異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
せなかがひやっとした。
ハーバラムさんは低く続ける。
「心当たりがあるって云ったろ? グロッシェさんに対して敬意を持ってるってマオの言葉を聴かせたら、ひっくり返りそうな連中に?」
「……はい」
「ウロアはその筆頭。商売はキヨラカだけど、耳持ちに対してだけはね。そうだね……控え目に云って、唾を吐きかけたくなる」
ハーバラムさんはもう一度溜め息を吐いた。「でも、正直ここまでだとは思ってなかったよ」
ハーバラムさんがウロアに実際会ったのは四回。
商談が二回と、協会の催しで、お茶会? に出た時に一緒になったのが二回。ウロアはひとあたりもよく、きさくで、大きなお金を動かしているのに偉そうでもなくひけらかしもしない、好人物に思えたそう。
「金と淡い茶色の斑髪に、花を飾っていてね。給仕の女の子に騒がれてたよ」
でも、三回目にあった時、お茶を楽しむ場で、ウロアはこそこそと訊いてきた。
知り合いに耳持ちは居ないか、と。
意味をはかりかねたハーバラムさんは、どうしてそんなことを訊くのかと単刀直入に返した。ウロアは、耳持ちは羽持ちと比べて冷遇されがちだし、自分は井から耳持ちをひきとって手に職をつけさせる活動をしているのだ、と答えた。それはいい取り組みだと思ったから、ハーバラムさんはその事業について詳しく聴いた。
ただ、違和感もあった。羽持ちを比べて冷遇されるのは尾持ちも同じだし、冷遇されると云えば獣人である。耳持ちだけ支援するというのは妙だ。しかもウロアの話はどうにもうすっぺらく、話を聴いているうちに危ない気がして、申し訳ないけれど自分は耳持ちに心当たりはない、でもそういった事業ならもっと大々的にやったほうがいいから商人協会や金融協会に話を持って行こう、と云った。
ウロアは、これは自分が主に奉仕する目的でやっていることで、とかなんとか渋った。結局、それ以上は会話もなく、次に商談であった時は耳持ちの話などおくびにも出さなかったという。
「実際、支援はしていたようだね。井に預けられた子をひきとってる。男の子ばかり何人も」
鳥肌が立っていた。
「それって……」
「それと不思議なことに、ラッツァクから金を借りたっていう親が消えて、ウロアにひきとられた耳持ちの子も居るんだよ」
不思議だろう? とハーバラムさんは冷たい声を出した。