最弱コウモリ幼体に転生したので、血を吸って進化する
二度目は、夜狩り梟を呼ばなかった。
胸の傷が塞がるまで一日休み、次の夕方に北の岩場へ向かう。
大梟が狩りへ出た後、枯れ木の根元まで近づいた。
巣へ上がる枝は三本ある。
一番太い枝にだけ、新しい爪痕が重なっていた。
獲物を掴んだまま戻る時、いつもそこへ降りるらしい。
フィナは枝の下を見上げた。
「高い」
『登れるか』
「無理」
返事が早い。
「ミナトが線を回して。私は下から引く」
俺は金属線を咥え、枯れ木を上った。
枝の根元には、乾いた裂け目がある。
何度も大梟の重さを受け、内側まで傷んでいた。
線をその裂け目へ入れ、枝を一周させる。
牙と爪で端を捻った。
前より結ぶのは速い。
それでも、人間の手で作った輪ほど綺麗にはならない。
線の先を地面へ下ろす。
フィナは岩陰まで引き、太い縄へつないだ。
そのままでは、枝一本を折る力が足りない。
縄の反対側を曲がった若木へ結び、途中へ木の棒を差し込む。
棒を抜けば、若木が戻る力で金属線が引かれる。
前の罠と同じ力を、網ではなく枝へ使う。
「落ちても、飛ぶよ」
『飛ぶ前に行く』
「今度は私を見ても、出ないから」
フィナは岩陰へ入った。
俺は枯れ木の上ではなく、隣の石柱へ移る。
大梟が戻る枝より少し高い。
風下ではない。
俺の匂いは巣へ流れる。
隠しきるつもりはなかった。
気づいても、ここは大梟の巣だ。
角兎の骨も、食べ残した肉もある。
俺を追い払うためなら、降りてくる。
夜が過ぎていく。
北の空がわずかに薄くなった頃、大きな熱が森の上を戻ってきた。
羽音はない。
爪には、細長い魔物を掴んでいる。
夜狩り梟は枯れ木の上を一度通り過ぎた。
俺の匂いを拾っている。
石柱の陰で動かない。
熱が背後へ回る。
また罠を見ているのかもしれない。
大梟はすぐには降りなかった。
二度、三度と岩場を回る。
やがて、掴んでいた獲物が暴れた。
爪の間から血が落ちる。
大梟が首を下げ、獲物へ嘴を入れた。
飛びながら押さえ直すことはできない。
枯れ木へ向きを変える。
いつもの太い枝へ、両脚が触れた。
枝が重さで沈む。
フィナはまだ引かない。
大梟が獲物を巣へ置き、翼を畳む。
その時、岩陰で木の棒が外れた。
若木が戻る。
金属線が張り、傷んでいた枝の根元へ食い込んだ。
乾いた音がした。
枝が折れる。
夜狩り梟の体が、獲物と一緒に落ちた。
翼を開こうとする。
折れた枝が片方の翼へ重なり、石柱との間へ挟んだ。
俺は上から飛び降りる。
大梟の頭がこちらへ向く。
嘴を避け、片方の眼へ爪を振った。
まぶたが閉じる。
傷つけただけで、眼は潰れない。
太い脚が腹へ来る。
横へ飛び、前に牙を入れた傷へ噛みついた。
血が口へ入る。
大梟が脚を引き、俺の体を地面へ叩きつけた。
牙が抜ける。
挟まっていた翼が枝を持ち上げ始める。
「まだ!」
フィナが岩陰から縄を引いた。
枝へつながった線が翼を押さえ直す。
大梟のもう片方の爪が、フィナのいる岩を掻いた。
届かない。
俺は背中へ飛びついた。
首の羽毛へ両方の爪を入れ、左右へ引く。
厚い羽の下に皮が見えた。
大梟が頭を後ろへ回す。
嘴が耳の近くまで来る。
その口の横で、音撃を放った。
羽毛の外へ散る前に、音が頭へ入る。
大梟の体が固まった。
ほんの一瞬だけだった。
俺は露出した首へ牙を押し込む。
血牙が皮を抜け、深く入った。
熱い血が流れ込んでくる。
大梟の翼が枝を跳ね上げた。
体ごと持ち上がる。
爪を離さない。
片翼だけで飛ぼうとしたが、石柱へぶつかった。
大梟と一緒に地面へ落ちる。
背中へ衝撃が来る。
牙は抜けなかった。
吸うほど、羽ばたきが弱くなる。
太い脚が地面を掻き、俺の脇腹へ爪先が触れた。
浅く皮を裂く。
もう一度来る前に、フィナが縄を脚へ投げた。
輪が爪の根元へかかる。
引いても止められない。
それでも、次の一撃は俺の体から外れた。
大梟の心音が乱れる。
速く鳴り、二度続けて止まりかける。
俺は血液吸収を強めた。
翼が地面へ落ちた。
爪も動かなくなる。
最後まで音はしなかった。
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夜狩り梟を討伐しました。
経験値を取得しました。
Lvが25から28に上昇しました。
最大HP:196から212に上昇しました。
最大MP:80から88に上昇しました。
筋力:88から100に上昇しました。
耐久:100から112に上昇しました。
敏捷:132から148に上昇しました。
感知:144から156に上昇しました。
魔力:72から80に上昇しました。
器用:80から92に上昇しました。
精神:76から84に上昇しました。
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固有スキル【因子吸収Lv1】が発動しました。
因子【夜狩り梟因子】を取得しました。
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因子【夜狩り梟因子】
静音飛行、夜目、翼力、急降下などが含まれる。
現在の肉体では、一部のみ適応できる。
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因子【夜狩り梟因子】の一部が種族特性【飛行Lv2】へ統合されました。
種族特性【飛行Lv2】が【飛行Lv3】へ上昇しました。
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種族特性【飛行Lv3】
羽ばたく音を以前より抑え、空中での急な方向転換を安定させる。
完全に音を消すことはできず、翼を傷つければ飛行精度も落ちる。
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血を吸う力を弱める。
大梟の体には、まだ血と熱が残っていた。
フィナが岩陰から出てくる。
最初に大梟ではなく、俺の脇腹を見た。
「立てる?」
『血を吸えば』
「全部は駄目」
『分かっている』
返しながら、もう一度牙を入れた。
フィナは止めず、近くに落ちていた灰色の羽を拾い始めた。
一本抜くたび、思っていたより強い力で引いていた。