7/6再開《音楽xSFxファンタジー戦記》【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~最強の力は絆の中に。人類に裏切られた天才軍師の俺は六竜姫の激情を調律し和音を奏でて覇道を往く~5サイト33KPV
王都の地下深く、かつて魔王軍の残骸を解析していた巨大ドック。
そこには今、人類と竜族、エルフ、ドワーフの技術を結集させた希望の箱舟――超弩級飛行戦艦『希望号』が鎮座していた。
「動力炉、臨界点まであと5分! 冷却水循環、急げ!」
「魔力伝導率、98%で安定。エルフの術式班、結界のレイヤーを最終確認して!」
怒号と魔力の輝きが交錯する中、陣頭指揮を執るのは、学術院長のオーディンと、知識の側妃イリス。そして、ドワーフ族の技術者たちを束ねるのは、技術の側妃ボルタと、その父であり族長のジオ・アイアンハンドだ。
「おい若造ども! 手を休めるな! この船はただの鉄の塊じゃねえ! を迎えに行き、神の元へ殴り込む『家族の絆』そのものだ! ネジ一本の緩みも許さねえぞ!」
ジオが巨大なハンマーを担いで檄を飛ばせば、娘のボルタも油まみれの顔で叫ぶ。
「親父の言う通りだよ! アイラ(妹)たちが外で命懸けで時間を稼いでくれてるんだ! テラナやソルニアたちに後を託された私たちが、ここで遅れるわけにはいかないんだよ!」
一方、イリスは手元の魔導書を見つめ、冷静ながらも焦りを滲ませていた。
「論理的に見て、現存する技術の限界値です。ですが……神の領域である成層圏への突入には、まだ『推進力』に不安が残ります。大気圏を突破し、神の防御網を瞬発力で振り切るための爆発的な加速力。……計算上、あと一歩足りません」
「推進剤の配合を変えるか? いや、爆発のリスクが高すぎる……」
オーディンも苦渋の表情を浮かべる。
その時だった。
ドックの搬入ゲートが開き、一陣の鋭い風と共に、天狗族の使者たちが現れた。
先頭に立つのは、かつてセフィラと対立し、後に和解した天狗の長老だ。彼の背後には、巨大な翼のような形状をした、青白く輝く古代の魔導装置が運ばれてくる。
「長老殿……!? なぜここに?」
出迎えに出たジオが目を丸くする。
「フン。バグのに貸しを作るのは癪だが、世界の終わりを指をくわえて見ているほど、我らは老いぼれておらんわ! これは我ら天狗族が代々守り続けてきた『』。空のを操り、風そのものとなって翔けるための古代遺産だ」
長老は、その巨大な翼を『希望号』の船尾に取り付けるよう指示した。
「貴様らが空の彼方へ、王を迎えに行くというのなら、風の民として見送らぬわけにはいかん。……持って行け! これが我らからの、最後の手向けだ!」
「へっ……! 粋なことしやがるじゃねえか、空飛びジジイ!」
ジオがニカっと笑う。
「感謝します、長老。これで理論値に到達しました!」
イリスが目を輝かせ、ドワーフたちが手早く『風神の翼』を接続していく。
技術と魔法、そして種族の誇りが一つの船に宿った瞬間だった。
◇◆◇◆◇
出撃の準備が整い、乗員たちが次々とタラップを駆け上がっていく。
六龍姫、そして次世代の子供たち。
さらに、爆炎龍将軍フレア、深海の戦術師シエル、空虚の斥候王ゼファー、漆黒の工作師シェイドといった六天将の主力メンバーたち。
近接護衛のリリアや、フェンリア、アクアリーヌといった王室メイド隊の面々も乗り込む。
これは、王不在のまま挑む、王を取り戻すための決死の航海だ。
地上に残るのは、総司令のガイアと、王都防衛の要となる新六天将のテラナとソルニア、そして人類側摂政のレオナルドたちだ。
「ガイア殿。……後は頼みます」
タラップの上で、アクアがガイアに頭を下げる。
ガイアは、岩のような顔に力強い笑みを浮かべ、胸を叩いた。
「ご安心を。この地上は、我々が死守します。王が戻られるべき場所を、傷一つ付けさせはしません」
「頼んだぞ、ガイア!」
フレアが叫ぶ。
「おう! お前たちこそ、王を……そして王妃様とお子様方を頼んだぞ!」
ハッチが閉まり、艦橋に緊張が走る。
代理指揮を執るのは、最高戦略官のアクアだ。
「総員、配置につけ! メインエンジン、点火! 『風神の翼』、接続!」
エンジンが唸りを上げ、船体が浮上を始める。
艦橋の窓際で、小さな影が空を指差した。ルーナの娘、アルテミスだ。
彼女は、母親であるルーナの服の裾をギュッと掴み、大きな瞳で虚空を見上げていた。
「ママ……。見えるよ」
「え?」
「光の……道。パパがいる場所。神様がいる場所」
アルテミスは、閉ざされたドックの天井の向こう、遥か彼方の空を指差した。
彼女の瞳には、常人には見えない「導きの光」が映っているようだった。
先日の「祈りのユニゾン」でヒカルと精神が繋がった彼女は、今やヒカルの居場所を示す唯一の「羅針盤」となっていた。
「あそこに行けば……パパに会える?」
不安げに震える娘を、ルーナは優しく抱きしめた。
「ええ。……必ず会えます。アルテミスの声は、パパに届いていますから」
ルーナの温もりに、アルテミスの表情が和らぐ。
アクアもまた、二人のそばに歩み寄り、アルテミスの頭を撫でた。
「アルテミス。貴女の目は、私たちの論理を超えた真実を映しています。案内してちょうだい、小さな女神様。……一緒に、パパを迎えに行きましょう」
「うん! 任せて!」
アルテミスが力強く頷く。
アクアは深呼吸をし、マイクを握った。
全艦、そして地上で見送る全ての人々へ向けて、決意の演説を行う。
「これより、我々は空へ向かう! 神と呼ばれるシステムから、私たちの『王』を取り戻すために!」
「この船には、地上の全ての希望が詰まっている。ドワーフの技術、エルフの知恵、天狗の風、獣人の誇り、そして人類の祈り……。全ての種族の想いを乗せて、俺たちは飛ぶ!」
「総員、発進準備!!」
「「「アイ・アイ・サー!!!」」」
ズゴゴゴゴゴゴ……!!
ドックの天井ゲートが開放され、空が見えた。
そこには、無数の天竜族が待ち構えている。だが、もはや誰も恐れはしない。
「ゲート・オープン! 『希望号』、発進!!」
ズドオオオオオオオオッ!!
『風神の翼』が爆発的な推進力を生み出し、鉄の巨塊が弾丸のように空へと打ち上げられた。
重力を振り切り、音速を超え、雲を突き抜け、蒼穹の彼方へ。
「行けぇぇぇぇッ!!」
地上では、ガイアやジオ、リヒターの遺志を継ぐ兵士たちが、涙を流しながら叫んでいる。
「王を……頼んだぞーーッ!!」
上昇する艦橋から、アルテミスが指差す先。
成層圏の彼方に、神々しくも冷たい光を放つ、巨大な構造要塞が姿を現した。神の居城、『』だ。
その輝きの中に、微かだが、懐かしく温かい魔力の波動を感じる。
それは、虚数空間の狭間から、まさに今、帰還しようとしているヒカルの魂の光だった。
「待っていなさい、夫よ!」
レヴィアが叫ぶ。
「今、迎えに行くわ!」
大気圏を突破し、星の海へと躍り出る『希望号』。
最終決戦の舞台は、地上から天空へ。
王との再会、そして神殺しの戦いが、今、始まる。
【第179話へつづく】