余、ダンジョンコアにつき侵入者には死んでもらう。 ~ゴブリン二十匹から始める最弱迷宮譚~
三十五人の侵入者が、白灰薬果林へ雪崩れ込んだ。
白灰色の幹。
赤い葉。
金色に近い裏葉。
枝には、赤金色の小さな実がいくつも生っている。
本物のエリラの実ほど大きくない。
命の光も薄い。
だが、噂だけを頼りに来た者たちには、十分すぎるほど本物に見えた。
「見つけた!」
最初に声を上げたのは、十二人の冒険者隊にいた斥候だった。
「赤金の実だ! 本当にあったぞ!」
その声を聞いた瞬間、三つの集団が同時に動いた。
冒険者隊が走る。
十六人の私兵たちも、隊列を崩して果樹へ向かう。
薬師を守っていた護衛たちまで、赤金色の実へ視線を奪われた。
「待ちなさい!」
薬瓶を腰に下げた女が叫ぶ。
「まだ本物とは限りません! 先に性質を――」
「先に取った者のものだ!」
私兵の一人が枝へ手を伸ばした。
「全部採れ! 一本残らずだ!」
余の中で、何かが冷えた。
「全部」
白い部屋で、余はその言葉を繰り返した。
フィルエが管理するエリラの木。
赤金果守ゴブリンたちが毎日数を数える木。
ギギが守ろうとして死んだ木。
目の前にあるのは偽物だ。
この白灰薬果林が全部採られても、本物のエリラの木は枯れない。
それでも、腹が立った。
こいつらは、本物を見つけたとしても同じことをする。
一個残せば翌日には元の数へ戻ることなど知らない。
知ろうともしない。
ただ、全部取る。
売るために。
奪うために。
「始めろ」
余の声を、マネが迷宮中へ広げた。
「始めろ」
白灰薬果林が牙を剥いた。
◇
私兵の男が、赤金色の実を一つもぎ取った。
枝は簡単に折れた。
本物のエリラの木なら、フィルエが許可しなければ、あれほど簡単には採れない。
だが、男は気づかない。
鎧の下から腕を出し、実へ噛みついた。
果汁が弾ける。
「甘い!」
男の顔が明るくなる。
「傷も……!」
森を抜ける途中でついた頬の切り傷が、淡い光に包まれた。
傷口が閉じる。
完全ではない。
だが、目に見えるほど早い。
「本物だ!」
その一言で、欲望が弾けた。
私兵たちが果樹へ群がる。
冒険者隊も負けじと実を採り始める。
薬師の女だけが顔を歪めた。
「違う……」
彼女は、落ちた果汁を指先ですくった。
香りを嗅ぐ。
舌へほんの少しだけ乗せる。
「これは神級素材じゃない!」
だが、誰も聞かない。
「傷が治ったぞ!」
「毒も軽くなってる!」
「箱を出せ!」
「枝ごと切れ!」
余は、冷たく見ていた。
「フィルエ」
「うん」
「偽物の効果は正常か」
「正常。軽い回復と毒消し。食べるほど眠くなる」
「何個で効く」
「普通の人なら二個。強い人でも四個くらい」
すでに三個目へ手を伸ばしている者もいる。
「欲張りだな」
《はい》
「なら、眠れ」
◇
最初に膝をついたのは、果実を四つ食べた私兵だった。
「……何だ?」
剣を握る手から力が抜ける。
まぶたが落ちる。
「体が……」
横にいた男も、果実を抱えたままふらついた。
「毒か!?」
「違います!」
薬師の女が叫ぶ。
「眠りの成分です! 食べた者を下げて!」
「治せ!」
「数が多すぎる!」
その時、白い霧が木々の間へ流れ込んだ。
ハイハネの灰霧。
ただ視界を塞ぐ霧ではない。
距離を歪める。
声の方向をずらす。
仲間の姿を、半歩違う場所へ見せる。
「隊列を組め!」
十六人の私兵を率いていた男が叫んだ。
「果実は後だ! 盾を――」
マネが、その男の声を真似た。
「果実を守れ! 冒険者を近づけるな!」
「違う! 今のは俺じゃない!」
だが、すでに遅い。
私兵たちの一部が冒険者隊へ剣を向けた。
「やはり独占する気か!」
大剣を持った冒険者が怒鳴る。
「最初から信用してねえ!」
「馬鹿者! 声を真似る魔物だ!」
誰かが気づいた。
しかし、三つの集団はもともと仲間ではない。
同じ噂を追い、同じ場所へ来ただけだ。
小さな疑いは、霧と偽声によって一瞬で大きくなった。
私兵の盾が冒険者へ向く。
冒険者の弓が私兵を狙う。
薬師護衛隊が、両方から距離を取る。
隊列が崩れた。
「今だ」
余は命じた。
「グズ」
「グズ!」
白灰薬果林の地面が沈んだ。
黒泥が、果実へ群がっていた者たちの足を呑み込む。
「足元だ!」
「抜けない!」
「盾を下へ!」
盾を泥へ差し込み、足場を作ろうとする。
だが、黒泥は盾の縁を包み、そのまま引きずり込む。
男の腕が伸びる。
隣の仲間が助けようとする。
その影へ、カゲヌイの糸が刺さった。
「動けない!」
「影を切れ!」
火術師が炎を床へ放つ。
白い光が影を薄くする。
カゲヌイの糸が何本か外れる。
だが、炎で灰霧まで揺れた。
ハイハネが羽を強く打つ。
燃えた灰が細かく散り、火術師の顔へまとわりついた。
「目が!」
火術師が詠唱を止める。
その背後へ、霧喰い刃ゴブリンが走り込んだ。
一体。
二体。
五体。
小さな刃が、杖を握る指へ向かう。
火術師が反射で炎を放った。
一体のゴブリンが炎に呑まれかける。
その瞬間、別のゴブリンが体当たりした。
二体一緒に床を転がる。
炎が頭上を通り過ぎた。
「ギギッ!」
「ギッ!」
以前なら、それぞれ勝手に飛び込んでいただろう。
今は違う。
一体が囮になる。
一体が仲間を助ける。
残る三体が、火術師の杖と薬袋を切る。
「こいつら……連携を!」
火術師が驚いた時には、杖が手を離れていた。
湿骨王列の骨槍が、木々の間から飛び出す。
一本目が足を貫く。
二本目が肩を貫く。
三本目が胸を貫いた。
「が……!」
火術師が白い幹へ縫いつけられる。
《侵入者一名、死亡》
《ソウル獲得:41,000》
霧喰い刃ゴブリンたちは、倒れた火術師を見た。
自分たちが、仲間ではなく敵を追い詰めた。
小さな刃が震える。
だが、今度は落とさなかった。
「進め」
ガルザヴェインの声が、果樹林の奥から届いた。
「覇王号令――進軍」
重い気配が、配下たちの背中を押した。
従わせる命令ではない。
恐怖の中でも、次の一歩を踏み出させる号令。
「ギギッ!」
ゴブリンたちが再び走った。
◇
だが、侵入者側も弱くはなかった。
三十五人。
噂に釣られた烏合の衆に見えても、中には何度も死地を越えてきた者がいる。
十二人の冒険者隊を率いる大剣使いが、剣を地面へ突き立てた。
「全員、俺の声を聞け!」
マネの偽声を警戒し、自分の腕を切る。
血のついた手を高く上げた。
「血の手を上げているのが本物だ!」
大剣使いが叫ぶ。
「私兵ども! 今だけ争うな! このままじゃ全員喰われるぞ!」
私兵隊長も状況を理解した。
眠りかけた部下の頬を殴る。
「盾列を組み直せ! 冒険者は左! 薬師は中央へ!」
「命令するな!」
「死にたくなければ従え!」
言い争いながらも、隊列が作られていく。
前に私兵の盾。
左に冒険者。
中央に薬師と負傷者。
後ろに弓と術師。
さっきまで別々だった三つの集団が、生き残るために一つへまとまり始めた。
「面倒だな」
余は呟いた。
《侵入者側、臨時混成陣形を構築》
「見れば分かる」
薬師の女が、眠り始めた兵たちへ薬を飲ませる。
「眠りだけなら起こせます!」
刺激臭の強い液体。
鼻と喉を焼く覚醒薬。
眠っていた男たちが激しく咳き込み、目を開いた。
「果実は食べないで! 回復効果はありますが、本物ではありません!」
「偽物だと?」
大剣使いが赤金色の実を握り潰す。
「迷宮に踊らされたか!」
「そのようです!」
「なら林ごと焼く!」
後方の術師が二人、同時に杖を掲げた。
「炎よ、重なれ!」
「風よ、喰らえ!」
炎と風。
二つの術式が重なる。
「混成魔術――炎嵐破!」
巨大な炎の渦が、白灰薬果林へ放たれた。
木々が焼ける。
赤金色の偽果実が弾け、甘い香りと眠りの成分が一気に霧へ広がる。
だが、炎の勢いが強すぎる。
ハイハネの灰霧が焼かれる。
グズの泥が乾き始める。
霧喰い刃ゴブリンたちが逃げ遅れる。
「下がれ!」
余が命じる。
マネが広げる。
「下がれ!」
ゴブリンたちが木々の間から飛び退く。
湿骨王列が骨壁を立てる。
だが、炎嵐が骨壁へ直撃した。
白い骨が赤く焼ける。
何本も砕ける。
《湿骨王列、損傷》
「ロード」
ガルザヴェインが低く呼ぶ。
「まだだ」
「デモ」
「皆にやらせると言った」
「シヌ」
ガルザヴェインの声が重い。
骨壁の向こうで、霧喰い刃ゴブリンが一体、炎を受けた。
体が転がる。
仲間が引きずろうとする。
しかし、炎嵐が迫る。
「……くそ!」
余は命じた。
「ガルザヴェイン、出ろ!」
「ウン!」
魔神覇王が動いた。
◇
ガルザヴェインが、燃える白灰薬果林へ飛び込んだ。
炎の渦が迫る。
前なら、拳で正面から砕こうとしただろう。
だが、今は後ろに仲間がいる。
炎を砕けば、破片が配下へ飛ぶ。
だから、拳ではない。
足を上げる。
「覇王踏――砕陣!」
白い床が揺れた。
炎そのものではなく、炎と風を繋ぐ術式陣が砕ける。
風の流れが乱れる。
炎嵐が二つに割れた。
左右へ流れる。
中央に、安全な道が生まれる。
「グズ!」
「グズ!」
黒泥がその道へ流れ込み、燃えているゴブリンを包む。
火を消す。
ハイハネの霧が傷を冷やす。
フィルエへ続く避難路が開く。
負傷したゴブリンたちが、仲間に支えられて下がる。
「後ろの魔物を守った……?」
私兵隊長が呟いた。
ガルザヴェインは、炎の向こうで侵入者たちを見た。
「オマエラ」
金色の目が燃える。
「ミンナ、キズツケタ」
大剣使いが剣を構えた。
「あれが主力だ!」
管理音声が報告する。
《大剣使い、推定Aランク上位》
《私兵隊長、推定Aランク相当》
《薬師護衛隊内に、Aランク相当一名》
「三人か」
天蓋の猟犬ほどではない。
だが、一人ずつなら十分に強い。
さらに、三十五人の数がある。
すでに数人死んでいるが、まだ大半が立っている。
「ガルザヴェイン」
「ロード」
「一人で戦うな」
「ワカッタ」
「皆を率いろ」
「ウン」
ガルザヴェインは振り返らない。
だが、片手を上げた。
「覇王号令――進軍」
白灰薬果林の中で、配下たちが一斉に動いた。
グズの泥が新しい足場を作る。
ハイハネの霧が炎の煙と混ざり、敵の視界を奪う。
カゲヌイが盾列の影を縫う。
湿骨王列が地中から骨槍を並べる。
霧喰い刃ゴブリンたちは、単独で飛び込まない。
三体一組。
五体一組。
役割を分け、果樹の間を走る。
「来るぞ!」
私兵隊長が盾を上げる。
「全員、受けろ!」
黒い大盾が並ぶ。
その後ろから槍が伸びる。
冒険者たちも武器を構える。
術師が再び詠唱を始める。
薬師が覚醒薬を配る。
ガルザヴェインは、迷宮軍の先頭で拳を握った。
「イクゾ」
配下たちが応える。
「ギギッ!」
「グズ!」
骨が鳴る。
羽が震える。
影が走る。
白い霧が、二つの軍の間を流れた。
◇
最初の激突で、白灰薬果林の中央が吹き飛んだ。
ガルザヴェインの拳と私兵隊長の盾がぶつかる。
「覇王拳――砕城!」
「重盾技――不落城!」
黒い拳と、鋼鉄の大盾。
衝撃が木々をなぎ倒す。
私兵隊長の足が床へめり込む。
「ぐ……何という力だ!」
だが、盾は砕けない。
盾の後ろにいる十五人の私兵が、魔力を流して支えている。
一枚の盾ではない。
十六人分の防御。
ガルザヴェインの拳が止まる。
「押せ!」
槍が盾の隙間から一斉に突き出された。
ガルザヴェインの脇腹。
肩。
膝。
首。
四方向。
ガルザヴェインは後ろへ下がらない。
両腕を交差する。
「戦傷覇装!」
過去の傷が、覇王の鎧となって光る。
槍が傷跡へぶつかる。
アレクの白銀傷が一本を弾く。
六牙帰星の痕が二本を止める。
ルオの白鱗打ちを受けた腕が、最後の槍を掴む。
「ナンダ、コレハ……!」
私兵が叫ぶ。
「傷が槍を止めたぞ!」
ガルザヴェインは、掴んだ槍を引いた。
槍兵が盾列の前へ引きずり出される。
「カゲヌイ!」
影糸が槍兵の足を縫う。
「グズ!」
黒泥が盾列の足元をずらす。
私兵隊長が叫ぶ。
「踏ん張れ!」
だが、ハイハネの霧が声の方向を曲げた。
右の兵には左から聞こえる。
左の兵には後ろから聞こえる。
盾列の力が一瞬だけ分散した。
「今だ!」
余が命じる。
マネが広げる。
「今だ!」
霧喰い刃ゴブリンたちが、盾の下へ滑り込む。
刃で盾を壊さない。
足首。
膝裏。
鎧の留め具。
そこを切る。
一人が倒れる。
盾列に穴が開く。
湿骨王列の骨槍が、その穴へ突き出された。
三人の私兵がまとめて貫かれる。
「ぐあああっ!」
《侵入者三名、死亡》
《ソウル獲得:73,000》
盾列が崩れた。
ガルザヴェインが拳を振るう。
「覇王拳――破軍!」
拳そのものではない。
前方へ広がる拳圧。
崩れた盾列をまとめて吹き飛ばす。
私兵たちが宙へ舞う。
木へ叩きつけられる。
骨が折れる。
鎧が潰れる。
だが、まだ全滅しない。
私兵隊長は盾を半分失いながらも立っていた。
「まだだ!」
血を吐きながら叫ぶ。
「術師! あのゴブリンを止めろ!」
◇
大剣使いが、ガルザヴェインの横へ飛び込んだ。
「大剣奥義――山割り!」
巨大な刃が、上から落ちる。
ガルザヴェインは拳で受ける。
刃と拳がぶつかる。
白い床が割れる。
大剣使いは一人でガルザヴェインの拳を止めた。
「人間にしては、強い」
余が呟く。
《推定Aランク上位》
大剣使いの腕が震える。
だが、笑っている。
「やっと本物の化け物が出てきたな!」
「オレ、バケモノ、チガウ」
「その姿で言うか!」
大剣が横へ払われる。
ガルザヴェインの胸を狙う。
ガルザヴェインは半歩下がる。
そこへ、冒険者隊の弓使いが矢を放つ。
矢はガルザヴェインではなく、足元の影へ刺さった。
魔力矢が爆ぜる。
カゲヌイの影糸が一時的に散る。
「影を消した!」
大剣使いが踏み込む。
ガルザヴェインの胸へ刃が触れる。
戦傷覇装が受ける。
だが、重い。
傷の鎧に亀裂が入る。
「ガルザヴェイン!」
「ダイジョウブ!」
ガルザヴェインは大剣の側面を掴んだ。
「覇王掴み」
刃だけではない。
大剣に流れる魔力。
大剣使いの技の流れ。
それを爪の間へ引っかける。
「なっ……技が!」
山割りの魔力が、ガルザヴェインの手の中で止まる。
握る。
魔力の流れが砕ける。
大剣の刃に、亀裂が走った。
だが、その瞬間。
「今です!」
薬師の女が叫んだ。
薬師護衛隊の後ろにいた男が、外套を脱ぎ捨てた。
細い槍。
白い仮面。
さっきまで護衛の一人にしか見えなかった。
だが、その魔力が一気に膨れ上がる。
《警告》
《新規高位反応》
《推定Aランク上位》
白い仮面の槍使いが、ガルザヴェインの背後へ迫る。
「貫槍秘技――竜骨抜き!」
細い槍が、ガルザヴェインの背中。
過去の傷がない場所を狙う。
戦傷覇装の薄い場所。
「後ろだ!」
余が叫ぶ。
ガルザヴェインは大剣を掴んだまま動けない。
槍が迫る。
その間へ、霧喰い刃ゴブリンが飛び込んだ。
「ギギッ!」
「駄目だ!」
余の声が遅れた。
小さな体では、槍を止められない。
貫かれる。
そう思った瞬間。
グズの泥がゴブリンの体を横へ引いた。
槍の先が空を貫く。
ハイハネの霧が白い仮面へまとわりつく。
カゲヌイの影糸が槍の影を縫う。
湿骨王列の骨鎖が、男の腕へ絡む。
四体の配下が、一体のゴブリンを守った。
ガルザヴェインが振り返る。
金色の目が燃え上がる。
「オマエ」
大剣を手放す。
白い仮面の槍使いへ拳を向ける。
「ナカマ、ネラッタ」
「戦場で庇う者が悪い」
「チガウ」
ガルザヴェインが踏み込む。
「マモル、オレタチ、ツヨイ」
槍使いが骨鎖を引きちぎる。
細槍を突き出す。
「なら、守りごと貫く!」
ガルザヴェインの拳。
槍使いの細槍。
二つが正面からぶつかろうとする。
その横では、大剣使いが折れかけた剣を再び構える。
私兵隊長も、残った兵を立て直している。
薬師は眠りを防ぐ薬を作り終えた。
残る侵入者たちも、まだ戦意を失っていない。
白灰薬果林の木々は燃えている。
偽の赤金果実が、炎の中で次々に弾ける。
甘い香りと灰霧と血の匂いが、白い林を満たした。
余は、壁面に映る戦場を見た。
こちらは成長した。
配下たちは連携している。
ガルザヴェインは一人で戦っていない。
だが、侵入者もただの餌ではない。
数。
技。
経験。
そして、赤金の奇跡果を求める欲望。
まだ戦いは終わらない。
「全員、聞け」
余の声を、マネが迷宮へ広げる。
「ここからが本番だ」
ガルザヴェインが拳を握る。
グズが泥を鳴らす。
ハイハネが羽を広げる。
カゲヌイの影が木々を覆う。
湿骨王列が、砕かれた骨を組み直す。
霧喰い刃ゴブリンたちが、負傷者を下げ、新しい隊列を作る。
「白灰薬果林で、全員喰う」
白い霧が、燃える林を包み込んだ。
そして、魔神覇王の拳と白い槍が、真正面から激突した。