7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
王都の司令部。モニターには、南の砂漠で一方的に蹂躙される獣人族の惨状と、無機質な殺戮を繰り返す天竜族の姿が映し出されていた。
「王よ。感情は捨てて、あえて論理的に申し上げます」
最高戦略官のアクアが、震える声で進言する。彼女の計算は、介入がもたらすリスクの巨大さを弾き出していた。
「彼らは条約を結んだだけの『他国』です。介入すれば、神のシステムは我々を明確な『敵性体』と認定し、攻撃対象をこの王都へと拡大させるでしょう。王国の守護という観点では、静観が最適解です」
ヒカルは玉座で拳を握りしめ、沈黙していた。アクアの言うことは正しい。王として、自国の民を危険に晒すわけにはいかない。だが、彼の「絆の共感者」の異能は、遠く離れた砂漠から届く、子供たちの悲鳴と、それを守ろうとするテラやソイルたちの張り裂けそうな心の痛みを拾い続けていた。
(俺は……何のために王になった? 裏切られ、見捨てられる絶望を知っている俺が、今、彼らを見捨てるのか?)
ヒカルの脳裏に、かつて自分を救ってくれたレヴィアの姿、そして自分を信じてくれたリリアの笑顔が過ぎる。
「……アクア。お前の計算は正しい」
ヒカルは静かに立ち上がった。その瞳には、かつて魔王を前にした時と同じ、揺るぎない覚悟の炎が宿っていた。
「だが、困っている隣人を見捨てて、自分たちだけが助かる……そんな『論理』で守られた平和に、何の価値がある? 俺が築きたいのは、計算された生存じゃない。痛みを分かち合い、共に生きる世界だ!」
ヒカルは右腕の『調律の剣』を掲げ、全軍に号令を発した。
「それでこそ、ヒカル様ですわ!」
ヒカルの決断を聞いたアクアは、かつての冷静な仮面を外し、瞳を輝かせてにっこりと微笑んだ。
「貴方の『優しさ』という非論理が、人類の論理を超越した時、それは最強の戦略となります! 全軍に展開を指示します!」
アクアは、瞬時に頭脳を切り替え、全軍に向けた緻密な作戦を練り上げた。
「レヴィア! フレア! 第1攻撃隊として、直ちに王と共に出撃! 最速で天竜族の注意を引きつけ、その火力を一点に集中させなさい! ルーナ、アウラ! 貴方たちは治癒と光の防衛線構築を主導! ガイア、テラ! 貴方たちは人命救助と防御の土台を確保! シエル! あなたは私とここに残り、転送の安定化と全軍の指揮統率を!」
アクアは、遠く離れた拠点に残る闇の王族にも迅速な指示を出す。
「ヴァルキリア、シェイド! 貴方たちの闇の特務機関は、王都の地下と上空の防衛線を確保! 全ての事態に備え、予備兵力として待機せよ! セフィラ、ゼファー! 貴方たちは全統一領の国境の監視を続行せよ! 人類側への情報共有は、レオーネ皇女に一任する!」
アクアの迅速な指揮統率のもと、全軍が即座に行動を開始した。
「論理は、王の愛を護るためにある! 全軍、直ちに出撃!」
「全軍に告ぐ! これより、南の獣人族集落へ急行し、天竜族を撃退する! 彼らはまだ同盟国ではない。だが、今日この瞬間から、彼らは我々が命を懸けて守るべき『友』だ!」
その命令は、論理を超えた「愛の暴走」だった。だが、その言葉こそが、凍りついていた司令部の空気を熱狂へと変えた。
「王の御心のままに! わたくしの光が、王の正義を照らします!」
ルーナが祈りを捧げ、通信魔術で王の声を戦場へ届ける。
◇◆◇◆◇
砂漠の戦場。
為す術なく仲間が「消去」されていく光景に、絶望していた獣王ヴォルグの耳に、ヒカルの声が届いた。
『獣王ヴォルグよ! 諦めるな! 今、援軍が向かう! 竜の王は、友を見殺しにはしない!』
その直後、王都から転移魔法によって、ヒカル率いる本隊が砂漠の上空に出現した。ヒカルは自ら先陣を切り、天竜族の前に立ちはだかる。
「消去などさせない! この世界に、無駄な命など一つもない!」
ヒカルの介入。それは、力こそ正義と信じていた獣王ヴォルグにとって、理解を超えた衝撃だった。
「馬鹿な……。我らは同盟を拒絶したのだぞ……? なぜ、自らの国を危険に晒してまで……」
ヴォルグの震える問いに、前線にいた不動の防衛将ガイアが、血まみれになりながらもニヤリと笑って答えた。
「言ったはずだ、獣王。これが、我らの王の『強さ』だ。……さあ、背中は預けるぞ!」
ヴォルグは咆哮した。それは恐怖ではなく、魂の共鳴による雄叫びだった。
「全戦士よ、聞け! 竜の王は、我らのために血を流すことを選んだ! ならば我らも応えねばならん! 竜族と共に戦え! 誇り高き牙を、あの白い化け物に突き立てろ!」
拒絶されていた外交の扉が、ヒカルの命懸けの決断によって、完全に開かれた瞬間だった。
◇◆◇◆◇
王城のテラスで、シリウスに制止されていたライオスとソイル。
彼らの耳にも、ヒカルの全軍放送が届いた。
『……彼らは我々が命を懸けて守るべき「友」だ!』
その言葉を聞いた瞬間、シリウスの手から力が抜けた。彼は呆気にとられた表情で、そして次第に晴れやかな笑顔へと変わっていった。
「……ははっ。やっぱり、敵わないな、ヒカルおじ様には」
シリウスは、生徒会長としての「論理」を捨て、ライオスとソイルに向き直った。
「ライオス、ソイル。王の命令が出た。……総員、出撃だ! 僕たちも行くぞ!」
「おうっ!! 父上、やっぱり最高にかっこいいぜ!」
ライオスが拳を突き上げ、ソイルが涙を拭って頷く。
「パパ……! うん、行こう! お友達を助けに!」
子供たちは、それぞれの魔力を解放し、親たちの後を追って戦場へと飛び出した。
◇◆◇◆◇
砂漠の戦場は、混戦を極めていた。
天竜族の無機質な光線が、ヒカルを狙う。ヒカルは『形態発動』を行い、紅蓮の鱗でその身を覆って攻撃を受け止めるが、神の兵器の出力は凄まじく、膝をつきそうになる。
「させるかぁぁぁッ!!」
上空から、巨大な炎の塊が天竜族に直撃した。
紅蓮の激情竜姫レヴィアだ。彼女は完全竜化し、ヒカルの前に降り立つと、彼を背にかばって天竜族を威嚇した。
「まったく! 本当にバカな夫ね! 損得勘定もできないなんて、王失格よ!」
レヴィアは悪態をつきながらも、その声は歓喜に震えていた。
「でも……困っている誰かのために、自分の命すら投げ出せる。そんな貴方だからこそ、我は惚れたのよ! さあ、存分に暴れなさい、我の愛するバカ王様!」
「母上! 俺もやるぞ!」
「私も!!」
「いいわよ! ライオス、ノア。一緒に敵を焼き尽くしてやりましょう!!」
レヴィアのもとにライオスとノアが駆けつけ、レヴィアの炎に自分の炎を重ねる。
ソイルはテラの元へ走り、負傷した獣人たちに治癒魔法をかける。
シリウスは、蒸気の剣で天竜族の視界を奪い、ガイアとヴォルグの連携をサポートする。
親と子、竜と人、そして獣人。
種族も世代も超えた「愛の和音」が、砂漠の戦場に響き渡る。
「見ろ、神よ! これが俺たちの『エラー』だ! 計算外の絆が、お前の論理を食い止める!」
ヒカルの叫びと共に、全軍の力が一つになり、天竜族の第一波を押し返し始めた。
世界の境界線上で起きたこの戦いは、に対する、人類と竜族の明確な宣戦布告となった。
そして、この勝利の直後、空が完全に割れ、本格的な「」の嵐が世界を覆うことになる。
【第161話へつづく】