召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
神室霊華の異世界探求録2の巻: 異世界失踪事件 (最終幕)
さて、いつもとは違う方法で霊界にやって来た物部かすみと神室霊華は、近くに倒れているの様子をじっと眺めていた。どうやら動く気配はなさそうなので、彼女の両手足を縛っていた結束バンドの召喚を解除した。そして本来ならここで円空を呼んで悪霊を摘まみ出してもらうのだが、かすみは何を思ったか美羽桜子の周りに再び降霊転移門を設置した。そして魂の分離を試みたのだった。だが、
「ちっ、上手くいかんかったかー」
と舌打ちして悔しがるが、その表情にはまだ何か秘めた考えがあるようだ。その時神室霊華は、かすみが何やら変な事を始めたので気になってしまい、
「師匠、これからどうするんですか?」
とカフリングを通じて尋ねた。すると、かすみはこれから行うことを神室霊華に説明し始めた。かすみの説明を聞いても声には出さないが、口をあんぐりと開けて唖然としていたところからすると、何やら突拍子もないことをしでかすつもりのようだ。だがかすみは至って大真面目で、直ぐに美羽桜子から少しだけ出ている元悪霊を触ってみた。すると、
「おー、これ、掴めるで!!」
とカフリングを通じてかすみの絶叫が神室霊華の耳に響いた。だが、
「うーん、掴めるねんけど、
なかなか出てこーへんわ。
霊華さん、ちょっ、手伝って!!」
と近くでかすみのすることを茫然と眺めていた神室霊華は、ハッとした表情をして我に返り、早速かすみの傍にやって来た。そしてかすみに手を貸すように、美羽桜子に憑りついていた悪霊に触れた途端、
「わわわわ、れれれれ、
霊体を触ったー、触ったーー!!」
と普段の神室霊華には見られない奇妙な声で絶叫をした。確かに、霊体を触るという行為は、幾ら霊能力者でも有り得ない行為である。だがここは霊界。何が起きるか分からない世界である。そしてかすみは、どうやら何かの手応えを掴んでいたようで、うことなくその元悪霊を引っ張り続けていた。神室霊華も最初は驚いて手を放すが、直ぐにかすみと一緒に引っ張り続けた。そのうち、少しずつだが、元悪霊が美羽桜子の体から出てくる手応えを感じたようで、
「もう少し頑張れば、こいつ抜けるで!!」
とかすみは歯を食いしばって引っ張り続けた。まるでロシアの民話にある「おおきなかぶ」のように。そして奮闘すること10分(とはかすみの腹時計の時間によるが、そもそも霊界で腹時計が機能するかは不明)、遂に元悪霊が美羽桜子から分離した。と同時に分離した元悪霊はそのまま霧になって消えてしまった。”これで成仏したんか?”とかすみは思うが、それよりもかすみは神室霊華に指示して、どこか適当に降霊転移門を設置してもらうことにした。そして念のため外を確認してもらったところ、
「ししししし、師匠!!
くくくくく、空気がありません!!」
と再び彼女の絶叫がカフリング越しに響いてきた。どうやら以前玲が遭遇した未知の惑星みたいな所にヒットしたようだ。そこでかすみも協力して、適当に降霊転移門を設置して確認すると、神室霊華が設置した別の門がどうやら空気のある所に繋がったという。そして外は明るいものの、どうやら森林地帯にいるようなので、神室霊華は美羽桜子をおんぶした状態でそこから外に出ることにした。外は明るいだけでなく、非常に蒸し暑い。かすみは直ぐに転移門によるサーチを行った。そして、
「うーん、どうやらここ、
アマゾンのジャングルっぽいねんなー」
と呟いた。だがそこは地球であることは確かなようなので、かすみは直ぐに美土路神社に設置した転移門マーカーを確認することにした。そして数分後、見事に転移門マーカーを見つけたので、直ぐに神室霊華と共に美土路神社の自宅に戻ることにした。
自宅に何とか戻って来たかすみと神室霊華は、真ん中の空き部屋に移動し、そこに降霊転移門を設置して美羽桜子の体を一旦霊界に安置した。これは万が一魂が抜けている場合、そのままだと腐敗が進行するので、それを防止するための措置である。それから玲にスマホで電話をかけて、今美土路神社の自宅にいることを伝えた。すると直ぐに玲も戻って来て、早速かすみは玲に今までの経緯を簡単に報告した。玲は呆気にとられながらも、
「まあ、何とか無事に戻って来られて
良かったけど、ホントかすみは
無茶するよな!」
降霊転移門だから行き着く先は霊界だろうけど、何時もの手順ではなく悪霊を霊界に送り込んだ門から果たして何時も見ている霊界に行くのかどうか、実は玲も分からないことであった。それを何のいもなくやってのけるかすみと言う存在に、玲はかすみを労いつつ彼女の仕事ぶりを称えた。かすみは照れながらも、「まあ、うちも必死やったからな!」と口にするが、満更でもない表情は誰の目にも明らかであった。そして神室霊華はと言うと、目まぐるしい勢いで色々な事が進行していたため、何とかついて行くのに必死であったが、漸く落ち着いたところで気持ちを整理していると、かすみのやったことは、玲の言葉ではないが、途轍もないことだったと改めて実感し、師匠のかすみの偉大さを再認識するのだった。恐らく自分には到底真似できないことであることは、直ぐに理解できた。
さて、後は美羽桜子の魂を元に戻すことなのだが、果たして彼女の魂は霊界に留まっているのだろうか?早速神室霊華は、
「師匠、玲さん、桜子さんの蘇生は私が行います!」
と力強く2人に対しそう宣言した。玲もかすみも全く異論はない。そこで神室霊華は、設置したままの降霊転移門の中に入って美羽桜子を抱き抱えて戻って来た。そして早速降霊召喚門を設置して彼女の魂のお出迎えを行った。すると
「あー、桜子さん!! 転生せずに留まっていたのね!!」
と神室霊華は歓喜の雄叫びを上げた。そして直ぐに魂の同期を試みると、美羽桜子の口から「う、うぅ」という呻き声が聞こえたことで、無事蘇生が行われたことが確認された。さて、この後どうするかだが、
「やっぱな、あっこの廃墟から発見した風を
装わなあかんと思うねんけどな」
「うん、かすみの言う通りだね」
とかすみと玲は神室霊華にそう伝えた。つまり、行方不明になった廃墟で美羽桜子本人を無事見つけ出して確保したということにするのだ。その後は彼女の両親を探して無事であることを伝えるのだが、残念ながら10数年の月日が流れているため、今現在どこに住んでいるのか、それよりも健在なのかを確認する必要がある。まあこの問題は後で考えるとして、やはり玲とかすみの言う通り、一度あの廃墟に戻ってから警察と救急に連絡することにした。かすみは
「霊華さん、何か手伝おうか?」
と神室霊華に申し出るが、神室霊華は
「師匠、有難うございます。
でもこの件は私だけで十分に
対応できますので、大丈夫です」
と答えて、そのまま美羽桜子を抱き抱えて転移して行った。
「かすみ、神室さんに任せておけば大丈夫だよ。
それよりも...」
玲は悪霊をどうやって取り去ったのか教えて欲しいとかすみにねだってきた。どうやら、霊界での通信内容はこの世界には届かないようなのだ。そこでかすみは、次回の料理番を代わってもらうことを条件に、玲に何をしたかを伝えた。玲は、「かすみさん、あなたって人は...」とかすみを見つめたまま絶句し、黙り込んでしまった。ちなみに、その後に発するつもりだった言葉は「神ですか?」なのか「ただのアホですか?」なのか?尤もどちらの言葉もかすみには誉め言葉であるのだが。