異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
人混みのなかへはいった。セロベルさんは口を噤む。
たまご、たまご……あった。
ぶつぶつお祈り中のおじさんから、鶏卵を買う。値段を聴いても、おじさんは手許の値段表を指差して喋らない。銀貨一枚て山ほど買えた。全部収納空間行きだ。
ついでに、朝採れのお野菜、フルーツ、パンなどを買った。チーズもあるじゃん! 買おう買おう。牛乳とか、山羊の乳は売ってないなあ。残念。
あとは、ラードと、油も要るし……おっ、魚醤なんてあるの? 凄い。買っておこう。干し魚とか、塩だらもあるな。コロッケ食べたーい。
めぼしいものを買うのに二十分はかかった。いそごう。
小走りで四月の雨亭へ向かう。人混みを抜けると、セロベルさんがむしかえした。「マオ、これはもらえない」
「どうしてですか? 借金返済に充てて」
そもそもそういう目的でしょう。なにを遠慮してるんだこのひとは。大体、セロベルさんが居なかったら、薬材採集なんて行けなかった。
セロベルさんを見た。「あ、ただし食材代は経費で落としてくださいよ。あとまかないつきにしてください」
笑われたんだけど。どうして?
セロベルさんはそれはもう楽しそうに笑った。俺はそれを無視して、厨房へ飛び込む。情緒不安定なのかな?
火をおこして、手を洗った。
野菜を洗い、刻んで鍋へいれる。油をひと垂らしして、火にかける。油がなじむまで炒めたら、お塩とたっぷりの四つ切りトマトをいれて、蓋をして煮込む。
オムレツは、フライパンはないから、底の浅い平鍋をかけて、油をいれておく。ボウルにたまごを三個割りいれた。そこへ、お塩とこしょう少し、お水を10mlくらいいれて、菜箸で白身を切る。
菜箸、焦げついてきたからと思って、もとの世界で替えを二膳買っていたのだ。お箸の二十膳いりも。間がよかったなあ。
お皿の準備して……。セロベルさんがはいってきた。「お茶は俺が出しとくから」
「はい」
頼もしいじゃん給仕さん。
セロベルさんはさっさとお茶をいれ、食堂へ運んだ。
たまごをざっと混ぜたら、平鍋のなかへいれる。ぐるぐるかきまぜて、ある程度かたまったら、鍋を傾けながら木の葉型に成形。よしできた。お皿へ盛って、冷めないように収納空間へいれておこう。
オムレツをもうひとつつくったところで、スープがぐつぐつした。火からおろす。オムレツとは別の平鍋で、腸詰めをぱりっとなるまで焼く。パンは、さっき焼きたてを市場で買った。
オムレツの横に腸詰めを三本置いた。スープは器によそって、刻んだパセリと、うすく切ったチーズをのせる。あったかいからチーズがとろっとしてくる。うまそ。
焼きたてパンをパンかごへ盛り、朝食の準備完了。はやく食べたい。