはりこれをお土産にしようと決めた。そこで6個入りのセットがあったのでそれを購入することにした。
「すいません、タチアナさん。
何か財布係にしてるようですね」
と玲は頭を搔きながらセラスティナに謝罪するが、セラスティナは
「これはね、カスミさんへの
お土産だからね!」
だから私からの気持ちも入ってるのよ、と言うことであった。その後、最近かすみがタチアナさんの真似をしているのか、洋服のデザインに凝りだしていることをセラスティナに伝え、自分もロムリアに行ってみたいな、とぼやいていたことを話した。すると、
「それだったら、ロムリアの
ファッション図鑑とかあったら
良いわよね」
とセラスティナは言うのだが、そもそもロムリアに紙の本などは存在しない。そうなるとどうやってその図鑑を手に出来るのかだが、セラスティナの説明を聞いた玲は、「そんなこと出来るんですか?」と言うくらいに驚きを隠せなかった。それは、使われていない少し古い情報端末がエンペラールの屋敷内に幾つかあるそうで、そこにファッション図鑑だけ入れて持ち帰れ、と言うことである。ただ充電とかどうするのか疑問があるが、セラスティナが言うには、満充電であれば、ロムリアで使っても4,5年は持つという。地球であれば10年近く無充電でも大丈夫と言うことだ。それ位に情報端末の消費電力は非常に少ないのだそうだ。
「それを持って帰ったら、
かすみの奴大喜びですよ」
もしそうして頂けるのなら、僕も助かります! と玲はセラスティナに伝えた。セラスティナは、玲の耳元で
「まあ、これでレイ君の評価が
カスミさんのなかでますます上がれば...」
ゴールインまで直ぐになりそうね!とニヤニヤしながら玲の脇腹を肘で突いてそう囁いた。玲は顔を赤くしながら強く否定するが、セラスティナは「あらあら、しっかり顔に出てるわよ!」と玲を揶揄うのだった。
とりあえず、かすみへの土産が出来たので、玲とセラスティナは一度エンペラールの屋敷に戻ることにした。セラスティナは早速古い情報端末を持ってきて、充電をしながらファッション図鑑や最新のロムリアの流行ファッションを端末内に保存した。一方の玲は続きのヘキサグラム召喚門の調査をしに自室に戻った。そして夕食後に玲はセラスティナから古い情報端末を受け取り、簡単な使い方のレクチャー受けた。後は3人による何時もの召喚術談議を行ってその日を終えた。