7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
南の砂漠の戦場は、陸海空からの神の軍勢によって、完全に包囲されていた。
アウラが自らの肉体を光の粒子に変え、神のシステム内部へ潜伏したにもかかわらず、天竜族の無機質な魔力は統一領の全域を侵食し続けている。盟約軍は、天竜族(空)、海竜族(海)、そして地上を這う神の尖兵(エラー・ビーストの進化体)という三方向からの圧力に晒され、その防衛線は極限にまで引き延ばされていた。
司令部で指揮を執るヒカルの顔色は青白い。彼の戦場のは、アウラの存在が『消滅』として記録されているにもかかわらず、天竜族の行動パターンに「予期せぬノイズ」が観測されているという、矛盾したデータばかりを弾き出している。
「くっ……海竜族の動きは止めたが、天竜族の増援が早すぎる! レヴィア、テラ! 防衛線を維持できるか!?」
紅蓮の激情竜姫レヴィアの咆哮が響く。
「夫よ! 我らの炎と忠誠が尽きるまで、一歩も引かないわ! だが、敵の攻撃が論理的な防御をすり抜ける! 憎悪ではなく、純粋な『削除』の力よ!」
「主よ! 大地が悲鳴を上げております! もっと協力な盾がなければ……!」
磐石の守護龍テラは、全身の魔力を込めて防御結界を展開するが、結界は音を立てて砕け、大地が陥没していく。神のシステムが、彼女の防御の理を無効化しているのだ。
◇◆◇◆◇
司令部の後方では、ドワーフの技術側妃ボルタとエルフの知識側妃イリスが、技術統括を引き継いだソルニアと共に、必死に最後の防御手段を構築していた。
「ボルタ! エルフの理論とドワーフの技術を統合した『対神シールド』は!?」
技術を継承したばかりのソルニアが、震える声で報告する。
「ボルタ様、イリス様! アウラ様の技術コードは完全に展開していますが、私一人の魔力では、シールドの出力が追いつきません! 神のシステムの干渉が強すぎます!」
ソルニアは唇を噛み締め、悔しさに顔を歪ませた。
「私に、力が、足りないから……!」
「テメェのせいじゃねぇ! ソルニア!」
食い気味にボルタは怒声を発したが、その矛先はソルニアではない。
「お前は、継承したばかりのコードの容量を、完璧に回している! クソッ、神のシステム側の出力が、単純に高すぎるだけだ! これ以上無理に展開すれば、制御宝玉が焼き切れるぞ!」
ボルタの作業着は汗と油で汚れ、イリスの冷静な瞳にも焦燥の色が浮かぶ。彼らが開発した最後の技術の盾も、アウラという核を失った今、出力不足で維持できない状態だった。
「論理的に見て、このシールドは、もはや一時的な時間稼ぎにしかなりません。王よ、撤退を!」
最高戦略官のアクアが、苦渋の決断をヒカルに迫る。彼女の理性は、このまま戦線を維持することが、全軍の無駄な消滅に繋がることを示していた。
「王よ……王都への後退を! 兵を温存し、次の策を練るべきです!」
ヒカルは、撤退という屈辱的な命令を下すことに、深く苦悩する。彼の脳裏には、リリアの静かな愛、そして愛する子供たちの笑顔が浮かんでいた。
(そうか。アウラ、お前の言っていたのは、このことか……)
ヒカルは、目の前の敗北が、アウラの「論理破壊ウィルス」が起動するための時間稼ぎであることを悟った。撤退は敗北ではない。それは、アウラとの秘密の共闘の開始だった。
「撤退だ! 全軍、王都へ向けて一時撤退を開始せよ!」
盟約軍の全軍が、王都『調和の座』への撤退を開始した。
◇◆◇◆◇
撤退が開始される中、戦場の最前線、人類連合軍の陣営から、一人の武人が前に進み出た。
人類軍総帥リヒターだ。
彼は盟約軍の総崩れと、愛のユニゾンの核であるヒカル王の苦渋の表情を見て、武人としての最後の義務を悟った。
リヒターは、全身に『対竜用魔導外骨格』を装着する。それは、ドワーフの技術とエルフの知恵が融合した、彼の武力を極限まで高める最後の切り札だった。
「総帥リヒター! 何をなさるおつもりですか!」
司令部から、テラとガイアがリヒターの行動を制止しようと叫ぶ。
リヒターは、通信魔術をヒカル王、そして全人類軍に向けた。その声は、武人の誇りと、揺るぎない献身に満ちていた。
「ヒカル王よ! 貴方は、我々人類に、優しさという名の真の秩序をもたらした! 貴方の優しさが最強の力であることを、我々人類軍は、この命を賭けて証明する!」
リヒターは、外骨格の限界を超えて稼働させ、天竜族の群れに向かって突撃する。
「王よ、撤退を! ここは、我ら人類軍が護る! 貴方と、若い竜たちを逃がすためのを、このリヒターが務める!」
彼は、ヒカル王の理念を継ぎ、かつてユグドラが示した「武人の献身」を、人類側の誇りとして体現した。
ヒカルは、撤退ルートを確保するための布陣を瞬時に組み上げた。
「リヒター総帥、貴殿の申し出に感謝する! テラ! 第3攻撃隊を編成し、への物理援護に回れ! ガイアの第4攻撃隊は、アクアと共に、への魔法援護を! 犠牲は最小限に抑える!」
「任せておけ、ヒカル王! シリウス! 貴様は王の命を護れ! これが、私の最後の授業だ!」
リヒターは、最前線に残り、自らを囮として天竜族の集中砲火を引き受けた。人類軍総帥の壮絶な献身が、絶望的な撤退戦の火蓋を切った。
彼の後ろでは、テラとガイアが率いる第3、第4攻撃隊が、を務める人類軍への援護射撃を開始した。
「全軍、援護射撃を集中せよ! 一般竜兵、ブレスの波状攻撃!」
一般竜兵たちのブレスと、人類軍およびエルフ族の魔法援護がリヒターの背後から飛び交う。しかし、天竜族の無機質な光線は、その援護を嘲笑うかのように盟約軍の兵士を次々と「消去」していく。の犠牲は、既に凄まじい数に達していた。
「総帥リヒター殿……! 貴方の武人としての誇り、このガイアが大地と共に継承します!」
ヒカル王は、リヒターの武人としての献身に、心からの感謝を覚える。しかし、立ち止まっている暇はない。彼は、リヒターの自己犠牲を無駄にしないため、王都への後退を急いだ。
「リヒター総帥! 貴様の忠誠、必ず、王国の勝利で報いる!」
物語は、リヒターの壮絶なの戦いへと続く。
【第166話へつづく】