7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
南の砂漠上空。ヒカル王の決断により、盟約軍は神の兵器「天竜族」との初戦に突入していた。
「レヴィア! フレア! 第1攻撃隊、第2攻撃隊、火力を集中させろ! 奴らの装甲を溶かし切れ!」
ヒカルの号令と共に、紅蓮の激情竜姫レヴィアと爆炎龍将軍フレアが炎の連続攻撃を天竜族の群れに叩き込む。しかし、神の兵器は、魔王軍の防御とは次元が違っていた。
「ダメだ、夫! 炎が通じない! 奴らは熱量を吸収している! 物理的な攻撃も、魔法も、全てデータとして霧散させているわ!」
レヴィアの咆哮が砂漠に虚しく響く。天竜族は、感情を持たない冷徹な光線で、獣人族の戦士や盟約軍の先遣隊を容赦なく「消去」していく。
「ヒカル様! 奴らの攻撃は、この世界の『』そのものからの干渉です! テラ様の絶対防御が……!」
最前線で防御の土台を築いていた不動の防衛将ガイアが、苦悶の声を上げる。
「くっ、どうすれば……」
その時、ヒカルの司令部へ、さらに、凄まじい絶望的な報告が飛び込んできた。
「王よ! 磐石の守護龍テラ様の防御結界が、天竜族の攻撃をすり抜けられました! 論理的な防御の構築を、奴らの『設定権限』が上回っています!」
司令部で指揮を執る最高戦略官アクアは、この事態に顔色を失った。テラの防御は、ヒカル王国の守護の根幹だ。それが、まるで壁をすり抜けるように無効化されたのだ。
「馬鹿な! テラの土の魔力は、この世界に存在する全ての物理法則に根ざしている! それを無効化するなんて……! 論理が、論理が通じないわ!」
アクアの理性的な焦燥は、司令部全体の動揺へと伝播する。
一方、後方司令部では、知識の側妃イリスが、オーディンと共に解析に没頭していた。
「王よ! 解析不能です! 奴らの装甲は、私たちがドワーフの技術で開発した対天竜兵器(DSW応用型)すら、解析コードの領域外に置いています! 攻撃ベクトル、弱点、すべてが『未定義』です!」
「ボルタ! DSWの試作は!」
ボルタ・アイアンハンドが、怒りに震える声で報告する。
「クソッ! DSWの試作はまだ最終調整が終わっていません! このままでは、弾頭が奴らの装甲に触れる前に、データ化されて消えてしまう!」
王国の知恵が、武力が、そして信仰が、全てが未知の神の兵器の前に屈しようとしていた。
ルーナとシルヴィアは、後方で懸命に治癒と祈りのユニゾンを展開していたが、天竜族の「消去」は肉体的な傷ではないため、治癒が追いつかない。
財務官僚長官ギルティアは、戦局悪化による戦費の異常な高騰を前に、冷や汗を流しながらも、ヒカルに通信魔力を送る。
「王よ! 戦費は度外視します! 大盤振る舞いですわ! ウィンドランナーと連携し、食料と魔力触媒の供給は無尽蔵に確保します! 命を懸けて、奴らを叩き潰してください!」
ギルティアの愛は、王の勝利への投資だった。物流・貿易次長ウィンドランナーも、戦場へ向かう補給路の確保に専念する。
◇◆◇◆◇
戦闘は、子供たちのいる前線にも及んでいた。
ライオス(炎)やソイル(土)といった次世代の子供たちは、リヒター総帥や獣王ヴォルグの武人たちと連携し、懸命に防御と避難誘導を続けていた。
しかし、天竜族の圧倒的な「消去」の力は、子供たちの心にも絶望を植え付け始めていた。
「くっ、何にも効かない! 燃やしても、土壁を作っても、全部消える!」
ライオスが悔しさに炎を叩きつける。ソイルもまた、母テラの絶対防御が破られた事実に、献身の愛が揺らいでいた。
その中で、水の竜姫アクアの娘、シズク(11歳)とマリン(11歳)の双子皇女は、母アクアの冷静な焦燥を肌で感じ取っていた。
シズクは、論理的な思考を続けるが、目の前の現実は計算を拒絶する。
「ダメよ、マリン! 私の演算回路が、敵の攻撃パターンを捉えられない! 論理が、論理が通じないわ!」
シズクの瞳には、パニックに近い焦燥が浮かんでいた。しかし、その時、隣にいた双子の妹、マリンが静かに、そして強い意志を込めて、海色の瞳を天竜族に向けた。
「お姉ちゃん。論理じゃなくて、波を見て。熱じゃなくて、振動を見て」
マリンは、シズクとは対照的に、おっとりとした性格だが、彼女の持つ魔力は、母アクアの「理性」ではなく、「流体」の持つ直感的な振動と流れを捉える能力に長けていた。
「振動……?」
マリンは、シズクの演算回路に、自分の直感を「波」として共有した。
それは、天竜族の完璧な「データ消去」の攻撃にも、わずかな『動作のラグ』があるという感覚だった。
「天竜族は、次の攻撃を行う前に、体内の回路を一瞬だけ『閉じる』。その僅かな瞬間に、奴らの体内の魔力構造が、『液状』へと変化する……!」
マリンの直感的な波長と、シズクの緻密な演算能力が融合した。
「馬鹿な……! 論理的ではない! しかし、データが一致する! 天竜族の『データ化』と『再構築』の間に、0.05秒の『液状化バグ』が存在する!」
シズクの顔に、論理が崩壊した後の、天才的なひらめきの光が宿る。
「マリン! 貴女の直感が、母の計算を超える希望を掴んだわ! この液状化バグを突けば、奴らの動きを……止めることができるかもしれない!」
その攻撃は、天竜族の装甲を砕く破壊ではない。わずかな液状化の瞬間に、水の魔力を流し込み、奴らの動作のサイクルを狂わせるという、「システムへの干渉」だった。
シズクとマリンの連携が、絶望的な戦況に、一筋の光明をもたらした。
【第162話へつづく】