召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
美土路神社に珍客現る (第3幕)
夕食後、おもちが「にゃー」と鳴いたので、物部かすみは トイレかな? と思い猫用トイレを召喚したが、にくたまが「どうやら外へ遊びに行きたいそうです」と言うことを伝えて来た。そこで最神玲がおもちを自分の部屋に連れて行き、にくたまと一緒に猫専用口から送りだした。そしてかすみと神室霊華の所に戻ってきたとき、玲がある提案をした。
「かすみや神室さんが召喚した猫だけどね、
もしかして言葉が理解できるように
なるかもしれないよ」
「はぁ?玲、うち等の完璧な猫を
玲の猫もどきに改悪するんか?」
とかすみはニヤニヤして玲をディスりながらそう指摘した。すると、玲も負けずに、
「いやいや、僕のは進化型だよ。
それよりね、かすみの召喚した白猫と
僕のにくたまの召喚術式を比較すれば
違いが分かる筈なんだ」
だからその違い分をかすみの猫に書き換えれば言葉が分かるのではないかと言うのだ。そして一応かすみに向かって「尤も猫もどきにしたくなければ何もしないけどねー」と嫌味を言うのは忘れなかった。かすみは玲から嫌味を言われて悔しそうな表情を見せるも、だが自分の召喚猫も言葉が理解できるようになれば面白そうという訳で、早速「ほな、やってーな!」と高飛車に構えて答えた。それに対して玲は、何やらかすみに対し優位に立てそうな気配を感じたのか、「かすみさん、人にお願いする時はどうしますかねー」と相変わらずニヤニヤしながら腕組みをしてかすみにそう伝えた。かすみは、これ以上ない悔しさと言うか屈辱を味わったような渋い表情をするも、だがここで玲の機嫌を損ねたら折角の面白そうなことを逃してしまうということで、テーブルの上に両手をついて
「玲様、どうかその改良をお願いします!」
とまさに平身低頭と言うくらいに頭を下げてお願いした。神室霊華もかすみに倣って、玲に改良をお願いした。だがこの時のかすみの表情には、”この屈辱、何時か晴らしたるからな!!”との悔しさが滲み出ていたことは神室霊華とは大いに異なっていたのだが。
さて、かすみと神室霊華からお願いされた玲は、早速かすみに召喚の書を呼び出してもらい、召喚猫の術式を見せてもらった。そして自分のにくたまの召喚術式と比較した所、
「うーん、殆ど同じなんだけど、
何カ所か違うんだよね。
これのどれかが恐らく言語能力に
関係してそうだなー」
などと呟きながら、相違点を洗い出していた。ちなみに、この比較作業、玲と言うかその中身のカーンフェルトが行っているが、一見彼は簡単に行っているように見える。だがこの作業は、物部かすみは論外として、サモナルドのロムリアにいる大召喚術師のエンペラールやセラスティナであっても困難を極める。と言うのは、猫の召喚術式はその形態や行動パターンなどが非常に複雑に組み合わさっている。ここで、例えば一見すると全く同じに見える複雑な文様が2種類用意されているとしよう。そのうち数カ所だけ微妙に異なる場合、その違いをうまく抽出できるだろうか?もしそれらが紙に描かれていたらそれらを重ねて透かして見ることで比較するという手段が取れる。ところが、異なる召喚の書に書かれた召喚術式同士を重ね合わせて比較出来るかと言うと、残念ながらそれは出来ない。丁度2冊の本同士のページとページを重ねる作業に似ていると言ったら分かり易いだろうか。そのため、こういう場合、一般の召喚術師は、どちらかを完璧に覚えた上でその相違点を洗い出すことが強いられる。
ところがカーンと言う男は、その作業をまるで紙に描かれた複雑な文様を重ねて比較するかの如く簡単に行うことが出来る。と言うのは、カーンはどうやら術式を映像として記憶できるようで、それを使って簡単に比較することが出来るという特技というか特性を有しているのだ。そんなカーンの特性を有する玲は一つずつ書き換えながらかすみに猫を召喚してもらった。それからにくたまにおもちを連れてきてもらい、おもちとの会話が出来るかどうかを確認した結果、ある改良をすることでかすみの召喚猫もお持ちの言葉が理解できるようになった。それを知ったかすみは
「よっしゃー、これで猫語をマスターやな!」
となぜか自分が理解したかのようにガッツポーズをして騒ぎ出した。神室霊華の召喚猫も同じように理解できることが分かったところで、彼女達の召喚猫とにくたまを交えて、おもちは再び外に遊びに出掛けて行った。そして玲だが、
「まさか、あれがスイッチだったなんてなー」
と独り呟いていたが、実は動物の言語の理解に関しては、ある召喚術式がスイッチのように機能していたのを見つけたのだ。勿論玲はそれを意図して入れた訳ではなく、彼の想像力からそうなったようなのだが、ただしこの発見は当然かすみの完璧な召喚猫があって初めて分かったのであり、玲はかすみに向かって
「かすみのお陰で言語能力に関する
術式が分かったよ。有難う」
と頭を下げてお礼を伝えた。玲からの突然丁寧なお礼を伝えられたかすみは、ビックリしてあたふたするが、
「ま、まぁなー、うちの完璧な召喚猫が
役立ったんやったら、良かったんちゃう」
と少しだけ嫌味を入れながらも玲にそう伝えた。神室霊華は苦笑しながらかすみの様子を眺めており
“ほんと、師匠は素直じゃないですね”
と心の中でそう呟いていた。その後かすみから、カラスのレイちゃんもカラス語を理解できるように玲に改良をしてもらい。早速拝殿の屋根にしていたカラスの集団に対し会話を試みさせた。その結果、
「うわー、あいつら、この辺で
どこがいい餌場なのかの情報交換してたわ」
と早速カラスの集団から仕入れた情報を伝えた。その後かすみは調子に乗ってトイプードルを召喚し、それを犬言語対応型に改良してもらったりした。神室霊華も自分の式神であるフクロウ(アオハズク)のかすみちゃん(仮)と雀とハツカネズミを同じように改良してもらった。尤も今直ぐにその効果を確認することは出来ないが、後日神室霊華は自宅の庭にやって来たアオハズクとコミュニケーション取らせたところ、「どうやらこの庭には美味しい餌がいるそうです」と言う情報を得たりした。もっともその餌に関しては神室霊華が用意した訳ではないので、そのまま自然放置にしているのだが。それよりも、こうして動物とのコミュニケーションが取れるという事実を自分でも確認したことにより、師匠のかすみではないが興奮せずにはいられなかった。
そして迷子猫のおもちが美土路神社に住み着いてから数日経った時、事態は動き出した。美土路神社の看板娘ならぬ看板息子となっていたおもちは、参拝客の目を楽しませたりしていたようで、写真や動画を撮ってはそれを自分達のSNSにアップしていた。そしてその猫が神社に迷い込んでしまい、今は飼い主を探していることも併せて伝えられると、「その猫は私の所で飼っていた猫です」と言う問い合わせが殺到し、社務所の電話はほぼ一日中鳴りっぱなしになった。幸い、参拝客が少ない時期でもあったので玲がほぼ電話対応をしていたのだが、残念ながらその日にかかって来た電話は全てニセの飼い主からであった。やはり、おもちと言う名前は誰にも伝えてないお陰で、それがフィルターとなってニセの飼い主をふるいにかけれたのだが、肝心の本物からはまだ何も連絡が来ない。そんな状況で定時を迎えた時、念のため社務所の電話線を抜いておくことにした。こうして置かないと、夜中でも電話がかかって来そうであるからだが。
「いやー、今日は疲れたよ。
まさか一日中電話対応するとは
思ってなかったなー」
と玲は自宅のソファーに寝ころびながらそんなことをぼやいていた。かすみも、
「ホンマ、こっちも一日中電話の鳴る音
耳にしたから、耳が変になってるわ」
と一緒にぼやき出す。そして玲がキッチンに向かった丁度その時、神室霊華が転移してやって来た。すると早速かすみが今日起きたことを神室霊華に話し出した。
「............ほいでな、これ、
もし霊華さんのブログから発信されてたら、
どないなってたやろかって思うとな............」
と言いながら先日皆で話し合った時のことを思い出したのか、体をブルっと震わせた。神室霊華もかすみの話を聞くに従い、安易にブログで情報提供しなくてよかったと安堵した。そしておもちはと言うと、ご飯を食べたところで、早速にくたまと外に遊びに出掛けた。そしてその日の夜中も何時もの様におもちは玲の部屋で暴れていたのであった。