召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
Go to the Space (第3幕)
召喚術師の5人と1人の王女兼母親が案内された部屋は、机はおろか椅子もない何とも無機質な部屋である。勿論窓も何もない。だが決して牢屋とか監禁部屋でないのは確かなようで、案内していたグレイが部屋の外に出て行ったあと、物部かすみが何気なく部屋の外に出てみると、別のグレイが[ナカデマテ]と注意をするだけで、出入りは何となく自由であったからだが。そして暫く中で待つことになるのだが、そんな時も最神玲は出来る限り他の5人に声を掛け続けた。こういう時、黙りこくると不安に押し潰されてよくない方向に思考が向く事を理解していたからだ。
すると、部屋の出入り口から人が入って来た。その人物を目にした6人は、かなり驚いてしまった。何に驚いたのかと言うと、殆ど自分達と同じような背丈と顔かたちの人間が部屋に入って来たからである。ただし、皮膚は灰色に近く、目の中が真っ黒になっていることと、口元を何かで覆っている点を除くのだが。そしてその人物が早速頭の中に話しかけて来た。やはり6人が何者で、ここにはどんな目的で来たのか、その点を矢継ぎ早に問い掛けて来た。それに対して玲は、自分達が地球人で、特にここに居る5人は召喚術を扱う特殊な人間だということを伝え、地球の衛星を旅行中に宇宙船を見つけ、それを召喚したことでここに来たということを説明した。だが、やはりと言うか、召喚術が何なのかが理解できないため、玲は手元に簡単な道具を召喚したり、地球の生き物(=にくたま)を召喚したりした。だがどうやら召喚術を理解できないのか、じっと玲を見つめている。ただ、両目とも真っ黒なので、果たして本当に見つめているのかどうかは定かではないのだが。
それよりも、転移をすればどういうことかが分かりそうに思われるが、実はこの部屋で待っている間に玲は、召喚術を理解させるにはどうすれば良いのかについてエンペラールとタチアナと話し合っていた。玲は転移を見せればそれでわかるのではと主張したのだが、これに対しエンペラールは異議を唱えた。と言うのは
「転移術って、悪用されることがあることを
十分に考える必要がありますよ」
ロムリアのように全国民に普及しているのであれば何も問題ないが、地球でもこれを公開したら、恐らく悪用するケースは絶対出てくることは目に見えている。玲もその点は迂闊だったと反省するのだが、そうなると結局、一般的な召喚に限定した説明に頼らざるを得なくなる。
「まあ、これでダメなら、
とっとと霊界経由で帰るだけですかね?」
と2人に問い掛けた。ただし1人だけ一般人がいるため、スピード勝負になるのだが、するとタチアナが
「まあ、霊界から直ぐに
地球に戻れるかは分からないけど、
皆で探せばどこか見つけられるだろうから、
その心算でいて良いんじゃないの」
と答えてくれた。そしてタチアナの言葉が励みとなったのか、結局玲は単に物を召喚するだけに留めることにし、念のためかすみと神室霊華にもそのように伝えておいた。
さて、玲達6人を尋問する宇宙人だが、結局その人物だけでは判断できないようで、暫くするとまた別の人物が部屋に入って来た。そしてやはり同じ質問が繰り返されたため、同じ答えを繰り返すのだが、その時、
[ココニアルコレヲ、ツクレルカ?]
とその人物が腰にぶら提げている何かのデバイスを玲に渡してきた。玲はそれを受け取ると、そこに召喚術式が表示されたのを目にしたため、
[はい、できますよ]
と言って、先ず本体は持ち主に返し、その上で改めて同じものを召喚した。そしてそれをその人物に渡して確認してもらうと、恐らくビックリしたように見えなくもない反応を示すのだが、やはりその表情からは何も分からない。だが何やら操作して、それが自分のデバイスと全く同じ機能を確認したのか、そのまま沈黙してしまった。
また暫くすると、別の人物が部屋に入って来た。何となくだがこの人工衛星の責任者か司令官なのか、そこまでではなくても、この区域を管理する人物のようだ。そしてその人物から玲達6人について来いと言われたので、その人物について表へ出て行くことにした。そしてある格納庫にやってきた時、目の前の宇宙船を召喚出来るか尋ねてきたので、玲はとりあえず触らせてもらった。すると召喚術式が表示されたので、玲は早速それを召喚の書に記入した。ちなみに、他の4人の召喚術師達も同じように勝手に召喚の書に記入した。かすみに至っては”これって、もしかして母船とかとちゃうんか?”と思ったようだが、確かにその物体は自分達が乗って来た宇宙船の数十倍はある大きさだ。
その後玲達一行は空いた格納庫に移動して、その場で同じものを召喚した。すると彼らをここに連れて来た人物は、恐らく思考が停止した様に暫くの間沈黙していた。そして部下と言うかグレイを数体呼んできて、中を確認させた。すると直ぐにその母船が起動したようで、地面から浮いたのを目にしたその人物は、どうやら満足したようであった。だがそのとき玲は、
[すいません、召喚術の場合、
召喚を解除すると消えますよ]
と言うことを頭の中で訴えた。この言葉が通じるかどうかは定かではないが、どうやら通じたようで[ドウイウコトダ?]と尋ねられたので、中にいるグレイ達を一度外に出してもらい、直ぐその場で召喚を解除した。すると目の前にあった巨大な母船が姿を消したため、その人物は玲を睨み付けるようにじっと見つめていた。それでも玲は必死になって
[召喚術は、こうして物を自由に
召喚したり消したりする能力なんです]
と言うことを説明しながら、あもう一度その場に召喚し、再び召喚解除をすると、どうやらそれで召喚術と言う物が理解できたようだ。
さてこの後6人はどうなるのか、固唾を飲んでその人物の一挙手一投足を見守っていたのだが、彼らが予想もしないある言葉が頭の中に伝えられた。それは
[オマエタチヲ、モトノホシニ、ツレテカエル]
であった。この時玲は、てっきり[オマエタチヲ、コノバデ、ショブンスル]と言われたかと勘違いして身構えてしまったのだが、思いもよらぬ言葉を耳にした(正確には頭の中に伝えられた)ため、頭の中の整理が追い付かず、暫し思考停止に陥ってしまった。すると玲が答える代わりに、タチアナが
[自分達を地球に連れて帰る
ということでしょうか?]
と確認の意味を込めてそう尋ねた。ただし詳細を聞くと、単に連れて帰るだけではなく、どうやら月面に不時着した宇宙船とその乗員を回収したいということだ。そこでその案内を含めて帰還させるという申し出である。勿論、6人からすると、願ったり叶ったりであろう。だが念のために玲は、自分達は宇宙服というか、宇宙空間に出るような格好ではないことを伝えた。すると[ソレハヨウイスル]という返事が来た。そして今直ぐに出発すると告げられると、6人はそれを了解した。なお彼らが乗って帰るのは、先程玲が召喚するのに使った母船であった。勿論、本物である。6人は直ぐに母船内部のある部屋に案内され、そこて待つように言われた。暫くすると動き出す気配を感じるが、ここに来るときに乗って来たような急激な加速度感は全く感じない。
そのうち、数体のグレイが部屋にやって来て、6人に宇宙服を渡した。彼らが手にしたその宇宙服は、つい先ほど、と言うか今が何月何日なのか分からないが、月旅行で使用した宇宙服よりも、何やら薄っぺらく、しかも物凄く軽い。かすみは「えっ、こんなんで大丈夫何か?」と呟くが、どうやら彼らのテクノロジーだと、これで十分なようだ。ただ、その宇宙服の丈が短いため、かすみとヴェレニエラを除く4人はグレイに[このサイズで大丈夫なのか?]と尋ねた。すると[タヒトノ、オオキサニ、アウヨウニナッテイル]との答えが返って来た。とりあえず、かすみが早速服の上からそれを着だした。
「かすみ、直接着て大丈夫なの?」
と玲は尋ねると、どうやら問題なく着れるとの返事があった。そしてかすみは難なく着用するのだが、その恰好をみると、どうしても
「かかか、かすみ、
グググ、グレイ感満載だよ」
と玲はニヤニヤしてかすみを弄りだした。するとかすみは、玲に弄られたことに腹を立てつつも
「あんな、玲。うちもそうやけど、
皆も同じのを着るねんで。
そこんとこ、分かってるか?」
と注意しつつ、早速マキザッパを召喚して玲を一シバキした。だが玲は、
「わわ、分かってるけどさ、
かすみの場合、サイズ感がね...!?」
と言ってしまったが後の祭り。触れてはいけない所に触れ、しかもかすみの逆鱗にも触れてしまい、玲は数発以上しばかれることになった。そして、そんな2人を横目に、その他4人は、黙ってそのスーツに身を包んだ。
「しかし、これで宇宙空間に
出れるんでしょうかね?」
とタチアナは誰しもが抱く疑問を口にした。
「まあ、宇宙線被ばくがあっても、
医療カプセルで治せますから、
その点は安心してください!」
と玲は、かすみに思いっきりしはがれた所を摩りながらそう伝えた。