召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
久し振りの召喚術談議 (前編)
惑星サモナルドからセラスティナことタチアナ・エグリスコバと、彼女の先生でありロムリアの現職の大臣でもある大召喚術師エンペラール、そしてもう一人のロムリアの現職の大臣であり軍事部門を統括するカステリアルの3人を地球に召喚して1週間が経った。その間、タチアナはエンペラールとカステリアルを懇意にしているフランス軍の司令官に頼んで訓練の様子を見に連れて行き、その後タチアナはカステリアルを伴って、地球残留組で地球のある国の軍隊に所属するアルメラとグリミアムの元を訪れ、彼らの協力の元、軍事訓練を受けさせたりしているという。
その一方で、自分の師匠にあたるエンペラールに関しては、ファッションブランド・ロムリアの仲介で中東のある国に向かい、そこで海水を真水にするプラントを見学した。これは、最神玲がロムリアを訪れた時、エンペラールが水問題を提起した際、玲がこういう技術が地球にあることを伝えたことが発端である。そして無事にそのノウハウを得たエンペラールは、更にタチアナの案内で、地球上の色々な国を見て周り、そこの文化を肌で体感したりした。だがエンペラールのそう言った体験もやがて退屈に感じてしまうようで、タチアナに対し「もっと変わったこととかないの?」とを言い出したりした。元々エンペラールとすると、地球の文明やテクノロジーに大いに興味を抱いていたのだが、それは表向きのことであり、本音はと言うと、玲と召喚術に関してとことんまで語り合いたいのだ。そのため、エンペラールはタチアナに対し、
「セラちゃん、もうこういったことに飽きたから、
レイさんの所に行きたい!」
と我慢の限界を超えてそう叫んだ。これにはタチアナも苦笑せざるを得ないのだが、この先生の性格からすると、むしろ今までよく我慢したな、と思う訳で、そのため、
「分かりました、先生、
ちょっとレイ君に聞いてみますね」
と伝えた。だがエンペラールは、今直ぐに行きたいと駄々をね出したため、タチアナは これでは子供じゃないですか! と心の中で叫びながら項垂れてしまい、
「じゃあ、レイ君の所に転移しますが、
向こうが断っても知りませんよ!」
と忠告をしてから懐かしの美土路神社に転移した。
その頃、玲は何をしていたかと言うと、丁度社務所の仕事を終えて帰宅したところで、これから物部かすみと神室霊華が準備している晩御飯を頂こうとしていた。今日の献立は、3人の大好きなかすみ特製唐揚げである。この唐揚げを食べながらビールを飲むのが1日の締めくくりとしては最高の瞬間を迎えることを、この3人はよく分かっている。そして、ダイニングテーブルに並べられたかすみ特製唐揚げを目の前にすると、と香辛料の香ばしい香りが鼻をくすぐり、今にも口からが垂れんばかりである。そして直ぐにでも唐揚げの山の中に箸を入れようとしたその時、廊下の方から突然「レイ君こんばんは」と声を掛けられた。その声にビックリした3人は、同時に声のした方向に振り向いた。そしてそこで目にしたのは、
「タタタ、タチアナさん、
そそそ、それと...
エエ、エンペラールさん!?」
と思いもしない珍客に玲は思わず立ち上がってしまい、しかも声を上ずらせながらそう叫んだ。まさか2人が突然やって来るとは思ってもいなかった玲とかすみは、ただ茫然と2人を見つめていた。そして神室霊華に至っては、本物のタチアナ・エグリスコバが目の前に現れたことに、驚きで目を丸くした。本当に、タチアナが玲とかすみと付き合いがあったんだ、と言う現実を改めて認識させられていた。そんな三者三様の思いとは裏腹に、タチアナは玲に向かって、
「ゴメンね、レイ君。先生がどうしても
レイ君に会いたいと言って聞かなくて...」
と突然の訪問をエンペラールに原因があると言わんばかりに言い訳をした。だが当のエンペラールはタチアナのその言葉に不平を言うでもなく、むしろ
「そうなのよ、私が地球に来た目的は、
レイさんと召喚術について
議論するためなのよ!!」
とタチアナの言葉を肯定しながらそう愚痴を零した。こうなると玲も「は、はあ、そうですか...」と答えるしかない。だが、今からM Mの3人は夕食を摂るところだったので、
「折角なので、タチアナさんと
エンペラールさんも食べて行かれますか?」
と玲は晩御飯を一緒にどうかということを2人に勧めた。そう言えば2人ともまだランチを取っていなかったので、タチアナは「お言葉に甘えていいかしら?」と3人に向かってそう尋ねた。玲はその言葉をかすみと神室霊華に通訳すると、かすみが
「全然問題ないですよ。
何時も多く作っているので大丈夫です!」
とにこやかな表情で玲を介してそう伝えた。そこでこの日の食卓は5人で囲むことになったのだが、今のダイニングテーブルでは少し狭いので、玲がもう一つダイニングテーブルと椅子を召喚して並べた。そしてかすみは自室に戻り、昔よく使っていた翻訳イヤホンを持って戻って来たが、玲も自室から別の翻訳イヤホンを手にして戻って来た。これはチーターに頼んで用意してもらった物で、それを神室霊華に渡した。そしてかすみと神室霊華からもう片方をタチアナとエンペラールに渡してもらい、彼女達が耳に装着したことで、これでお互いに意思疎通が図れるようになった。そこで改めて玲が神室霊華を2人に紹介し、それぞれが自己紹介をしたのだが、
「レイカ・カムロさんの名前は、
私も知ってましたよ。
確か日本の有名な霊能力者だったと
思いますが...」
と神室霊華はタチアナから思いもしない言葉をかけられた。その言葉に対し神室霊華は恐縮してしまい、
「そ、そんな、タチアナさんが私の事を
ご存じだったとは、大変光栄です」
と顔を赤くして俯き加減で何とかそう答えた。そして玲がここにいる自分を含めた3人は召喚術師で、エンペラールとタチアナがどういう人なのかは既に分かってます、と言うことを伝えた。それを聞いたタチアナはホッとした表情になって「それなら、安心して話が出来ますね」と答えた。それよりも、先ずは腹ごしらえということで、5人はかすみ特製唐揚げを食べてビールを飲みながら雑談を始めた。ちなみに、かすみ特製唐揚げは、何時も大量に作り、当然食べきれない分は、翌日の昼食と夕食に供されて来た。だが今日に関しては、5人で全て綺麗に平らげてしまったことを付け加えておく。
さてタチアナは、昔よく美土路神社にやってきた時、かすみがこの特製唐揚げを作ってそれを一緒に食べた事を覚えており、その時の味を思い出して「懐かしいなー、あの頃」と呟いたりした。一方、エンペラールはと言うと、食べたことのない柔らかい肉の食感もさることながら、その独特の味付けに非常に興味を持ち、かすみにどういう味付けをしているのかを早速尋ね出した。なおかすみ特製唐揚げに関しては、お好み焼きのようにレシピを非公開にしている訳ではなく、聞かれれば誰にでも教えたりするのだが、エンペラールがかすみから教えてもらった食材や調味料のうち、一部はどうやらロムリアには無いようで、「この味って再現できないの?」と少しがっかりした様子で玲にそう尋ねた。そんな時に神室霊華が、
「これでしたら、確か植物の実を
原料にしている筈ですから、
それを持ち帰って栽培されてはどうでしょうか?」
とアドバイスした。それに対しタチアナが
「先生、それで行けると思いますがどうですか?」
と賛同したので、エンペラールもタチアナの言葉にうなずいた。そして後日、彼女が帰還する前にその苗を無事ゲットし、帰還後自宅の庭園にてその苗を育てた。そして成長した実を使ってかすみ特製唐揚げの再現を試みた所、見事同じ味付けを再現できたため、以後エンペラールの食卓には、かすみ特製唐揚げが提供されるに至った。