小説悪女は獄中で死んだ――芋剥きのエルサは帳簿…N4120MM
あらすじ
この作品について
悪女は死んだ。残った女は、死者の名前で芋を剥く。
処刑前夜、国家反逆罪で死刑を待つ悪女シシーリアの牢へ、彼女と年格好の近い少女の遺体が運び込まれた。
「生きたいなら脱げ。お前の服をそいつへ着せる」
死体と服を交換し、地下水路から逃げたシシーリアは、翌朝、自分の獄死を告げる瓦版を生きたまま聞く。
悪女シシーリアは死んだ。
名前も家も財産も失った彼女が辿り着いたのは、七つの賢者の塔で最底辺と笑われる「錫の塔」。
そこで与えられたのは、エルサという偽名と、三日間の皿洗い契約だった。
魔法は使えない。料理もできない。皿は割るし、カルトッフェルの皮は厚い。
だが皿洗い三日目、塔の酒場で客が次々と倒れる。
逃げれば追手に見つかる。
残れば、身元不明の新人下働きが便利な犯人にされる。
エルサは逃げる代わりに、客が食べた物、座っていた場所、使った器、発症した時刻を注文板へ並べ始めた。
専門知識はない。
けれど、別々の人間が持つ知識と記録を、比較できる形につなぐことならできる。
苦い小麦。異常発酵する麦酒。粉々になる魔導回路。床下を這う黒い根。そして、王宮が用意しようとする一人の毒殺犯。
誰も自分の担当範囲では間違えていない。
それでも事故は起き、組織は責任を終わらせるための犯人を一人だけ求める。
エルサは事件を一つ止めるたび、三日、一か月、三か月と雇用をつなぎ、自分の名前と食事と寝床を守っていく。
名誉も復讐もいらない。
欲しいのは、一日三食と寝床と、明日もエルサとしてカルトッフェルを剥ける仕事だけ。
死んだことにされた悪女が偽名と帳簿を手に、便利な犯人へ押しつけられる責任と、王国を蝕む怪事件をつないでいく、料理と仕事と陰謀のダークファンタジー。
全 33 話
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