悪役令嬢は世界のバグを修正する
「――迎撃!」
号令と同時に、
騎士たちが前へ出る。
迷いはない。
未知であろうと、
敵と判断した以上、
やることは一つ。
剣が抜かれる。
魔法陣が展開される。
一斉に、
攻撃が放たれる。
鋭い斬撃。
収束した魔力。
それらが、
中心に立つ“それ”へ叩き込まれる。
――当たる。
確かに、
命中する。
衝撃。
光。
一瞬、
形が崩れる。
腕が裂ける。
胴が分断される。
ルーンの構造が、
ばらばらに散る。
だが。
次の瞬間。
戻る。
崩れた構造が、
そのまま再接続される。
切断された部分が、
何事もなかったかのように、
元の位置へ戻る。
再構築。
完全に。
騎士の一人が、
息を呑む。
「……効いてない!?」
再度、
攻撃が叩き込まれる。
今度は魔法。
高密度の一撃。
空間ごと削り取るような威力。
――直撃。
だが。
同じ。
崩れる。
戻る。
変化はない。
まるで、
意味がない。
観測室。
水晶の表示が更新される。
DAMAGE
IGNORED
「……!」
研究員が息を呑む。
「ダメージが……処理されていません!」
「無効化されています!」
主任は動かない。
ただ、
その表示を見ている。
理解している。
これは防御ではない。
回復でもない。
“対象外”。
遺跡内部。
騎士たちの動きが鈍る。
攻撃しているのに、
手応えがない。
削れているのに、
減っていない。
レティシアは、
その光景を見ている。
はっきりと分かる。
これは、
ダメージという概念ではない。
削るものが、
存在していない。
(……違う)
壊しているわけじゃない。
壊れる対象じゃない。
“構造”だ。
だから戻る。
だから変わらない。
騎士の剣も、
魔法も、
ここでは意味を持たない。
それは、
敵ではない。
“削る対象”がない存在だった。