召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M心霊ファイル13: 心霊悪徳商法 (最終幕)
最神玲はこの男、をどのようにするのか?物部かすみと神室霊華は、まさかサモナルドの法に従って再び死刑にするのか、と想像したりして玲の挙動を固唾を飲んで見守っていた。そして玲はフーディン、いや樋上堅志郎に向かって次のような言葉をかけた。
「私はあなたを今この段階で裁くことはしません。
ただし――」
玲の言葉を聞いた樋上堅志郎は、命が取られることは無いと分かったことで心からホッとした表情を浮かべたが、直ぐにまだ続きがあるため、再び警戒し出した。そんな彼に構うことなく、玲は淡々と
「あなたが悪霊を憑りつかせた相手から
除霊名目で受け取ったお金を
彼らに返してあげてください」
と伝えた。すると樋上堅志郎は満面の笑みを湛えて、「有難うございます。必ずお金はお返しします」と玲に向かってそう口にするのだが、玲も彼の言葉を信用する程そんなに甘くはない。直ぐに樋上堅志郎の周りにバレル型の召喚門を設置し、怨霊を2体召喚した。するとその怨霊は樋上堅志郎に早速憑りついた。樋上堅志郎は自分の周りに見慣れない召喚門が設置されたことに驚くが、その直ぐ後に自分に対して怨霊が憑りついたのを目にした途端、「なぜだ?」と叫び出した。それに対し玲は冷徹な表情のまま、再び淡々とした口調で
「残念ながらあなたを100%
信用している訳ではありません。
なので、これはあなたにちゃんと
履行してもらうための足枷のような物ですね」
と説明した。実は玲が召喚した怨霊は、現在かすみの三番弟子であるRINAが取り組んでいる怨霊対策用に作った霊体人形である。そして、この怨霊はある条件が満たされないと永遠に憑りついたままであり、またある一定期間が過ぎると、怨霊は少しずつだが生命エネルギーを吸い取って行くという、かなり危ない仕様に変更が加えられている。そして
「それとね、あなたの召喚術を使っても、
残念ながらその怨霊を除霊することは
出来ませんよ」
それが出来るのは、ここに居る3人だけだと言うことも伝えた。樋上堅志郎は口約束だけ済ませればこの場から解放されると目論んでいたようだが、そんなに甘くはなかったことに落胆の色を濃くしていた。だが直ぐに
「そそそ、それよりも、どどど、どうやって
わわわ、私が返したことが、
わわわ、分かるんですか?」
と至極当然のことを玲に訴えた。すると玲は
「この怨霊はね、僕が作った特別仕様でね、
彼らは自我があるんですよ。
なので、彼らがあなたの行動を見て判断しますよ」
と事も無げにそう答えた。そんな召喚術式は聞いたこともないと更に訴えるのだが、玲は
「そりゃそうでしょうね。
僕やあなたが居たサモナルドでは、
決して得られない知識がベースですからね。
でもね――」
ここに転生したとこは決して嫌な事ばかりではないことを、玲は樋上堅志郎の目を見つめながら説明した。尤も樋上堅志郎としては、既に心の余裕が全くなく、しかも今現在も憑りついた怨霊が「助けてー、助けてー」と彼の耳元で繰り返し呟いてる。これを早く除霊しないと自分がおかしくなりそうだと危惧し始めていたのだが、そんな彼にお構いなしに、玲は何やら地球で体験したことを語り始めた。流石にこれ以上この場に居たくない樋上堅志郎は
「わわわ、分かりました。
こここ、これから、へんへん、返金します!」
と言うや、そのまま東屋から駆け出すようにどこかに去って行った。
東屋に残された玲とかすみと神室霊華は、何やら嵐が去った後のような静けさの中に放り出された。そしてその場の雰囲気に少し気まずさを感じたのか、特にこういった時のを嫌がるかすみは
「ま、まあ、これで解決っちゅうことやから、
うちらも戻るとしようか?」
と言ってかすみは神室霊華を連れて別荘に向かった。玲は何やら思うことがあるのか、その場で暫し目を閉じて考え込んでしまった。やはり対応が少し甘かったのではないだろうか?泥棒が盗んだものを返せばその罪が消える訳ではないことは分かっている。しかも彼の行為によって、悪霊に憑りつかれたまま亡くなった人もいると聞く。だが、彼の置かれた境遇は自分でもいやという程理解できる。ただし、自分と彼との違いは、やはり支えてくれる仲間の存在だろう。そして彼がちゃんと自分の犯した罪を償ってくれれば、その後は自分が彼を支えようかと考えたりした。
さて、僕も疲れを取りに行こうかな
玲も今日一日の疲れを癒すために別荘に向かった。
何時もの様に露天風呂の湯船に身を沈めながら、玲とかすみと神室霊華の3人は、先程の件を話し合っていた。
「それにしても、霊華さんの演技、
メッチャ上手かったで!
あれやと、素人やったらマジ騙されるで!」
とかすみは神室霊華の迫真の演技を絶賛した。だがその後で「まっ、うちにはもう少し敵わんやろうけどな」と自分が少しだけ上だというアピールは忘れない。そんなかすみの言葉に苦笑をしながらも、神室霊華はそれでも何だか子供の頃の演劇会で披露した役の事を思い出したりして、少し恥ずかしい気持ちになったりした。
「それに比べて、玲はまあまあやな。
棒演技やないだけ、ましっちゅうこっちゃな!」
と相変わらず玲をディスりながらもかすみの批評は続く。その後かすみは「あっこは、あーせんとあかんで」とか「あれはよう分からんは」などと批評を繰り返すが、玲が
「そもそも、かすみ、あんな暗い中で
僕の表情とか分からないだろ!」
そんな状況で批評しても意味がないということをかすみに訴えるのだが、かすみは
「そんなんな、玲の声や台詞を聞けば
大抵わかんねん!」
と何やら一人前の演出家のようなことを言い出した。どうしても玲よりも優れているというマウントを取りたいようで、玲も「あー、はいはい」と適当な相槌を打って聞き流そうとする。だがかすみは、そんな不遜な態度をする玲を許すはずもなく、
「おい、玲。折角うちが演技のアドバイス
しているっちゅうのに、何やねんな、その態度は!」
と怒り出したかと思ったら、早速何時ものように手にマキザッパを召喚して玲をシバキにかかる。玲はそんなかすみに対抗すべく、両手ですくったお湯をかすみにかけたりする。まるで子供の水遊びの様相を呈するのだが、そんな時も神室霊華は1人冷静になって2人をめる。そして落ち着いたところで、玲は神室霊華が今も首をる仕草をしているのが気になったので、まだ何か気になるのかを尋ねた。
「あっ、いいえ、大丈夫ですよ、玲さん。
ご心配おかけしました」
と改めて玲の心遣いに感謝するのだが、玲は、
「もし後遺症があるのか気になるようでしたら、
僕の離れにある医療用カプセルに入ることを
お薦めしますよ」
と神室霊華にそう進言した。かすみも「そやな、あれで検査しといた方がええと思うよ」と賛成するので、神室霊華は湯上り後、早速玲に連れられて医療用カプセルの使い方を教えてもらうことにした。
1時間後、神室霊華は母屋に戻って来た。そして早速かすみが神室霊華に今の状態を尋ねると、
「師匠、凄く体が軽いです!!
しかも首の所の違和感も
すっかり無くなってます!」
玲さん有難うございました、と神室霊華は玲に対してお礼を伝えた。玲も神室霊華がすっかり明るく元気になっことを喜んで、
「いつでもあのカプセル使ってもらって
構いませんからね」
と伝えておいた。かすみも、
「今の霊華さんの体ん中には、
癌は1個もない新品の状態やねんで!」
「まさに、ツルツルのピッカピッカやで」と神室霊華の体は完璧な状態であることを面白おかしく伝えた。その後は夜も更けたので3人はそれぞれ離れに戻って休むことにした。
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この件から1カ月後、樋上堅志郎は不適切な形で稼いでいた金を全て被害者に返し終えた。すると、そのタイミングで、漸く最後の1体の怨霊は成仏したのだった。この1カ月は、まさに地獄の苦しみを味わっていた。そこには幾つもの意味があるのだが、先ず、返金するにしても直接返しに行くのは相当難しいため、匿名の有志によってモルタの被害に遭われた方々から搾取したお金を返します、と言うことにしてあたかも自分が善人のように振る舞ったりした。尤も、どのような方法で返金しろとは指示されてないため、樋上堅志郎としてはある意味開き直った状態で続けていた。幸い不正に得た金は使うことなく投資に回していたため、直ぐに解約してから返金することが出来たのでそれは救いであったのだが、それでも明日の生活に少しずつだが困りだしたのは頭が痛い問題である。それでも半月ほど経ったところで、1体の怨霊が成仏するのを目にすると、後は勢いのまま、返金作業を続けた。そして漸く返金し終えたところで、さてこれからどうやって食って行こうか、と考え込んでしまう。とは言え、呪い代行業はもうできないため、カーンフェルトがやっているように除霊や降霊術を中心とする霊能力者をやって行こうかと、考え始めていた。
それにしても今思うと、よく自分は無事に帰って来れたものだと、つくづく感心してしまう。恐らくあの場に居たカーンフェルトであれば、自分を召喚術師としての死刑に処することは容易だろうと想像してしまう。まさかあれ程の召喚エネルギーを持つ人物だったのかと思うと、今でも体が震えてしまうのだ。だがそれよりも、あの場に同席していた2人の女性、1人は神室霊華で間違いないが、もう1人の女性も、凄まじい程の召喚エネルギーを持っていた。自分の召喚エネルギーを優に超えていることは分かるのだが、もしかしてジンギスタ帝国の召喚術師を束ねるルメイン・ローガン、彼をも超えるのではないかと見ていた。そしてカーンが自分に対して設置した謎の召喚門。あれがどのような性質のものなのかは全く分からない。だがそのような召喚門がこの地球には存在するのであれば、是非自分でもそれを試してみたいと思うのだった。それよりも先ずは、霊能力者としての仕事をする準備が必要だと思い、早速ホームページ作りに励んだ。