異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「じゃあ、リオは、好きなひとはいないの?」
「わたしが髪を切らなくてもいいと云ってくれるひとが好きよ」
「僕は、リオは髪を切らないでもいいと思うけれど」
サキくんがにこやかに云うと、リオちゃんは吃驚したようにサキくんを見た。
小首を傾げている。「サキちゃんはわたしの弟みたいな子だわ」
「ははは。妹じゃないの?」
「あら妹がよかったの? 変なサキちゃん」
リオちゃんがくすくす笑った。サキくんも笑顔だ。
「だって、昔、妹がほしいから妹になれって云ってたろう?」
「そうだった? 昔のわたしっておばかさんだったの。男の子でも、歳が下だから妹だって思ってたのよ、きっと」
しんせき……かな? そういう雰囲気だ。サキくん、受験に来てたんだ。
厨房へ戻り、焼きあがったクッキーをオーブンから引っ張り出し、別の天板を滑り込ませる。受験生多いなあ。昨日の、マシュマロをたべたがっていたお嬢さまも、受験生だったり?
マシュマロと云えば、食べたかったので仕込んでおいた。半分は型へ流しいれて、冷ましている。大き目の型しかなかったので、大きいマシュマロだ。
クーラの上にある、粗熱のとれたクッキーをバットへ移し、オーブンから出したばかりのものをクーラへ置く。
さてさて。残り半分のマシュマロは、まだ熱いのを収納してある。
クッキーをいちまい掴んだ。収納空間から、マシュマロを出して、クッキーの裏面へのせる。そして、もういちまいのクッキーではさむ。
できた。クッキーのサンドウィッチ。絶対おいしいやつ。
ゼラチンがお高めなので、ひとつ……エスター8個はもらわないと厳しいか。売れるかなあ。何個いりにしよう。
「ごめんください」
リエナさんだ。木箱を抱えて庭から這入ってくる。「マオ、今日もたまご、持ってきたわ」
「わあ、ありがとうございます。あ、これ味見します?」
「え? ……なあにそれ、甘い香り。凄くおいしそうね」
リエナさんが生唾をのみ、木箱を置いて、程よくマシュマロの冷めたクッキーのサンドウィッチをうけとる。
「わあ」さくっと噛むと、マシュマロがむにょんと形を変えた。「おいしい。これ、食べたことあるわ、この白いの。ディファ―ズの南のほうのお菓子よね。かわった食感で、甘くって、おいしい」
「売れますかね」
「わたし、買うわよ。大通りの北で、この白いもちもちを売っているお店はないもの。ああでも、また肥っちゃう。この間80㎏の大台に乗っちゃったし」
80……で、大台。