7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
砂漠の決闘は、凄まじい衝撃音と土煙の中で、三時間に及ぶ激闘となっていた。 不動の防衛将ガイアと獣王ヴォルグの肉弾戦は、互いの拳が岩のように固く、まさに一歩も引かない意地のぶつかり合いだった。
「グアアアアッ! 竜よ! 貴様は私を殺さぬという『優しさの枷』に、いつまで耐えられる! その枷こそが、貴様の敗因となるぞ!」
ヴォルグは、ガイアの動きを冷静に分析し、その攻撃が常に「殺し」のベクトルを避けていることを見抜いていた。彼はその優しさを嘲笑い、肉体と精神の両面でガイアを追い詰める。
「吠えるな、獣王よ! 王の拳は、貴様を殺すためにあるのではない! 守るための強さこそが、真の力だと証明するためにある!」
ガイアの全身の竜鱗は砕け、血を流していた。BPI 600の強大な力を持つ彼だが、ヴォルグの「命を懸けた武人の誇り」が、その力を封じ込めていた。
戦闘能力数値Battle Power Indexは、あくまでも参考値である。もちろん、その数字の大小は、戦局に大きな影響を与えるが、経験や技能、そして制限のある決闘という場では、その数値の差は単純なものではなくなっていた。
その時、ヴォルグがマグマのような熱量を込めた渾身の一撃を、ガイアの頭部目掛けて放った。
「終わりにしろ、竜よ! 貴様の優しさに付き合う暇はない!」
だが、ガイアは、その一撃を避けなかった。全身の魔力を右腕に集中させ、ヴォルグの拳を紙一重で受け流し、逆に、自身の右拳をヴォルグの脇腹に叩き込んだ。
ドォン!!
「う、ぐぅ……」
ヴォルグの巨体が、初めて大きく吹き飛ばされ、砂漠の岩盤に激突した。ガイアの拳は、ヴォルグの腹部を砕くことはしなかったが、戦闘不能に追い込むほどの衝撃を与えていた。
「グオオオオオッ!!」
「ヴォルグ様がやられたぞ!」
「こやつ、生きては帰さぬぞ……!」
周囲で戦況を見守っていた獣人族の戦士たちが激昂し、槍を構えて一斉に参戦しようと飛び出した。
「止まれッ!!」
しかし、ヴォルグは膝をついたまま、血を吐きながらも、武人の誇りを込めた咆哮で戦士たちを一喝した。
「引け! 貴様ら! これは武人の決闘だ! 敗者は私だ! 貴様らの血で、私の名誉を汚すな!」
ヴォルグの言葉に、獣人族の戦士たちはしぶしぶと槍を下ろした。ガイアは、満身創痍の状態で、その傍らに剣を地面に突き立てた。
「貴様の言う『力』ならば、私の勝ちだ。だが、私は貴様を殺さない。共に守る仲間が欲しいだけだ。我らの王の優しさは、貴様の命を賭けた誇りを、死ではなく生で受け止める。それが、王の武人としての仁義だ」
ガイアの揺るぎない覚悟と、彼がヒカル王の理念を否定せずに示した「愛の拳」は、ヴォルグの武人の魂を深く揺さぶった。
「……フン。ヒカル王の代理。貴様のタフさと仁義、このヴォルグ、認めよう」
ヴォルグは、立ち上がると、深々と頭を下げた。
「我が赤獅子族は、貴様らの統一王国と敵対しない。ただし、同盟ではない。不可侵条約を結ぶ。貴様らが弱さを見せた時、このヴォルグが牙を向くことを忘れるな」
ガイアは、ヴォルグの言葉に静かに頷き、その場で不可侵条約を締結した。外交は、武力という名の仁義によって、初めての突破口を開いたのだ。
◇◆◇◆◇
「さあ、昨日の敵は、今日の味方、ということですわ!」
「皆様、ご飯の時間ですよ~」
ガイアとヴォルグの決闘が終わり、テラが立ち上げた「胃袋攻略戦」の成果が表れ始めていた。
テラの献身的な愛による炊き出しは、獣人族の女性たちと子供たちに大好評だった。ソイルが手伝うテラの愛情料理は、砂漠の熱風で乾燥した獣人族の胃袋と心に、温かい安寧をもたらしていた。
「このスープは美味い! 栄養価が高く、腹持ちがいい! 竜族の食事は、軟弱かと思ったが……」
獣人族の女性たちは、テラの料理を前に、驚きの声を上げる。
「でしょう? 食べることは、生きることの基本です。戦いも大切ですが、食事も大切ですよ」
テラは、母性的な愛を込めた微笑みで、獣人族の女性たちに優しく語りかける。
【美味い飯を作る奴に、悪い奴はいない】
その言葉が、獣人族の女性たちの心に響き、彼女たちの王への不信感は徐々に溶け出していく。
その中で、ソイルは、昨日自分が手当を拒否された獣人の子供の傍らに、静かに座り込んだ。
「ねぇ、これ。ママが作った、怪我に効く薬草入りの煮込み。美味しいよ」
ソイルは、治癒魔法ではなく、ただ温かいスープを差し出した。少年の母親は、ソイルの純粋な献身的な愛に、複雑な表情を浮かべる。
少年は、警戒しながらも、スープを一口飲むと、その温かさと優しさに目を丸くした。
「……う、美味い」
「でしょう? 痛みは、優しさで癒やさないと、いけないんだよ」
にっこりと笑うソイルの言葉は、獣人族の「力こそ正義」という論理とは異なる、「優しさが生命を支える」という、ヒカル王の理念の根幹を、小さな友情という形で、獣人の子供の心に植え付けた。
「ありがとう……ソイル様」
少年は、ソイルに優しく微笑み、二人の間に、種族の壁を超えた小さな友情が芽生えた。
ライオスとユリウスも、その光景を見て、武力と知恵だけではない「守るための強さ」の答えを見つけた。
「父上たちは……やっぱりすごいな」
ライオスは、武力だけでなく、愛の献身によっても世界を変えることができるという、王の理念の真価を目の当たりにした。
「論理的に見て、テラ王妃とソイル皇女の献身こそ、王の優しさという無形の力を、彼らが受け入れられる物理的な現実に変えた。この外交は、武力と献身の二つの柱によって成功したんだね」
ユリウスは、知性的な興奮を隠せない。
ガイアは、傷ついた肉体をテラの治癒魔法で回復させながら、ヒカルに通信魔力を送った。
「ライオス様、そしてユリウス様。ヴォルグの仁義は得ましたが、彼は獣人族という広大な勢力の一派に過ぎません。他の部族への外交は、地道な献身と、王のさらなる威光をもって、一歩ずつ進める必要があります。この戦いは、まだ始まったばかりですぞ!」
外交は、武力という名の仁義と、献身的な愛の力によって、難攻不落の獣人族の根城に、確固たる一歩を刻んだのだった。そして、未来の王族たちにとっては、貴重な経験を得た一日であった。
【第156話へつづく】