異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「で、どうしてマオくんも居るのー?」
早速ライティエさんにロックオンされた。俺はへへへと笑う。「さしいれ持ってきました」
「きゃー、嬉しいー。きてよかったあ」
「ライティエはほんと、食べることが好きだね」
「おいしいものは誰だって好きでしょー?」
ライティエさんはぷっとふくれてみせた。お餅みたい。
「セロベル!」
オレンジ髪=バルドさんが、片手をあげてやってきた。朝、巾着切りに注意するよう云ってくれたひとも一緒だ。そちらは、腰までの水色の髪をおろして、カラフルな紐や糸、細いリボンで飾っている。らくだレースが脳裏を過ぎった。
バルドさん達は傍までくると、セロベルさんと片手を打ち合わせる。
バルドさんがこちらを見下ろした。あちらは190cmくらいあるのだ。
丁寧な会釈をされた。「朝はなのりもせずに失礼した。バルドだ。宜しく」
「ご丁寧にどうも。四月の雨亭従業員の、マオです」
「マオ。こちらはヨドロス」
「ヨーで結構ですっ」
水色髪くんがぺこぺこした。俺はにっこり笑う。「解った、ヨーくんね。よろしく」
歳下っぽいからこういう接しかたでもいいだろう、と思った。ヨーくん、赤面しちゃった。人見知りなのかな?
ごほんとセロベルさんが咳払いした。「マオは俺たちの弁当配達してくれただけだ。すぐ帰らせる」
「えっ、ほんとにお弁当手配してくれたのかい?」
「お前が云ったんだろうが」
セロベルさんが呆れ顔になった。バルドさんはほりほりと頬を掻く。
「いや、慥かに云いはしたけれど、隊長の分くらいかと」
「ハア?」
「マオさんのお弁当あるんですかっ?」
ヨーくんが前のめりである。ライティエさんと同じく健啖家なのかもしれない。先に釘をさしておこう。「ひとり一人前づつですよ」
「えー?!」
ライティエさんが悲痛な叫びをあげた。
ライティエさんが叫んだので、警邏隊の目がこちらへ集まった。丁度いいのでお弁当を配りはじめる。
俺の傍で、自分にはそもそも一人前は少ない、と主張するライティエさんを宥めたのは、メイラさんだった。「ライティエ、ほら、わたしの分けてあげるから」
「ほんと?メイラ優しいい、だいすきー」
「はいはい」
ライティエさんは自分の分を収納空間へいれてしまうと、メイラさんからラップサンドウィッチを四本、クッキーは丸ごともらって大喜びしている。メイラさんはにこにこしていた。