召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
心霊サークル夏合宿: 樹海探索編 (第6幕)
その頃、物部かすみと神室霊華は、闇ノ社にやって来て内部の調査を始めたが、直ぐに社の奥の神棚らしき所である物を発見した。
「これやな、原因ちゅうか、本尊なのか...」
とかすみが指摘するのは、そこに長い間置かれていたためか、かなり色褪せて今にもボロボロになって崩れしまいそうな誓詞があった。かすみはそれを慎重に手に取り、中身を開いて確認したところ、そこにはヘキサグラム型召喚門が描かれた古い和紙が2枚も出て来た。
「ま、まさに、北海道の時と同じやな...」
「そうですね。でも何となくですが......
1つは真ん中の文字なのか記号が
少し多い気がしますが......」
と神室霊華が指摘するように、北海道の炭鉱住宅で見つけたものとは少し違ったタイプの術式が記載されていたのだ。何れにしても彼女達には分かる訳がなく、
「こういうのは、玲が得意やから、
あいつに渡しておくな!」
と言ってかすみはその和紙を慎重に元に戻し、自分のお洒落リュックの中に仕舞った。それ以外にこの社の中に何か残っている感じはなく、念のため社の周りを見て周るが、特に怪しい点は見られない。そして丁度その時、玲が戻って来たので、かすみは玲を手招きしてもう一度社の中に入り、玲に問題の誓詞を渡した。玲は驚きの表情で広げた和紙に書かれたヘキサグラム型召喚門を眺めていたが、直ぐにその内容をある程度理解した。実は玲は、ほぼ毎日のように空いた時間はヘキサグラム型召喚門の研究に費やしており、古代語の術式に関してもほぼ何となくだが分かって来た。ただ残念ながらそれをどのように発音するかは未だ分からない所があるが、そんな彼の知識を総動員した結果、
「こちらの術式は、さっきの
黒いドラちゃんを呼び出すやつだね。
そしてもう一つの方だけど......」
と玲は腕組みをしながら、
「多分、この術式は何かを呼び出すのは
確かなんだよね。しかも何だろう...」
と考え出す。どうやら何かを守るのか防衛するのか、そんなことを意図した術式ではないかと推測した。するとかすみが、
「ほな、あれか。この村を
富士山の噴火被害から守ってくれとか、
そんなんをお願いしたんか?」
と疑問を呈するが、残念ながら玲にはそこまでのことは分からない。いや、それよりも、もっと重要な何かを忘れているのではないかと、玲は直感的にそう感じるが、暫くの間その誓詞をじっと見つめていたその時、突然「あーーーー!!」と大声で叫び出した。かすみと神室霊華は、玲の意表を突く突然の絶叫で驚きの余り社の床の上で尻餅をついてしまった。するとかすみは、自分をビビらせた罰を玲に加えるべく直ぐにマキザッパを召喚して立ち上がるも、その前にまず何があったのか問い質そうとした時、玲の顔から血の気が引いて青褪めているのを目にした。するとかすみも、もしかしてこの誓詞に触れたことで自分にも何か良くないことが起きるのではと不安に駆られ、神室霊華に助けを求めるべく彼女の方に振り向いたりした。ただ残念ながら、神室霊華はまだ尻餅をついたまま、その場で茫然としていた。そこでかすみは、改めて玲に恐る恐る何があったのかを尋ねると、
「かかか、かすみ、こここ、この誓詞だけど...」
これって江戸時代からあったんだよね、と当然の事実を玲は声を震わせながらかすみに問い掛けた。かすみは一瞬キョトンとするも、直ぐに今更そんなことを聞くんか、と言う態度で怒り心頭となり、手に再びマキザッパを召喚しながら
「そんなん、当たり前やろ。
ここは江戸時代に滅んでんから」
と散々恐怖心をあおっておいて、口から出た言葉がそれかよ、と直ぐにでもマキザッパによるツッコミを入れそうになった。だが、かすみも自分の今の答えを冷静になって考えた時、「えっ、うそ、そんなことあるんか...」と手にしていたマキザッパを落としてしまうくらいに驚き、まさに茫然自失な状態に陥った。玲とかすみが何に恐怖するくらいに驚いたかと言うと、
「召喚術師って、そんな昔から日本に居てたんか...」
という事実である。玲とかすみが知るヘキサグラム型召喚門に関する知識は、全てサモナルドの召喚術の祖とも呼ばれるヴェランことヴェルハムが広めた物と考えていた。そしてヴェルハムを崇めるサモネル教団は、今この時代に活動している。ところがこの誓詞からは、ヴェルハムと同じ時代の別の召喚術師が遥か昔の日本に転生していたのではないかとも読み取れる。あるいは、
「ぎゃ、逆に、地球で最初に作られたとも
考えられるよね...」
と玲はその事実に愕然としつつそう呟いた。もし召喚術がサモナルドではなく地球で発生したとなると、今までの自分の持つ価値観が根底から覆されてしまう。ただ残念ながらそれを確認する手段を彼らは有していない。いや、唯一の方法は
「ヴェルハムに会って確認するしかないのかな...」
であろうか。その後玲とかすみは沈黙したまま、その場で座り込んでしまった。その後神室霊華も何とか正気に戻ったところで、揃って立ち上がり闇ノ社を後にした。とその時、「キャアー」と言う悲鳴が彼らの耳に届いた。「今度は何やねんな!」とかすみはボヤキながらも、急ぎ3人は悲鳴のあった所に向かった。
その悲鳴はある崩れかけた建物の中から響いてきた。かすみが「どうした?」と叫びながらその建物の中に入ると、そこには神室霊華親衛隊の女子学生達がブルブルと震えながら何かを指差したまま固まっていた。そしてかすみの声で我に返ると、直ぐにかすみにりついてきた。かすみの目にした光景、それはその建物の中で大量の人骨が寄せ集めらてれいた、何とも恐怖を掻き立てる光景であった。そしてかすみから少し遅れて玲と神室霊華が到着すると、神室霊華親衛隊はかすみの傍を離れて、神室霊華の所に向かう。かすみは苦笑を禁じ得ないのだが、それよりもこの大量の人骨には何やら大虐殺の匂いが漂う。そこで、その場で降霊召喚門を設置してお出迎えしようとした時、玲が「かすみ、待って!!」と声を掛けて来た。だが時すでに遅し、かすみがお出迎えの術式を唱えてしまうと、そこには大勢の霊体が姿を現し、しかも口々に何かを叫び出した。それを見た玲は
「かすみ~、だから言わんこっちゃない」
と文句を言いながら、一度降霊召喚門をかすみに解除させた。そして改めて、
「どれか一つ頭蓋骨を取り出して、
それに対してやったら?」
とアドバイスされると、確かにその通りだとかすみは頭を搔きながら反省し、直ぐに手近の頭蓋骨を相手に降霊召喚を行った。すると、
「おー、出たけど、やっぱ何やろ、
時代を感じるなー」
とかすみが呟くように、そこに現れたのは頭にを結った年配の男性であった。そして丁度その時、外から悲鳴を聞きつけて駆け付けた他の心霊サークル部員達とジー・プロジェクトのスタッフが合流したのだが、大量の人骨を目にした途端、「ひっ」と引き攣ったような悲鳴を上げた。それから曽我真がかすみの傍にやって来て一体これは何なんだと問い掛けるも、かすみも全く分からないため、
「そんなん知らんで。それよか、
今からその原因をこいつに聞くところや」
と言って前方を指差した。だが残念ながらM Mの3人以外その霊体を目にすることは出来ない。そこでかすみは、一旦解除して、改めて召喚エネルギーを多くして召喚した。すると、
「う、わわわわ、もももも、物部、
そそそそ、そこ、そこ、
ゆゆゆゆ、幽霊だー!」
と曽我真は叫び出した。ただし叫んだのは曽我真とジー・プロジェクトのスタッフ達、そして心霊サークルの新入生達だけである。心霊サークルの上級生達に至っては「おー、物部先輩がまた幽霊を呼び出したぞ!」と歓喜の雄叫びを上げて、早速スマホで動画を撮りだした。この経験の差が、この場の雰囲気をある意味カオス的にした感じであった。