召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
M M心霊ファイル14: 消えた容疑者 (第3幕)
大阪府警の滝沢と待ち合わせる約束をした週末の土曜日、最神玲と物部かすみは冬用のM Mの制服に身を包んで、前回大阪にやって来たときに使用した大阪城内の神社の裏手に転移して来た。大阪城内のイチョウ並木が色づくには少し早い時期ではあり、紅葉を目当てに多くの観光客が訪れることもなく、しかも外国人観光客はそのまま大阪城の天守閣に向かうため、この場所は比較的静かで落ち着いた雰囲気を漂わせている。そして2人はそのまま神社を抜けて大阪府警まで歩いて向かうのだが、やはりかすみは大阪に来ると直ぐ何処か観光に向かうことを考えてしまう。
「なあ、玲。仕事終わったらどっか行かへんか?」
「ん?別にいいけど、どうせまた
新喜劇見に行きたいんだろ?」
「そんなん分からんで。
まあ、うちの気分次第やねんけどな!」
と嬉しそうな表情のかすみは玲と呑気な会話をしながら、大阪府警にやって来た。到着すると、玲はスマホを取り出し捜査一課の滝沢に連絡を入れた。それから5分程すると、ロビーにて滝沢の姿を目にしたのだが、前回会ってから何やら白髪が多くなった気がしなくもない。そのため直ぐには滝沢だと認識出来なかったのだが、
「最神さん、物部さん、ご無沙汰しております」
とドスの効いた声で挨拶されると、漸く滝沢本人であることを認識したのだった。そして挨拶もそこそこに、3人は滝沢の案内で問題となったレンタル会議室に滝沢の車で向かった。
そのレンタル会議室は区内の繁華街近くの雑居ビル内にあるという。3人は近くのコインパーキングに車を停めて歩いて現場にやって来たのだが、
「何やろな、結構人通りが多いと思うねんけど、
もしこんなところ全裸の男がうろついてたら
直ぐに怪しまれて警察行きちゃうん?」
「物部さんの仰る通りですわ。
当日は平日でしたが、捜査員の話やと、
インバウンドによる外国人観光客を
ぎょーさん目にしたらしいです」
「となると、少なくとも外には出ていない、
と言うことになるんでしょうか?」
当然そうなるだろうし、滝沢の見解もそう見ている。だとすると、その行方不明の人物は建物の中で消えたということになる。そんなことを話しながら、3人は雑居ビルの管理室に向かうことにした。そこで滝沢が問題の部屋の鍵を警備員から借りて、問題の会議室に向かった。
会議室の前にやってきた時、かすみが
「玲、何か感じるか?」
と尋ねるが、玲は首を横に振りながら「何も感じないね」と答えた。そして鍵を開けて中に入り電気を点けたとき、目の前にはごく普通の会議室の様相が目に入った。
「そう言えば、滝沢さん、
この部屋でその人以外に
行方不明になったという話しとかは
ありませんでしたか?」
と玲が何気なくそんなことを滝沢に尋ねた。滝沢は
「うーん、特にそこまで尋ねてはおりませんが、
何か気になることでも?」
と逆に玲に尋ねるので、玲は先程の管理室での警備員の態度が少し気になったことを伝えた。
「滝沢さんからあの部屋の事を尋ねられた時、
あの警備員、僅かにと言うか
目が泳いだと言ったらいいのかな、
そんな風に見えたんですよね。
尤もほんの一瞬だったんで
僕の気のせいかもしれませんが――」
と玲はその時感じた僅かな違和感を滝沢に伝え、もしかすると過去に同じような事が遭ったのではと推測したのだ。この玲の直感と言うか指摘は滝沢もかすみも全く予想していなかったようで、直ぐに滝沢は
「ちょっと、管理室に行ってきますわ」
と言いおいて、そのまま戻って行った。そこで会議室に残された玲とかすみは、そのまま待つのも時間の無駄と判断し、早速辺りを調べてみることにした。
「あれやな、監視カメラは?」
「うん、そうだね。でも何で
監視カメラを取り付けてるんだろうね?」
2人は入口を入って直ぐ右手の天井付近に設置されている監視カメラを眺めている。そしてその監視カメラのすぐ下、入口の隣にはやはり鏡が設置されていた。ただし、その鏡は有名な絵画を納めるような見事な金細工を施した額縁に彩られていた。まるでどこかの王宮にでも飾られていたように見えるのだが。
「へぇー、この鏡、何か凄く立派だね」
「ホンマやな。普通こういう所やと、
○○商工会議所寄贈とか書かれたシンプルな鏡が
ありそうやねんけどなー」
と玲とかすみはその鏡の豪華さに見惚れつつ、それ以外のことで何か気になる点があるかを話し始めた。
「この入口の扉って、引き戸なんだね。
何か学校の教室の雰囲気みたいだけど」
と玲がそんな感想を口にするが、
「せやな。これが開き戸やったら、
部屋側か廊下側に扉が映るから、
開いてるかどうか分かるねんけどな。
引き戸やと開いてるかどうか分からんなー」
そうなると、監視カメラの映像からはそこに誰かが立っていたのかどうかは判断できないものの、扉が開いていてそこに立っている人物に驚いて逃げ出そうしたことは十分に考えられたりする。だが、
「同時刻の廊下側の監視カメラには
誰も映ってなかったけどね......」
と玲は滝沢から送られて来た映像を思い出しながらそんなことを呟いた。となると、廊下に立っていた誰かに驚いたわけでもなさそうに見える。では一体部屋の中の人物は何に驚いて逃げようとしたのか?とその時、滝沢が警備員を連れて戻って来た。そして
「最神さん、あんたホンマ、
刑事やったら腕利きの刑事になりますわ」
「今からでも転職しまへんか?」と玲に刑事への転職を薦めながら彼の眼力をベタ褒めしつつ、やはり過去にも同じような事が遭ったことを警備員が認めて話し始めた。
「じ、じ、実はですね、わ、わ、私の、
ぜ、ぜ、前任者の話なんですが――」
とベテラン刑事に問い詰められたからか、緊張して言葉を詰まらせながらも話した内容は、今から数年前にも同じような事があったということである。しかもその時は女性が行方不明になったらしい。すると滝沢が
「それ、警察には届けたんか?」
とドスを効かせた声で凄んだ。そんな滝沢の迫力に押された警備員は、あたふたしながら自分はその件の詳細は知らないとだけ答えた。更に、もっとそれ以前からどうやら似たような行方不明が起きていたらしいというのだ。この事実は代々の警備員達に文書としてではなく口頭で伝えられてきたようで、しかもそれらの出来事は、ビルのオーナーの指示で内々に処理していたため、結果として警察への届け出はされてないという。そして、この会議室だけでそのような不可解な事件があったから、ここに監視カメラを設置したのかと疑ってしまうのだが
「こ、こ、ここの監視カメラは、
ち、ち、違う目的があったようで」
と警備員が説明したのは、これも口頭で伝えられたことだと断った上で、どうやら何者かの仕業なのか、ここの部屋のオーディオ装置が頻繁に故障するため、その犯人を捜すためにオーナーが設置を決めたという。ちなみに他の部屋には監視カメラは設置されていないということのようだ。