召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
神室霊華の異世界探求録2の巻: 異世界失踪事件 (後日談2)
の失踪原因が霊能力者になりたいがためであったという告白を聞いた神室霊華は、その時ふとある思いが頭の中をった。
「ねえ、サクちゃん。もしかして...」
と一度言葉を切った後、「今なら霊が見えるんじゃない?」と尋ねた。なぜそう思ったかと言うと、既に一度死を体験しているからである。神室霊華から驚くような発言を耳にした桜子は、首を横に振りながら「分からない」とだけ答えた。だが、もし自分にその能力が備わっていたとしたら、果たしてどうなのだろうか?遂に願いが叶ったと喜ぶべきなのか、それともそのために途轍もない代償を払ってしまったことを後悔するのか?桜子の心の中は今この両方の気持ちが対立しているというか、どう表現して良いのか分からない状況になっていた。そんな桜子の心情を知る由もない神室霊華は、ベッドの傍に霊体人形から呼び出した偽の幽霊を召喚した。さて、桜子はその幽霊を目にすることが出来るのか?神室霊華は固唾を飲んで様子を見守ることにした。すると、
「ね、ねえ、レイちゃん。
そ、そこに何か、
み、見えるんだけど...」
と言ってから暫くして、「気のせいだよね」と神室霊華に何やらそう言って欲しいように投げかけた。だが、神室霊華は首を横に振りながら
「サクちゃんの見た通り、
そこに幽霊が立っているよ」
と伝えた。桜子は再びその幽霊の方に視線を移すと、目を丸くしたまま固まってしまった。”ちょっと刺激が強過ぎたかな”と反省する神室霊華だが、大体最初はこうなることを経験しているので、そのまま様子を見守ることにした。そして暫くしてから、桜子は神室霊華の方を振り向いて、
「そっか、私も見えるようになったんだ...」
と何故か複雑な表情を漂わせた。そこには幽霊が見えるようになったら神室霊華みたいになれると明るい未来を信じていた自分がいる一方、この力を求めたために途轍もなく長い時間行方不明になっていたことで失った物の大きさを思い知り後悔の念で苦しむ自分もいる。そして再びそれらがぎあい始めていたのだ。神室霊華は一旦召喚を解除し、桜子と今後のことについて相談をすることにした。
今の段階で残念ながら桜子の両親の行方はまだ分からない。ただし、桜子の父親は確かどこかの企業の重役か何かだったことを神室霊華は何かの切っ掛けで覚えていたので、もしかしたらその線から直ぐに分かるかもしれないと思っている。だがそれよりもまずは、桜子の落ち着く先を決める必要がある。
「ねえ、サクちゃん。明日退院だけど、
良かったら暫くうちで養生してもらおうと
思うけど、どうかな?」
と神室霊華は桜子に相談を持ち掛けた。桜子としては、今この世界に自分の居場所があるかと言うと、残念ながらどこにも見当たらない。
”浦島太郎ももしかして
竜宮城から戻って来た時、
こんな気持ちだったのかな”
と想像し共感するのだが、少なくとも自分にはかつての親友たちが健在である。なので、居場所はないにしても頼れる仲間がいることは心強く有難い。そこで、
「レイちゃんが良ければ、
私の両親が見つかるまで
お邪魔するけど良いかな?」
と言うことで、明日の退院までのスケジュールを確認したうえで、神室霊華は一度自宅に戻って桜子を受け入れる準備を進めることにした。
美羽桜子が退院して神室霊華の自宅にて療養を始めてから2日後、待ちに待った知らせがもたらされた。神室霊華の自宅にやって来た私立探偵から話しを聞いた神室霊華は、その資料を持って桜子の部屋に向かった。そして桜子に両親の現状を説明した。桜子が失踪してから何度か引っ越しを繰り返していたようで、今は都内に暮らしていることは分かった。そして今もの望みに賭けて時間を見つけては娘を探しているという。その話を聞いた桜子は、大粒の涙を流しながら「御免ね、お父さん、お母さん!」とその場で泣きじゃくった。そして後はどういうタイミングで両親に無事を伝えるかだが。神室霊華は桜子とどうするかを相談するが、結局今の彼女を見てもらって判断を任せるしかないということになった。
先ずは神室霊華が直接桜子の両親の元を訪れることにした。そこで桜子をある廃墟から救出したこと、そして今は自分の家で療養していることを伝えることにし、念のためご両親を探偵を使って探していたことも伝えた。そうしないと、自分達に黙ったまま娘を匿っていたのでは、と言う濡れ衣を着せられることを懸念したからだ。すると、予想通り直ぐに娘に合わせて欲しいと懇願された。そこで神室霊華は明日の正午に桜子と2人でここに来ることを約束した。
さて、予定の時間の10分前に、神室霊華の運転する車で美羽桜子は彼女の両親の暮らすマンションにやって来た。そしてまずは神室霊華がインターホンを押して来意を告げてオートロックのエントランスを開けてもらった。いよいよ桜子と両親の対面である。部屋の前に来て再びインターホンを鳴らすと直ぐに玄関ドアが開けられた。そこには少し歳を取ったものの、桜子の記憶にある良く知る人物が顔を覗かせた時、桜子は「お、お父さん!!」と叫びながら父親に抱きついた。その後から現れた母親も「さ、さ、桜子なの?」と動揺しながら尋ねると、桜子は母を見て「お母さん!!」と大声で泣きながら抱きついた。そして感動の親子の対面を目にした神室霊華も、少し目元を潤ませていたが、それよりもこれからのことをきっちりと話し合う必要があるため、中に入って話を進めることにした。
桜子の両親は、娘の姿を改めて見直すと、そこには失踪前の娘の姿をした女性がいることに驚愕した。いや、正確には言い知れぬ恐怖を感じていたようだ。絶対そんなことは有り得ないし、昔の姿をした娘と名乗る女性を「はいそうですか」と言って受け入れる訳にはいかない。そんな警戒心が見て取れるのだが、ここからは神室霊華の出番となる。先ず桜子の失踪の原因を説明し、そしてこの世界とは違う異世界に迷い込んで出られなくなったことを説明した。流石に神室霊華の説明も右から左に「はいそうですか」と受け流せるような内容ではない。そこで、神室霊華は、桜子との思い出や親子でしか知らないエピソードを尋ねてみてはどうか、と言うことを両親に提案した。すると母親は立ち上がって部屋を出て行き、直ぐに何冊かアルバムを手にして戻って来た。その中から、流石に幼少の頃の記憶を辿るのは難しいと思われるので、小学校入学以降に撮られた写真を見せて説明してもらうことにした。すると両親が知るエピソードと寸分違わず全て正確に説明することが出来、更に自分達の知らない裏話も桜子は少し恥ずかしそうに披露した。そうやってアルバムを見ながらお互いに少しずつ距離を縮めていくうちに、最後は親子3人で仲良く会話をしている光景になっていった。そして、
「神室さん、今でも信じられませんが、
確かにこの子は私達の探していた娘です!!」
と両親はともに涙を流して神室霊華にそう伝えた。神室霊華も目に涙を溜めながら、「無事に桜子さんが戻ることが出来てよかったです」と伝えた。かくして、美羽桜子は無事自宅に戻ることが出来たのだった。