7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
王都の学術院特別解析室。結界の消失という神の警告を受けてから数日、オーディンやアウラ、イリスたちが解析に没頭していた空間に、ついに最悪の警報が鳴り響いた。
「王よ! 北東の空に、巨大な魔力反応を確認! 座標は、かつて魔王領の結界があった空域です!」
アウラが、初めて獲得した「悲しみ」という感情を押し殺すかのように、冷静に報告する。
ヒカルは、円卓にいる六龍姫と主要な六天将たちを見渡した。誰もが、これが神(管理者)からの最初の接触であることを悟っていた。
「外見は? 魔族か、あるいは古代の兵器か?」
「解析、不能です。魔力は純粋な光属性ですが、その組成は無機質。生命体特有の感情の揺らぎや、魔力の『癖』が一切観測できません」
アウラの報告が終わった瞬間、空虚の斥候王ゼファーの魔力通信が、司令部に響き渡った。
『団長! 視認しました! 巨大な白い竜の群れです! 翼は金属質で、身体には幾何学的な文様が刻まれている! まるで、エラー・ビーストの完成形です!』
ゼファーの映像魔術が、王都の空に映し出される。 そこにいたのは、神々しい白銀の鱗を持つ竜族だが、その瞳には感情の光がなく、ただ冷たいまるで純粋なプログラムだった。
「ゼファー! その映像、解析盤に固定を!」
知識の側妃イリスが、解析席から身を乗り出し、食い入るように映像を見つめた。
「この翼の構造、体表の幾何学的な紋様……。そして、この純粋すぎる光の魔力。……オーディン! 『大図書館』の最深部にある『箱庭の』の記述と照合を!」
若き学術院長オーディンが、即座に知識の照合を開始する。
「照合完了……! イリス様、これは……! 古代の歴史書にかろうじて記載が残されていた『天竜族』。天使型メカドラゴンの記述と酷似しています!」
イリスは、その冷徹な論理の顔を曇らせた。
「やはりそうか……神のシステムが、世界のリセットのために送り込んできた、天使型メカドラゴンだ」
絶望的な事実が、司令部に突きつけられる。従来の魔法やユニゾンブレスが通じない、根源的な「消去プログラム」を持つ、神の尖兵だ。
「ヒカル様! 天竜族の動きが、南に向かっています! 南の砂漠の獣人族の集落を、最初の標的にしています!」
ルーナが悲痛な声を上げた。ヒカルは、ガイアとテラが外交に失敗した隣人たちが、最初の犠牲となるという事実に直面した。
「しかしながら、彼らは我々の同盟国ではありません。残念ながら、今、彼らを救援することは、王国の資産を無駄に消耗する戦略的リスクを伴います」
最高戦略官のアクアが、冷静な判断を求める。獣人族は同盟を拒否し、不可侵条約を結んだに過ぎない。彼らを救う論理的な義務は、ヒカル王にはなかった。
しかし、ヒカルの胸には、獣王の傲慢さではなく、外交に失敗したテラとソイルの献身の愛、そして彼らが「仲間ではない」と突きつけられた屈辱が刻まれていた。
「天竜族の目的は、我々も含めて、彼らの世界運営の脅威となる『バグ』の消去です。彼らが最初に効率的に狙うのは、我々の支配下にない、孤立した勢力でしょう……」
ヒカルは、漆黒の忠誠竜姫ヴァルキリアに視線を向けた。
「ヴァルキリア。天竜族の攻撃は?」
「シェイドの解析では、物理攻撃が無効。奴らは、触れたものをデータとして分解し、『存在そのものを消去』している模様です。まるで、神のシステムが、世界を初期化しているかのように」
絶望的な情報だった。従来の魔法やユニゾンブレスが通じない、根源的な「消去プログラム」だ。
◇◆◇◆◇
王城のテラス。
ヒカル王の息子ライオス(13歳)と、テラの娘ソイル(12歳)は、魔力の変動に気づき、王都の空を見上げていた。
「あれが……父上たちが言っていた、神の敵?」
ライオスの炎の瞳が、天竜族の冷たい光を捉える。
その時、後方司令部から、獣人族の集落が襲われているという悲鳴に近い通信が響いた。
『助けてくれ! 白い化け物に、集落が……! 身体が光になって消えていく!』
「ああっ……!」
ソイルは、両手で口を押さえた。彼女の心には、先日自分が治癒魔法を拒絶された、あの獣人の子供の顔が浮かんでいた。
「ライオス兄さん! あの子たちが……! 私たちが仲良くなりたいって思っていた、あの人たちが、消されちゃう!」
ソイルの献身的な愛は、論理的な外交の壁を乗り越えて、目の前の人命救助という倫理的な義務へと激昂した。
「くっそー! 父上! なんで動かないんだ!」
ライオスは、王城の執務室に向かって吠える。彼の激情の炎は、目の前の理不尽な暴力を焼き尽くす殺意へと変わっていた。
「獣人族は同盟国じゃない! だから見捨てるのか!? 困っている隣人を見捨てる王の息子なんて、俺は嫌だ!」
ソイルがライオスの腕を掴む。その瞳は、涙で濡れているが、揺るぎない覚悟が宿っていた。
「ライオス兄さん。行こう! 私たちが、あの時、仲良くなれなかった友を助けに行くんだ!」
ライオスは、ソイルの純粋な献身と、ヒカル王の政治的な判断が衝突する、倫理の狭間に直面した。
「……待て、ライオス。王の命令はまだだ」
演習場にいた生徒会長シリウス(15歳)が、二人を止めようと駆け寄る。
「君たちが動けば、外交は完全に破綻する! ヒカル様は、まだ同盟国ではない隣人を助けるという、政治的リスクを冒すべきではないと、論理的に判断しているはずだ!」
「うるせぇ、シリウス! 論理なんて、今は知るか! 目の前で人が消えていくのに、計算なんてできるかよ!」
ライオスとソイル、子供たちの目は、すでに理性を超えた「愛の正義」の光で輝いていた。
【第160話へつづく】