最弱コウモリ幼体に転生したので、血を吸って進化する
ガレオの捜索隊がルーヴェン砦町を出たのは、消息不明の印がついた二日後だった。
捜索隊は四人だった。
先頭を歩くベルクは、短い片手槍で茂みを払っていた。
その後ろでは、斥候のエッダが地面を見ている。
残る二人は弓と盾を持ち、荷物を分けて背負っていた。
誰も、ガレオが生きているとは口にしなかった。
死んでいるとも決めていない。
見つけるまでは、どちらも同じだった。
「ここで罠を張ってる」
エッダが足を止めた。
木の根元に、細い縄の切れ端が残っている。
近くの土には、角兎が暴れた跡もあった。
「ガレオの結び方か」
「似てる。最後を二重に回すところも」
ベルクはしゃがみ、切れた縄を指で持ち上げた。
刃物で切った跡ではない。
細い歯で何度も噛んだように、繊維が潰れている。
「獲物に逃げられた?」
後ろの弓使いが聞く。
「罠だけならな」
エッダは少し先の木を示した。
人間の頭より高い位置に、黒い毛が引っかかっている。
地面へ続く足跡はない。
「飛ぶやつだ」
「梟か?」
「毛だよ。羽じゃない」
エッダは直接触れず、小さな革袋へ毛を入れた。
さらに森を進む。
ガレオの足跡は古くなり、途中から追跡粉の匂いへ変わった。
エッダは細い棒へ薬液をつけ、草の上へ近づける。
粉が残った場所で、薬液が薄い青へ変わった。
「使ってる量が多い」
「見失ったか」
「何度も道を変えられてる」
ガレオが追う相手は、真っ直ぐ逃げていない。
川を通り、倒木を渡り、同じ場所へ戻っている。
途中には、ガレオが置いた警報線もあった。
一つは切られ、一つは金属片だけがなくなっている。
ベルクが立ち上がる。
「罠を外す魔物か」
「ガレオが回収したのかもしれない」
「なら、線も持って帰る」
誰も答えなかった。
夕方前に、黒骨洞へ続く風穴へ着いた。
入口は狭い。
エッダが灯りを近づけると、壁に細い爪跡が何本も見えた。
新しいものと、古いものが重なっている。
「巣か」
盾を持つ男が入口から離れた。
「この先じゃない。出入りに使ってるだけ」
エッダは風穴へ腕を入れ、奥の空気を確かめる。
「人は通れない」
「上の入口へ回る」
ベルクが空を見る。
日が落ち始めていた。
黒骨洞の上側には、人間も通れる広い道がある。
そこから入れば、ガレオが使った可能性のある採石場跡へ続く。
だが、夜の黒骨洞へ捜索だけで入る者はいない。
「今日はここまで。火を二つ作る」
「魔物を寄せるよ」
「一つなら、飛ぶやつに消される」
ベルクは風穴から少し離れた岩場を選んだ。
二人が野営の準備を始める。
エッダは赤く塗った杭を取り出し、風穴の前へ打った。
魔物の出入り口。
未確認。
接近注意。
三本の切り込みを入れる。
「ガレオが中にいるなら、明日見つける」
ベルクが言った。
「いなかったら?」
「いた跡を探す」
夜になる前に、風穴の前へ人間の匂いと二つの火が残った。