異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
そんなこんなで、四月の雨亭に氾濫士が加わった。
ただし、焦熱士が居ないと、お湯をわかせない。なので、サッディレくんは、暫くやることがない。
……と思っていたのだけれど、俺に対して悪いと思っているのか(謝ってくれたからもういいのに)、給仕さんをしてくれた。おかげで五時のお茶が楽。やっぱり給仕さんがひとりとふたりじゃ違うなあ。
「?」
お客さんへ夕食を出して、漸くと食事をとっていると、セロベルさんが声をひっくり返らせた。
テーブルを囲むのは、俺、セロベルさん、サッディレくん。
グロッシェさんはすでにサッディレくんを顔をあわせてはいるが、はずかしそうにひっこんでしまったので、お部屋までセロベルさんが食事を運んだ。グロッシェさんとセロベルさんの部屋は、俺の部屋へ通じる階段とは別の階段をつかってあがったところにあるそう。
サッディレくんがかつてへはいることを目指していたが挫折したこと、四月の雨亭にはで補助の指導員をしていた人物がいると聴いて勤めたいと考えたこと、などを喋ったあと、セロベルさんが思い付いたように訊いてきたのだ。
マオは、何故へはいりたいのか、と。
で、答えた。本を読みたいから、と。
セロベルさんは唖然としているし、サッディレくんは俺をまじまじと見た。「……なに?」
「だってお前」セロベルさんは目をぱちぱちさせる。「本を読みたいから入山? 本気で云ってんのか」
「入山じゃなくて奉公ですけれど、本気」
「ハア?」
尚更意味が解らなかったらしい。俺は肩をすくめておく。
サッディレくんがお肉を噛み千切った。サッディレくんの出身地では、基本的に食べるものはお肉がほとんどで、それに穀物・芋類・乳製品・トマトが少し、トマト以外の野菜は食べないらしい。なので、サッディレくん用の食事は別メニュー。ローストポークの厚切りをお皿にいっぱいと、トマトだけでつくったソース、ふかし芋が少し。
「マオ、本が好き?」
「うん」
「お前ってほんとに変なやつ。本が好きなら、西に図書館があるぜ」
ため息まじりのセロベルさんへ向く。うそ、地図に書いてなかったけど?
「ちずには……」
「ああ? ああ、のってねえのか。あれだ。の管轄で、商人協会のレント本部内にある。でも、各協会の証明書か、能力証明書があればはいれるぞ」
期待した俺が間違ってました。そうだよな。この世界では本は貴重。だから、身分証明書を提示しないと図書館にははいれない。くそう。