異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
ふたつ目へとりかかる。自分用には多目につくっておいた。中身は、腸詰めを減らして、キャベツとクレソンを増やした。
別に血糖値とかなんとかを気にしているのではない。そのほうが安上がりだからだ。
ふたつくらい腸詰めなしのも存在する。自分の分を全部ほかと同じようにつくったら、お店で食べるよりは安いだろうが、結構高づくと思う。
大口を開けてばくばく食べていたら、ふたつ目もすぐになくなった。ご飯って、おいしいものをたべられてしあわせ、な部分と、食料がどんどん減っていって哀しい、の部分があるよなあ。
……なんか皆さん無言なんですけれど、お口にあってませんかね?
心配になってきた。ああ、みっつめも終わってしまう。
「あっと。……おいしくないですか?」
異世界だし、味覚が違うかもしれない。でもそれだと食堂で稼ぐ計画が頓挫する。どうしよ。
心配になりながらも訊いてみると、真っ先にダストくんが否定した。「いや、旨い」
「おいしいね」
「旨い」
ハーバラムさんとセロベルさんもそう云ってくれた。口に合わないわけじゃなかったのか。
グロッシェさんは、と様子をうかがうと、ちまちま食べているのが可愛い。未だにフードを目深にかぶっているので、口許しか見えないが。
「俺、料理好きなんですよ」
正確には食べるのが好き。「幾らかは出来ますから、食堂と宿を再開して……ね?」
こういう時語彙をうしなう。なんと云って説得したらいいのか解らん。
が、セロベルさんは食べかけのホットドッグに目を落とし、小さく云った。
「親父程じゃねーけど。たしかに、その辺の食堂くらいの味ではあるな」
「じゃあ」
「つっても、給仕が居ねえ」
ああ、給仕さんね。慥かに必要だ。
「セロベルさんとぐろっしえさんが居るじゃないですか」
「わたしですか?」
グロッシェさんがびくっとした。?
ハーバラムさんとダストくんが目を交わす。ハーバラムさんが云った。「あー……マオ。グロッシェさんは、店には立たないほうがいいと思うよ」
「どうしてですか」
「そりゃ……いやな思いするだろうからさ」
いやな思い。とは。
きょとんとしてしまった。なんか、よく解らないぞ。こっちの世界ではお約束のなにかなのか?
セロベルさんがホットドッグを置いた。
「マオ、お前さあ、ほんとに母さんのこと、なんとも思ってねえの?」
「なんとも? ……しょくばの先輩だから敬意ははらってるよ?」
セロベルさんは、異星人を見るみたいな目をした。異世界人ですよ!