異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
あ。
麺を売ってた子だ。エウゼ?
麺の行商さんは俺に気付くことなく、警邏隊のほうへ走って行く。「エウゼ……なんてこと」
「ねえちゃん」
吃驚した。
巾着切りが返事したのだ。麺の行商さんの弟らしい。まじで?
女の子はぶるぶる震え、近くに居たヨーくんへくってかかる。
「ちょっと! どうして弟が捕まってるの?!」
「すりの現行犯です」
「そんなばかな話ないわ! エウゼ! 井に居た筈でしょ!」
女の子は身を捩り、弟の手枷を外そうとする。ヨーくんと、女性の警邏隊が、それをとりおさえた。
ふたりがかりで弟から引き離されても、女の子はばたばたと暴れる。「はなして!」
「その子は巾着切りだ」
「嘘よ! 警邏隊だからって嘘でひとを捕まえていいの?! へ訴えるわよ!」
「訴えたけりゃ訴えろ」
セロベルさんが呆れたような声を出す。
女の子はなにか云い返そうとしたが、口を噤んだ。セロベルさんをまじまじと見ている。巾着切り=エウゼ、は、はじいるように俯いた。「ねえちゃん、ごめん」
足が停まってしまっていた。
気にはなるが、興味本位で首をつっこむ訳にもいかない。バルドさんとライティエさんに、たちどまってしまったことを謝り、四月の雨亭へ向かう。
それでもやっぱり気になるので、会話は捕まった子どもたちのことになる。
「あの子たち、どうなるんですか?」
「親が居れば、親に損害を補填させることになる」
「親が居ないか、二十一歳をこえていれば、当人が償うしかないねー。身柄は井に預けられる筈。だよね、バルド?」
バルドさんが頷く。
井は、孤児院みたいなこともやっているんだっけ。
それと矯正施設がいっしょくたってのはどうだろう、と思ったが、通常の孤児は井のまわりにある建物に、処罰として預けられる子は井のなかにある建物に住むというのが決まりらしい。賠償が完了するまでは仕事以外で井から出られず、給料のほとんどが被害者へ支払われる。場合によっては、親兄弟の資産やなんかも差し押さえられるそう。
寝るところはあるが、食事は寄付で成り立っているので、当たり前だが通常の孤児のほうが待遇はいい。
だから、孤児に頭を下げて食料を譲ってもらう、という、悪ぶっているor偉そうな少年たちからすれば屈辱的なこともしないといけない。
だからと云って孤児を苛めたり、逃げたりすれば、最悪荒れ地送りだ。不良少年へのお灸としては一番と、この世界では考えられている。