余、ダンジョンコアにつき侵入者には死んでもらう。 ~ゴブリン二十匹から始める最弱迷宮譚~
人間七人が、白い道へ踏み込んだ。
隊長。
目隠しの男。
白灯術者三人。
残った盾兵一人。
記録官一人。
合計七。
隊長は撤退を捨てた。
迷宮の外へ戻る道ではなく、迷宮の奥へ進む道を選んだ。
正しい。
この状況で戻ろうとすれば、背中から喰われる。
ならば核を狙う。
核を砕けば、すべて終わる。
迷宮も。
魔物も。
そして余も。
「……ふざけるなよ、人間」
《ロード、動揺しています》
「しておらぬ」
《声が低くなっています》
「低いだけだ」
白い部屋で、余は監視面を睨んだ。
白い道。
白灰庭区画の中央に作った、最も美しく見える通路。
白磁庭園騎士の枝核を喰って生まれた場所。
人間には、白い床と白い壁の安全な道に見える。
だが違う。
あれは道ではない。
腹だ。
迷宮が敵を奥へ飲み込むための、白い喉だ。
「白灰道、閉じる準備」
《了解》
「まだ閉じるな。隊長が中央に入るまで待て」
《了解》
隊長は慎重だった。
白い道の入口で、盾兵を前に出す。
白灯術者三人を左右と後方に置く。
記録官には記録石を握らせる。
目隠しの男は腕を失いながらも、歯を食いしばって耳を澄ませている。
「この道、音が変だ」
目隠しの男が言った。
「白い壁の奥が、空洞じゃない。湿ってる。生き物の腹みたいに響く」
「罠か」
「全部罠だ。だが、左右の灰道と骨道よりは、中央の方がまだ進める」
「なら進む」
隊長は即断した。
「核まで行ければ勝ちだ」
「行ければ、な」
余は呟いた。
「行かせるわけがなかろう」
人間たちが白い道へ入る。
一歩。
二歩。
三歩。
全員が中央に入った。
「閉じろ」
《白灰道、入口閉鎖》
後方の白い床が、ぬるりと盛り上がった。
壁ではない。
白い膜。
陶器のような表面に、湿灰が薄く滲む。
入口が塞がる。
「後ろ!」
白灯術者が叫ぶ。
「やはり閉じたか!」
隊長は振り返らない。
「前へ進め! 閉じたなら、奥に出口がある!」
こいつ、本当に判断が早い。
だが、だからこそ罠に合う。
迷宮で一番危険なのは、迷う者ではない。
迷わず進む者だ。
そういう奴は、罠の奥まで来る。
「白灯を壁に当てるな!」
目隠しの男が叫んだ。
「光で道が変わる!」
「遅い」
白灯術者の一人が、すでに壁を照らしていた。
白い光が壁を撫でる。
その光に反応して、白灰道の壁に輪郭が浮かぶ。
カゲヌイの白縫い針が、遠隔の縫い目へ触れる。
壁の縁が、す、とずれた。
道が曲がる。
ほんのわずかに。
人間の目では分からない。
だが、足音の返りが変わる。
目隠しの男が顔を歪めた。
「右に曲がった! いや、違う、床が曲げられてる!」
「どういう意味だ!」
「道が動いてる!」
その通りだ。
Bランクで得た白灰庭区画は、完全な迷宮変形ではない。
だが白い輪郭を照らされれば、その境目を縫って少しだけ曲げられる。
真っ直ぐ進んでいるつもりで、少しずつ横へずれる。
核へ向かう道ではなく、餌場の中心へ。
「記録官、現在位置!」
「記録石が狂っています! 白い道の反射で、方位が取れません!」
「壁に印をつけろ!」
盾兵が短剣で壁を削った。
白い壁に傷がつく。
その傷から湿灰が滲む。
「印をつけたな」
余は笑った。
「カゲヌイ、その傷を縫え」
傷は輪郭だ。
輪郭は罠になる。
白縫い針が、壁の傷を縫った。
盾兵がつけた印が、ぬるりと動く。
前方の壁にも、同じ印が浮かぶ。
「印が前にあるぞ!」
「戻ってきたのか!?」
「違う! 印を動かされた!」
混乱が生まれる。
目で見る者は印に惑う。
耳で見る者は音に惑う。
記録石は白い反射で狂う。
それでも隊長は止まらない。
「印は見るな! 音も捨てろ! 俺の足だけ見て進め!」
隊長が剣を抜き、前に出た。
盾兵を押し退け、自分が先頭に立つ。
危険な男だ。
部下を捨てる冷たさがあり、前に出る度胸もある。
こういう人間は、迷宮にとって一番うまい。
ソウルも、経験も。
「グズ」
第二関門の門前で、泥砕門将グズが打撃具を握り直す。
「隊長はまだ殺すな。まず周りを削る」
「ギィ」
「白灯を減らせ」
白灰道の天井に、灰灯喰い蟲の生き残りが張りついていた。
数は減っている。
だが、腹には先ほど吸った白光が残っている。
「吐け」
灰灯喰い蟲が、白い道の天井から灰霧を落とした。
薄い灰色の霧。
白灯術者たちは即座に反応する。
「また霧だ! 焼け!」
白灯が強まる。
灰霧が白く照らされる。
輪郭が生まれる。
「カゲヌイ」
白縫い針が走る。
灰霧の輪郭が細い布になる。
その布が、一番左の白灯術者の顔へ絡んだ。
「ぐっ、見えな――!」
「切れ!」
隊長が叫ぶ。
だが、切る前に影縫い大蜘蛛の白影糸が落ちた。
首ではない。
手首。
白灯器を持つ手。
白灯術者の腕が持ち上がる。
灯りが天井を照らす。
天井の白影糸が、さらに浮かび上がる。
自分の灯りで、自分を縛る罠を照らした。
「馬鹿、灯りを下げろ!」
「腕が動かない!」
「なら手を切れ!」
隊長が走る。
白灯術者の手を切り落としてでも助けるつもりか。
だが、その一瞬、隊長の横が空いた。
「湿骨兵」
白い床の下から、骨槍が斜めに突き出した。
狙いは隊長ではない。
記録官。
記録石を握る手。
「ひっ――!」
骨槍が記録官の手の甲を貫いた。
記録石が床に落ちる。
次の骨槍が喉を貫く。
記録官は声も出せず、白い床に倒れた。
《侵入者一名死亡》
《ソウル獲得:24》
「六人目」
残り六。
隊長が歯を食いしばる。
「記録石を拾うな! 前へ出る!」
見捨てた。
やはり冷静だ。
記録より攻略を優先した。
だが、記録石はこちらのものになる。
「回収」
《記録石、白灰床下へ回収》
湿灰が記録石を飲み込む。
中の記録は後で見る。
人間側がどこまで迷靄洞を理解しているか、知る材料になる。
白灯術者はまだ吊られている。
隊長が剣を振るい、白影糸を切った。
術者は床に落ちる。
生きている。
だが白灯器は大蜘蛛に奪われた。
《白灯器、一個回収》
「残り白灯二つ」
《はい》
「よし」
白灯が減れば、迷宮は暗くなる。
暗くなれば影が戻る。
影が戻れば、影縫いも使える。
白でも黒でも、こちらの罠になる。
白灰庭区画は、そういう場所だ。
「全員、灯りを固めろ!」
隊長が叫ぶ。
「左右に広げるな! 照らす範囲を絞れ!」
残った白灯術者二人が、灯りを中央へ寄せる。
白い光の円が小さくなる。
その外側は暗い。
暗い場所に、追跡者が立っていた。
目隠しの男が息を呑む。
「来る……また、あいつが……」
追跡者の標的は、まだ目隠しの男。
片腕を失った男は、隊長の後ろにいる。
隊長はそれを理解し、剣を構えた。
「来い」
強い。
人間としては、かなり強い。
追跡者の斬撃を一度受け、なお構えが崩れていない。
だが、追跡者は正面からの決闘をしない。
迷宮の魔物だ。
狩りをする。
「カゲヌイ、隊長の影は縫うな」
《なぜですか》
「あいつは影を警戒している。白灯の内側にいる限り、影を踏まぬ」
《では?》
「剣の反射を縫え」
隊長の剣は、白灯を受けて淡く光っている。
刃の縁に、白い輪郭がある。
カゲヌイの白縫い針が、遠くからその反射の縁に触れた。
隊長が即座に気づく。
「剣を見ている!」
剣の角度を変えた。
針が外れる。
だが、その一瞬で十分だった。
追跡者が横を抜ける。
隊長ではなく、背後の目隠しの男へ。
「させるか!」
隊長が追跡者の太刀を受ける。
ぎん。
重い音。
隊長の膝が沈む。
だが受けた。
その背後で、目隠しの男が血を吐く。
「隊長……もう、俺を捨ててくれ」
「黙れ」
「俺を守ると、全員死ぬ」
「黙れと言った」
目隠しの男は、笑った。
「なら、最後に見る」
男は残った手で、目を覆う白い布を剥いだ。
その下に、目はなかった。
眼窩に、銀の輪が埋め込まれている。
耳だけではない。
音を目にするための魔術器官。
「音界開帳」
白い道全体が、低く鳴った。
マネの嘘音。
骨鳴核片の音。
湿灰の音。
白灰壁のずれ。
すべてが一瞬、暴かれる。
《音響偽装、広域解除》
《白灰道の曲げ、一部露出》
「まずい」
目隠しの男が叫んだ。
「隊長! 中央は核じゃない! 右の暗い壁の奥に、深層へ続く本当の脈がある!」
白い部屋が、冷たくなった。
右の暗い壁。
そこは本当に、第二層深部へ続く脈に近い。
核そのものではない。
だが、方向としては正しい。
「この男、厄介すぎる」
《優先排除を推奨》
「もうしておる!」
追跡者が太刀を振る。
隊長が受ける。
目隠しの男へ届かない。
このままでは、隊長が正しい道を知ったまま進む。
なら。
「マネ」
「ギ」
「今の声を真似ろ」
目隠しの男の声。
音界で暴いた真実の声。
それを、マネが真似た。
まったく同じ声で。
「隊長! 中央は核じゃない! 左の骨道が本命だ!」
目隠しの男が叫ぶ。
「違う! 今のは偽物だ!」
マネが続ける。
「右は罠だ! 左へ!」
「違う! 右だ!」
同じ声が二つ。
白い道に反響する。
隊長の判断が、一瞬だけ止まった。
その一瞬が、命の値段だ。
「追跡者」
太刀が、隊長の剣を押し込む。
カゲヌイが剣の反射をもう一度縫う。
ほんのわずかに、隊長の剣筋が沈む。
追跡者の太刀が、その上を滑った。
目隠しの男の首へ。
刃が通る。
首が落ちる。
銀の輪が埋め込まれた頭部が、白い床を転がった。
《侵入者一名死亡》
《ソウル獲得:51》
「七人目」
残り五。
隊長の顔が、初めて怒りに歪んだ。
「この迷宮……!」
「怒れ」
余は白い部屋で低く言った。
「怒れば、判断が鈍る」
だが隊長は怒りを飲み込んだ。
剣を構え直し、目隠しの男の死体を見もせず告げる。
「右だ」
余は眉をひそめた。
「まだ覚えていたか」
《はい》
「嫌な人間だ」
隊長は右の暗い壁へ走った。
残った盾兵が前に出る。
白灯術者二人が灯りを絞る。
吊られかけていた白灯術者一人は、白灯器を失って短杖を抜く。
五人。
だが、数より質が残った。
隊長。
盾兵。
白灯二人。
短杖術者一人。
右の壁の奥には、第二層へ続く脈がある。
突破されれば、コアに近づく。
危ない。
本当に危ない。
余は、白い部屋で一瞬叫びそうになった。
だが、飲み込んだ。
「グズ」
「ギィ」
「第二関門を守れ」
「ギィィ」
「湿骨兵、右壁の下へ」
《了解》
「カゲヌイ、大蜘蛛、白灯を減らせ。残り二つのうち一つを必ず奪え」
《了解》
「追跡者は隊長を狙うな。隊長が守りたいものを狙え」
《追跡対象を再指定しますか》
「盾兵だ」
《追跡対象、盾兵へ変更》
隊長は強い。
なら、隊長自身を狙うより、隊列の支えを壊す。
盾兵が落ちれば、白灯術者が前に出る。
白灯術者が前に出れば、糸と蟲の餌になる。
隊長は守るものを失う。
「人間は、仲間がいるから強い」
余は呟いた。
「なら、仲間から喰う」
右の壁が、隊長の剣で叩かれた。
ただの壁ではない。
白灰で隠した脈壁。
二撃。
三撃。
ひびが入る。
まずい。
本当にそこは開く。
「グズ、行け!」
泥砕門将グズが突進した。
盾兵が前に出る。
「止める!」
盾を構え、グズの打撃具を受ける。
轟音。
盾兵の足が沈む。
だが耐えた。
この盾兵も強い。
最初の盾兵より踏ん張りが効く。
グズが二撃目を入れる。
盾にひび。
盾兵は歯を食いしばりながら叫ぶ。
「隊長、壁を!」
「任せた!」
隊長は振り返らない。
壁を壊し続ける。
白灯術者二人が、グズへ光を当てる。
グズの白灰耐性があっても、集中されれば動きが鈍る。
《グズ、白光負荷》
「湿骨兵、盾兵の足」
床下から骨槍が突き上がる。
盾兵は気配を読んで足をずらした。
完全には避けられない。
太腿を裂く。
だが倒れない。
「いい盾だ」
余は認めた。
「だから砕け、グズ」
「ギィィィ!」
グズが門砕きを放つ。
盾兵の盾が大きく割れる。
だが盾兵は、その割れた盾を捨てなかった。
むしろ割れ目に腕を突っ込み、グズの打撃具を挟み込んだ。
「今だ、焼け!」
白灯がグズへ集中する。
《グズ、危険》
「ちっ!」
グズの肌が白く焼ける。
進化したばかりの体に、白いひびが走る。
まずい。
このままではグズが固められる。
「大蜘蛛!」
白影糸が、白灯術者の一人へ飛ぶ。
術者は糸を焼く。
糸は焼ける。
だが焼けた糸片が白い粒になる。
「カゲヌイ!」
白縫い針が、その粒を術者の灯りへ縫い付けた。
白灯器の表面に、細い縫い目が走る。
灰灯喰い蟲の生き残りが、そこへ群がった。
「虫が――!」
白灯器が明滅する。
光が乱れる。
グズを焼く光が一瞬弱まる。
「グズ!」
「ギィィ!」
グズは打撃具を手放した。
盾兵はそれを挟んでいた。
つまり、両手が塞がっている。
グズは素手で踏み込んだ。
泥と白灰で固まった額を、盾兵の顔面へ叩きつける。
ぐしゃ。
盾兵の鼻と歯が潰れる。
さらに、グズは相手の割れた盾ごと押し倒した。
床下から湿骨兵の槍が伸びる。
盾兵の背中を貫いた。
追跡者が、闇から現れる。
新しい追跡対象。
盾兵。
欠けた太刀が、首を斬る。
《侵入者一名死亡》
《ソウル獲得:39》
「八人目」
残り四。
隊長。
白灯術者二人。
短杖術者一人。
だが、その瞬間。
右の壁が割れた。
《第二層脈壁、一部破損》
白い壁の奥に、暗い通路が見えた。
第二層へ続く、本物の脈に近い通路。
隊長が叫ぶ。
「開いた! 走れ!」
四人が、そこへ飛び込もうとする。
余の意識が冷たくなる。
ここを抜けられると厄介だ。
第二層に入れば、まだ罠はある。
だがコアへ近い。
危険度が上がる。
「……よくもまあ、ここまで来た」
《迎撃指示を》
「分かっている」
余は、白い部屋の奥を見た。
新しく得たBランク権限。
第二層深部拡張。
まだ完全整備していない。
危険だ。
だが、使える。
「第二層の未整備空洞を開け」
《未整備です。味方魔物にも危険があります》
「味方は入れるな。人間だけ落とす」
《了解》
「脈壁の先を、床ではなく穴にしろ」
《白灰偽床を展開》
隊長たちが、壁の向こうへ踏み込む。
そこには、暗い床があるように見えた。
隊長は一瞬だけ足を止めた。
さすがだ。
疑った。
だが、後ろから追跡者とグズが迫る。
白灯は乱れている。
時間がない。
「行くぞ!」
隊長が踏み込んだ。
白灰偽床が、砕けた。
四人の足元が消える。
「なっ――!」
隊長、白灯術者二人、短杖術者一人。
四人が、第二層未整備空洞へ落ちた。
暗闇の下へ。
湿灰も白灰も届ききっていない、生の迷宮の空洞へ。
《侵入者四名、第二層未整備空洞へ落下》
《落下損傷発生》
白い部屋の監視面が切り替わる。
深い縦穴。
未整備の岩壁。
底に散らばる人間四人。
白灯が一つ割れている。
もう一つは点いている。
短杖術者は足が折れている。
隊長は、落下しながら壁に剣を刺して勢いを殺したらしく、まだ立てる。
「……まだ生きておるのか」
《隊長個体、生存》
「しぶとすぎる」
隊長は血を吐きながらも、上を見た。
それから、笑った。
「奥に……落としたな」
その声が、空洞に響く。
「迷宮の奥に、俺たちを入れたぞ」
余は白い部屋で、しばらく黙った。
確かにそうだ。
落とした。
殺すために。
だが、同時に奥へ入れた。
この男は、それすら利用する気だ。
面白い。
いや。
腹立たしい。
「よい」
余は言った。
「なら、その奥で死ね」
第二層未整備空洞の壁に、湿灰が滲み出す。
上から、追跡者が穴を覗く。
白影糸が、縦穴の縁にかかる。
湿骨兵はまだ降りられない。
グズも穴の上で唸るだけ。
だが、第二層には第二層の闇がある。
未整備だからこそ、何がいるか分からない。
《未整備空洞内に、野生化魔素反応》
「何だ」
《Bランク昇格後、第二層拡張に伴い自然発生した未登録魔物反応》
余は監視面を見た。
空洞の奥。
岩の隙間。
そこに、小さな白灰色の目がいくつも開いた。
まだ登録していない。
まだ名前もない。
だが、迷靄洞の中で生まれたものだ。
「……新しい魔物か」
《未登録群体です》
「なら、ちょうどいい」
隊長たちは、穴の底で体勢を整えようとしている。
白灯術者が残った灯りを掲げる。
その光に反応して、岩の隙間の目が増えた。
白灰色の、小さな獣。
ネズミより大きく、狐より低い。
背中に苔。
口元に白い牙。
灰色の舌。
湿った足音を立てず、岩の上を這う。
《新規魔物候補を確認》
《白灰這い》
「白灰這い」
余は笑った。
「よし」
穴の底で、隊長が剣を構える。
白灯が揺れる。
白灰這いたちが、音もなく囲む。
「登録しろ」
《白灰這いを迷靄洞所属魔物として登録しますか》
「登録だ」
《登録完了》
第二層の闇で、新しい牙が一斉に開いた。
余は静かに命じた。
「喰え」
白灰這いの群れが、残る四人へ飛びかかった。