悪役令嬢は世界のバグを修正する
第7章 大夜会事件
シーン10 章ラスト(排除イベント直前)
夜会は終盤に入っていた。
楽団の音がゆっくりになる。
踊る人の数が減る。
代わりに会話の輪が増える。
評価の時間。
決定の時間。
王宮大ホールの空気が変わっていた。
中心には人が集まっている。
王族。
婚約候補。
上位貴族。
そしてその中央にいるのは、
エレノア。
完璧な位置。
完璧な距離。
完璧な笑顔。
婚約候補と話している。
侯爵嫡男が頷く。
騎士団エースが微笑む。
王子候補が礼をする。
周囲の令嬢たちが納得した顔をする。
「決まりね」
「当然」
「今年も王家派」
「エレノア様で確定」
評価が固まっていく。
その一方で、
ホールの端。
人の少ない位置。
そこに立っているのが、
レティシアだった。
偶然のように。
だが偶然じゃない。
配置されている。
席順も。
立ち位置も。
会話相手も。
全部、外側。
一人の令嬢が小さく言う。
「こちらへどうぞ」
案内される。
端の席。
視線が届かない位置。
笑われやすい位置。
恥をかかせる位置。
セシリアが気付く。
「……罠ね」
レティシアは動かない。
ただ座る。
その瞬間。
視界が開く。
巨大ルーン。
ホールの上に回っている。
今までで一番大きい。
円が重なる。
線が回る。
ノードが光る。
派閥。
候補。
令嬢。
全部表示されている。
中央。
ELEANOR
RIVAL ROUTE
周囲。
ENGAGEMENT PATH
外側。
LETICIA
STATUS LOW
矢印が伸びる。
ELIMINATION FLOW
表示が赤くなる。
SYSTEM
ELIMINATION EVENT READY
次の行。
FORCED CORRECTION
さらに。
RIVAL ROUTE FIXING
ルーンが高速で回転する。
配置が固定されていく。
席順が光る。
会話順が光る。
ダンス順が光る。
次に起きるイベントが浮かぶ。
PUBLIC MISTAKE
ETIQUETTE FAILURE
SOCIAL DROP
ELIMINATION
レティシアの位置が赤く点滅する。
固定される。
その瞬間。
音が止まる。
ほんの一瞬。
回転していたルーンの一部が、
崩れた。
線がずれる。
円が歪む。
表示が乱れる。
UNKNOWN VARIABLE
文字が出る。
次の瞬間。
EVENT RESISTANCE
SCRIPT ERROR
FLOW UNSTABLE
中央のルーンが震える。
エレノアの位置は安定。
だが、
別の線が割り込む。
CECILIA
さらに細い線。
LETICIA
表示が重なる。
CORRECTION ACTIVE
ELIMINATION PRIORITY
だが修正しきれない。
ルーンが揺れる。
回転が乱れる。
レティシアの視界が完全に開く。
全部見える。
配置が見える。
流れが見える。
評価が見える。
Scriptが見える。
人がどう動くか見える。
次に何が起きるか見える。
彼女の瞳に巨大なルーンが映る。
小さく息を吐く。
心の中で言う。
(社交も)
少し間。
(世界も)
ルーンが回る。
(全部…)
線が光る。
(仕組み)
次のイベントが点滅する。
ELIMINATION EVENT
準備完了。
発動直前。
レティシアの目がわずかに細くなる。
ほんの少しだけ。
口が動く。
(なら)
ルーンが震える。
(壊せる)
その瞬間。
表示が止まる。
SYSTEM
UNDEFINED PATH
次の行が出ない。
ルーンが一瞬、完全に停止した。