異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「え、じゃあ、おれとあった時、ダストくんどうして助けてくれたの」
「助けてくれたのはマオだろ」
苦笑された。「それに、追放されたものは、解りやすいように額にしるしをつけられるんだ。小さい頃、馬車で荒れ地へおくられるのを見たことがある」
「ここんとこに、槍みたいな模様を描くんだよね」
ハーバラムさんが額のまんなかを指先でなぞった。
「結構色鮮やかで綺麗なんだぜ」
ふうん。
追放刑に処されたひとは、財産を没収されたうえで馬車で荒れ地の奥へとつれていかれ、放り出される。馬車から見えなくなる前に動いたら殺していいというルールがあるため、馬車がいなくなるまでその場を動かない。
そのあとは、独力で荒れ地を脱出しさえすれば、罪は償ったものとみなされる。財産は戻らないけれど。
勿論、馬車なら三日くらいの距離でも、歩きでは辛い。装備も整えてなんていないし、それに荒れ地には飲める水、食べられるものは滅多にない。大概、ひからびて死ぬ。過去、追放から戻ってこれたのは、十人居ないくらいだそうだ。
「でも、おでこに模様があったら、追放されたってわかるよね」
「ああ、魔法なんだよ。一度荒れ地にはいって、出ると消える。そういう仕組みさ」
へえー。なんの魔法なんだろ?
次の言葉でこっちがむせるところだった。「祇畏士さまがなさるんだ。恩寵魔法だよ」
ヘーソウデスカと返す。声が裏返ったし顔は引きつっていた。
不意打ちだ。祇畏士と急に云われるとどうしても狼狽えてしまう。よくないなー。祇畏士の話になると狼狽えるって、怪しすぎる。気を付けなくちゃ。
宿に着いた。
イルクさん達は、今日・明日は傭兵協会で用事があって、そのまま協会の管理している宿へ泊まる。社宅みたいな? で、ハーバラムさんとダストくんがレントを出る時に合流する。
ハーバラムさんは別の傭兵を雇いたいらしいが、すでに帰りの分も護衛を依頼してしまっている。かげぐちを叩いていたくらいでは一方的には解雇できないんだそう。
「えーっと……」
部屋で、ノートを引っ張り出し、計算してみた。
お風呂屋さんは、一時間でエスター70個。回数券十回分が銀貨4枚だったな。てことは、152×4=608で、エスター92個分お得。
一月が三十日と仮定して(異世界なので油断がならない)、月に銀貨12枚がお風呂代で消える。ご飯は、これまでの感じだと一日で銀貨2枚くらいかかるっぽいから、×30で、月に60枚かあ。
それに、寝泊まりするところでしょ? 凄くお金がかかる。