この作品について
これは、神様がまだ神社になる前の物語。
あなたの初詣は、どこですか?
その神社の神様が、どんな願いを得意としているか知っていますか?
受験、商売繁盛、縁結び、厄除け――神様にも得意分野があります。
けれど、なぜその願いを任されるようになったのかは、意外と知られていません。
神社には本殿のほかにも、小さなお社に別の神様が祀られていることがあります。
まるで学校に並ぶ歴代校長の写真。名前は残っていても、何を守り、なぜそこにいるのかは今となってはミステリーです。
そんな神様たちを題材にしたAIアプリ「女神占い」が、千歳の学校で流行っていました。
13柱の女神から、自分に近い一柱や相性のいい相手を教えてくれるアプリです。
開発者は千歳の父。けれど千歳は、何でも理屈で決めつけるAI・ツクヨミが大嫌いでした。
修学旅行で三内丸山遺跡を訪れた千歳は、突然倒れて意識を失います。
その直後、父の管理画面には、現在地は三内丸山のまま、時刻だけが約五千年前まで巻き戻った異常ログが現れました。
目を覚ました千歳がいたのは、13柱の女神たちが生身の女性として暮らす縄文世界。
身も心も捧げた使命にすべてを奪われた女神。
二十年、ただ相棒の居場所を守り続けた女神。
故郷を捨て、未来を賭けた土地で信頼を得ようとする女神。
親に捨てられても、自分の足で前へ進む女神。
しかも千歳自身も、後の時代に「醜い」と語られ、選ばれなかった女神・イワナガヒメの姿になっていました。
千歳には、ほかの人には見えない色や、人の気持ちの奥が見えることがあります。
現代では「変な子」と思われるのが怖くて、友達にも父にも隠してきた力。
けれど縄文では、それが石や印の奥を読み、人を守る才能として認められていきます。
一方、現代に残された父はツクヨミとともに、消しても戻る処理と、白黒では説明できない値を追い始めます。
そして、自分が娘の見ていた世界を、何ひとつ見ようとしてこなかったことに気づいていきます。
神様が、まだ神社になる前。
名前だけが残り、役割も物語も忘れられる前。
そこにあるのに、見えているのに、目に映っていないものを「見る」縄文デバッグ・ミステリー。