悪役令嬢は世界のバグを修正する
闘技場。
歓声が波のように押し寄せる。
試合が終わるたびに、
空気はさらに熱を帯びていく。
そして――
最後の一戦が終わった。
審判の声が響く。
勝者の名が告げられる。
同時に。
トーナメント表が更新される。
光が走る。
名前が消える。
線が収束する。
すべての流れが、
一つの対戦へと繋がる。
表示が大きく浮かび上がる。
FINAL MATCH
KYLE
vs
LETICIA
一瞬の静寂。
次の瞬間。
観客席が爆発した。
「来た……!」
「決勝だ!」
「やっぱりこの二人か!」
「他とはレベルが違いすぎる!」
歓声と興奮。
期待と緊張。
すべてが一点に集まる。
視線が交差する。
闘技場の両端。
レティシア。
カイル。
まだ距離がある。
だが、
誰もが理解している。
この距離は、
すぐに消える。
レティシアは静かに立っている。
その視界。
トーナメント表は、
ただの表示ではない。
流れ。
順序。
確定した結果。
すべてが見えている。
(流れ通り)
ここまで、
一度も外れていない。
試合順。
勝敗。
対戦。
すべて予測通り。
(順番通り)
だから、
この対戦も――
当然の結果。
だが。
そのとき。
表示がわずかに揺れた。
一瞬だけ。
ノイズのように。
彼女の視界に、
別の表示が割り込む。
UNKNOWN PATH
ACTIVE
レティシアの目がわずかに細まる。
(……また)
すぐに消える。
元の表示に戻る。
FINAL MATCH
KYLE
vs
LETICIA
観客は歓声を上げ続ける。
誰も気づかない。
だが。
彼女だけが理解する。
(流れ通りじゃない)
ほんのわずかに、
ズレている。
少し間。
彼女は小さく息を吐く。
(でも)
視線を上げる。
カイルを見る。
(関係ない)
表示が静かに重なる。
SCRIPT
RUNNING
FLOW
UNSTABLE
UNKNOWN PATH
ACTIVE
決戦は確定した。
だがそれは、
“予定された決勝”ではない。
――すでに、
予定外の戦闘に変わっていた。