召喚術師を召喚したいのですが、どうすれば良いですか?
サリの独白
あー、何か久し振りに楽しかったな。でも、なんでカーンは空気読めないかな。プレゼントは凄く有り難かったけど、あのタイミングはないでしょう?まったく。まあ、今に始まったことではないし、何時も通り平常運転のカーンなので、良しとしますか。はは。相変わらずあいつには甘いな。でも、このルビーのネックレスを見た時に、なぜだか凄く気が動転するくらいに心が騒いだんだよね。と言っても嫌な意味とか不吉な感じとかではなく、全く逆の、そう何か忘れていた大切な物に触れた感じ、かな。でも、それ以上のことは分からないけど。
そう言えば、彼とは何だかんだと10年の付き合いですか。初めて会った時は何か変な奴が来たな、くらいにしか思っていませんでした。確か、学院への転入自体はかなり珍しいことだったし、しかも召喚術師として目覚めたのが転入少し前とのことだったみたいだし。かく言う私も召喚術師に目覚めたのは学院に入る前だったので同じ境遇にはなりますが。
実は私は5歳以前の記憶がありません。母が言うには、それ以前はおとなしい性格だったということ、また特に召喚術師の特性を持って生まれたわけではなかったようです。ところが、5歳の誕生日を迎えて暫くしてから、急に高熱を発して意識を失い生死をうことがあったようで、母は何かにってでも娘を助けて欲しいと一心に願いながら私の小さな手をずっと握り締めていたそうです。私の家は比較的裕福な家庭で、父が経営する不動産関係の仕事が順調なおがけで、父もケンタリアの民選議員になったりするほどの実力者でした。そんな私の家庭ツェルペス家で私は一人娘として大切に育てられていたのですから、母の心痛はいかばかりかと。
その後何とか死地を乗り越えて意識を取り戻すことが出来ましたが、私の心は何か違和感みたいなものを強く感じたことは今でもはっきりと覚えています。具体的に何がどうだとまでは覚えていませんが、ただ何となく、まあ高熱で意識を失った後遺症かな、ということを後から思い返す程度でしたが。ただ、それ以降私自身の性格が変わったようで、母が言うには明るく陽気になったとのこと。決して悪いことではなく、漸く普通の子のようになったと喜んでいたそうです。まあ、災い転じて福となす、ということでしょうか。でも、実はその時私の中で何かが生まれたというか、何か自分の力でどうこうできるものではないものが発生した、そんな心境になったのは覚えています。いわゆる、召喚術師の覚醒というものみたいです。ただし私の場合は物を召喚する方の召喚術師ではなく、かなりレアな降霊召喚術師に覚醒したとのことでした。降霊召喚術師以外の召喚術師は、生まれた時点で先天的にその力が与えられるようです。一方、降霊召喚術師はそのほとんどが後天的に起きると言われています。その理由は、大概の降霊召喚術師は臨死体験を経てなるようで、まさに私自身を指していると、その話を聞いたときは思いました。確かに、外で遊んでいるとき、何か覇気の無い人がうろつく様子を何度も目撃したことがありましたが、あれは人ではなく霊体だったんだと今になってはっきり分かるようになりました。
そんな状況でも無事に養成学院に入学するに至り、周りに同じよう子が沢山いるのを知り、何となく安心というか、何かそんな感じを受けました。ただ、自分以外の子はやれ契約召喚がどうとか、昨日はこれを召喚したとか、そんな話題で盛り上がっていましたが、私はその話題にはついていけず、いつも心細い日々を送っていました。でも私と同じ降霊召喚する子もおりまして、その中の一人にラーゲルという男の子がいました。実は彼と私の実家は付き合いが長いようで、小さい時にはよくお互いの家に遊びに行っていたようです。ただ、その当時の記憶が全くないので、ああそうなんだ、くらいにしか思ってませんでしたが。それでもラーゲルは私に色々教えてくれたり、私が何か意地悪されたりすると、相手に襲い掛かるくらいに私を庇ってくれたりしました。でも、残念ながら私には昔の記憶がないので、それ以上彼に何かしてあげるようなことはありませんでした。今思うと、少し気の毒ですが。
そんな生活が何年か続いた学院生活2年目か3年目の時に、私のクラスに転入性が来るという知らせがありました。他国からの転入生を受け入れることはあるので、それ自体特に珍しい訳ではないみたいですが、聞くところではごく最近物を召喚する方の召喚術師に覚醒したとのこと。そしてこのようなことは今までほとんど無かったということで、先生方はかなり大騒ぎしていたのを覚えています。それで、親しい女の子達とは「どんな子が来るのかな。男の子かな、女の子かな。男の子ならかっこいい子が良いよね。女の子なら優しい子なら大歓迎だよね」などと他愛もない会話で盛り上がっていました。で、結果はご存じのように、名前はカーンフェルトという冴えない男の子。期待外れで女子一同ガーン。でも私はなんだか知らないけど、少し気になりました。今思ってもなぜだろうと疑問に思いますが、ただ何となく心の底から「この子を守ってあげてね」という声が聞こえた気がしました。そんなことあり得ないけど、子供だったし、もしかしたら霊の声だったりしてね。尤も、守ると言ってもケガや病気から守ることは不可能ですが、彼の性格というか雰囲気がどうも虐めてください的なオーラを出しているというか、そんな雰囲気があったので、何となく予想出来たりはしました。そして案の定、いじめっ子というか、エリート意識全開のラーゲルを中心としたグループに虐められることに。ということで、なぜか心の声に従ってカーンを助けることになったりしました。これがカーンとの腐れ縁(は失礼かな。はは)の始まりです。
カーンは見た目は普通というか、特に女子受けするような子ではなかったのですが、召喚術に関してはずば抜けたセンスを持っておりました。それは、子供ながらに大人の大召喚術師エンペラールみたいと、大袈裟ですがそんな印象をもったりしました。それくらいに凄かったです。例えば、授業で先生が新しい術式を披露したことがありましたが、それを直ちに真似するどころか応用したりとか、本当に規格外とはこのことかと思ったりしました。あの後、先生はちょっと落ち込んで、何か自信喪失状態?になったように記憶しています。そりゃね、子供たちに新しい術式を教えて、へーすごい、との歓声を期待したのに、いとも簡単に真似られて更にその上をいかれたら、誰でも自信無くすよね。全く、カーンのやつ、この頃から空気読めなかったんだな。今思うとまた少し腹が立ってきました。全く。
それでも、そんなカーンも私には色々と教えてくれたりしましたし、宿題何かはよく手伝ってくれました。それと、彼が術式を教えてくれる方が先生よりもより分かり易かったのは、本当に助かりましたね。あっ、ちなみに、カーンは降霊召喚を全く扱えませんが、降霊召喚の術式は分かるんだとか。なんでそんな器用なことができるのか、やっぱりこいつは変態的に異常な召喚術師だと、今は思います。あっそうそう、カーンとは結局学院生時代は普通に友達として接するだけで、それ以上の進展はありませんでした。こう見えても私はかなりモテる方だったんですけど、なぜか彼からアプローチを受けたことはありませんでした(こちらからアプローチすることはあり得ませんが。ははは)。見る目がない奴なんでしょうね。でも、付き合わなくても私としては、その時の二人の関係は決して嫌いではなく、むしろ好ましく感じていました。
こんな関係が5~6年続いた15歳の時、突然彼が卒業することに。ちなみに、養成学院は13歳から各自が専門とする分野に分かれて専門の授業を受けるようになるので、カーンとは頻繁に会うことはなくなりましたが、図書館でよく降霊召喚術に関する宿題などを手伝ってもらったりしていました。そんな関係のまま迎えた彼の突然の卒業。これには身近に接してきた私も驚くと同時に少しショックでした。せめて私には教えて欲しかったなと。彼の卒業はかなり異例でしたが、それ以上に異例なのは、そのまま召喚技術研究所第一部の研究員として着任するということでした。今も昔も召喚術師として花形の職場は研究所の第一部に入りそこで召喚技術を極めることであり、学院性の誰もが憧れる職場なのです。そんなところへ、15歳の少年が研究員になるというのは学院始まって以来とのことで、これまた先生方は上を下への大騒ぎ。まあ、私も「おめでとう!仕事、頑張ってね」と言って、彼を送り出しました。何か素っ気ないけど、それ以上に何かしていたら、寂しくなって行かないで、何て言っていたりして(凄い赤面もの)。
その後18歳で私も無事学院を卒業出来まして、卒業後は技術研究所の第5部に配属となりました。希望としてはカーンと同じ第一部だったんですが、第5部は主に降霊召喚に関する研究が行われるところで、つまり私としては自分の能力に見合った職場へ就職したというところです。あっ、そうそう、実は幼馴染のラーゲルも第5部で、しかも彼は16歳で卒業してそのまま第5部の研究員となったそうです。何か他人事みたいに言いますけど、その頃は彼とは余り話したりしてなかったので、卒業後にどうなったとか特に気にしていませんでした。だけど、まさか私の上司になるなんてね。運命のいたずらでしょうか。尤も、だからと言って、別段こちらが不利益を被ることはなく、普通に仕事をこなす毎日を送っております。あっ、今は臨時で第一部に配属となっていますけどね。さて、明日からは、このネックレスを身に着けて、仕事をすることにしようっと。