悪役令嬢は世界のバグを修正する
静寂の中、
中央の表示がわずかに揺れる。
更新。
新たな層が重なり、
文字が書き換わる。
CLASS
HERESY
SYSTEM THREAT
空気が変わる。
だが、
誰も反応しない。
それは驚くべきことではない。
ただ、
“確定した”だけだ。
HERESY。
神の定義から外れた存在。
SYSTEM THREAT。
世界構造への干渉者。
宗教的な逸脱。
技術的な危険。
二つの概念が、
一つの対象に重なる。
神官の一人が、
静かに言う。
「通常個体ではない」
別の神官が続く。
「分類不能ではない」
その言葉に、
迷いはない。
理解しているわけではない。
原理も、
構造も、
完全には掴めていない。
それでも――
“分類”はできる。
未知であっても、
枠にはめることは可能。
この場所では、
それで十分だった。
表示が、
確定状態に入る。
揺らぎが消える。
対象は定義された。
曖昧さは排除され、
不明はそのまま残され、
それでも、
扱いは決まる。
神官たちは動かない。
だが、
すでに全員が同じ結論に到達している。
ここにあるのは、
理解ではない。
“判断可能な状態”への変換。
それが終わった瞬間だった。
レティシアという存在は、
もはや個人ではない。
分類された対象。
処理されるべき、
一つの“事象”へと変わっていた。