悪役令嬢は世界のバグを修正する
騎士団本部・会議室。
未知ルートの表示が消えずに残る中、
副官が次の資料を呼び出す。
「研究所からの追加報告です」
中央の表示が切り替わる。
通信式が展開される。
INSTITUTE LINK
CONNECTED
数式の輪が回転し、
新しいログが表示される。
STRUCTURE STATUS
その下に、
赤い文字。
STRUCTURE UNSTABLE
さらに更新。
SCRIPT ERROR
FLOW BREAK
会議室の空気が一段重くなる。
騎士の一人が顔をしかめる。
「……まだ続いているのか」
副官が頷く。
「はい」
表示を拡大する。
CORRECTION LOG
RUNNING
RUNNING
RETRY
RUNNING
ERROR
再び表示。
CORRECTION
RUNNING
副官が静かに言う。
「現在、補正処理中」
別の騎士が資料を見ながら言う。
「夜会からどれだけ経っている」
副官。
「三日です」
騎士が低く言う。
「長すぎるな」
副官は否定しない。
操作盤を叩く。
別のログが出る。
SCRIPT TRACE
REWRITE
FAILED
RETRY
FAILED
RETRY
FAILED
部屋が静まる。
一人の騎士が言う。
「……直っていないのか」
副官が答える。
「未修復です」
さらに表示が追加される。
FLOW CONTROL
ACTIVE
CORRECTION
RUNNING
FORCED FIX
NOT EXECUTED
騎士の一人が顔を上げる。
「強制修正は」
副官。
「待機状態」
表示が出る。
INTERVENTION
STANDBY
短い沈黙。
別の騎士が呟く。
「世界側が補正してるんだろう」
副官は少しだけ間を置く。
そして答える。
「はい」
静かな声。
「現在、世界側補正中です」
会議室の空気がわずかに揺れる。
騎士の一人が眉をひそめる。
「……まだ直ってないのか」
副官は即答する。
「未修復」
表示が再び中央に出る。
STRUCTURE UNSTABLE
SCRIPT ERROR
FLOW BREAK
その下に、
ゆっくり点滅する文字。
CORRECTION
RUNNING
RUNNING
RUNNING
止まらない。
終わらない。
騎士の一人が低く言う。
「……珍しいな」
別の騎士。
「いや」
小さく首を振る。
「初めて見た」
隊長は腕を組んだまま、
表示を見続けている。
何も言わない。
ただ一言だけ、
小さく呟く。
「間に合ってないな」
誰も返事をしない。
表示は回り続ける。
CORRECTION RUNNING
STRUCTURE UNSTABLE
UNKNOWN PATH
ACTIVE
まるで、
世界そのものが
修復に失敗しているようだった。