異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
弾むあしどりで、宿へと向かう。「四月の雨」亭へ戻る時には、食材を市場で買おう。収納空間のおかげで腐らないのだから、安いものを買い込んでおけば、食費が浮く。
門をくぐると、前庭にハーバラムさんとダストくんが居た。手を振るとふたりとも駈けてくる。
「だすとくんっ、あのねえ」
「ばかマオ、心配しただろ!」
怒鳴られた。え?
ハーバラムさんが息を整え整え、呻くように云う。「まおー、どこに行ってたの? さがしたんだよお」
「え? えっと、市場でご飯食べて、……」
「飯に何時間かけてるんだよ」
「あの。そのあと、どこかで雇ってもらえないかなって。さがしてた」
「は?」
「そしたらねっ」その場でぴょんぴょんする。「みつけた! 宿屋さんで雇ってもらえたんだー」
ダストくんとハーバラムさんは、なんとも云えない表情を浮かべた。
ふたりとも、朝ご飯も食べずにさがしてくれていたそうなので、謝った。市場をさがして、居なかったので一旦宿へ戻ってきたところだったそう。ご飯の邪魔なんてするつもりはなかったのに。
朝ごはん食べたら? といっても、ふたりとも頭を振った。「その、宿屋。どこなんだい?」
「変なとこじゃないだろうな」
どうやら、いかがわしいところではないか、と心配してくれているみたい。
大丈夫だと思うが、案内してほしいと云うのでそうする。お客さんになってくれるかもしれないし。
レントの大通りの、北側のほぼどん詰まりからすぐのところ。
場所を説明すると、ハーバラムさんは首を傾げた。「四月の雨……?」
「あ、ちょっと寄っていいですか?」
くだもの屋さんを示す。
食べものは、食材の段階ではとっっってもお安いとよく解った。特に穀類とお豆。ロア産らしいが、輸送費を上乗せしてこれかと目を疑う値がついている。あと、野菜・くだもの類も安かった。お肉は、豚と骨なしの山羊が一番安くて、高級なのはろば。売っていたお兄さん曰く、ろば肉はお肉のなかで一番おいしい。骨付き山羊は品種が違うのか人気なのか、かなりお高かった。
そうそう、豚肉だけど、豚、というか、猪なのかな? レントの近くにある、「第二の丘」というところで狩られたもの。ベーコンとかハム、腸詰めもあったから買っておく。
食材を買って収納空間へぶち込み、雑貨を物色する。鍋掴みと鍋敷きが欲しい。
首尾よく、鍋掴みがわりになりそうなキルトを見付けた。本来の用途はアクセサリの台みたいだけど。鍋敷きもいいのを見付け、買いものは終了。
ダストくんがうんざり顔してる。買いもの苦手なタイプ?
「四月の雨……って、あの宿もう潰れたんじゃなかった?」