異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
人間、頼れる時は頼らないと、パンクする。
無理がたたって倒れたり、病気になったり……それって結局、ただ単にひとを頼った場合よりも多大な迷惑をかける、ということだ。バランス感覚は大切。ぎりぎりまで抱え込んだことがあるから解る。
「セロベルさんは自分でお金を借りた訳じゃないし。どうしようもなかったらひとを頼ってもいいんじゃないですかね」
セロベルさんは背凭れへ身を預ける。「……金を借りたのは俺の親だ。子どもの俺が始末をつけるのは当然だろ」
「それはある程度までの話だと思うけど。そもそも借りたお金の何倍にもなってるんですよね?」
否定しないからそうなのだろう。俺は片肘をつく。「倍くらいまでならともかく、おかしいでしょ、この短期間で」
「……だから、それは違うんだ。母さんじゃなく……俺の……」
俺のせい、とでもいうのだろうか。
可愛いなあ。ばかで。
立って、手を伸ばした。セロベルさんの頭を撫でる。
「いいこいいこ」
「……ハ?」
「でも、君にはもう手に負えないから、おにいさんに任せなさい。ね?」
被害者は悪くない。加害者が居ないと被害は起きないのだから。
セロベルさんはぽかんとしていたが、俺の手を振り払った。「な。なに」
「とりあえず、今日これからおやすみいただきますね?」
「え」
「おべんと用意してあります。わたしといてね」
じゃ、と云って、庭へ出た。収納空間から出した、やわらかい毛織のローブをまとう。今夜も賭場はひらかれる。
さてさて、乏しい演技力が0になってなきゃいいけど。
ダストくんとハーバラムさんとの約束を破ることになってしまったなあ。
トーリュス邸あとは、レントの西にあった。大きな通りは街灯があって明るく、ランタンは必要ない。
細かい場所は解らなかったので、道中、警邏隊や、酒場帰りらしいおにいさんたちに訊いてみた。
ら、そのうちのひとりが賭場がひらかれることを知っていて、親切にも道案内をしてくれた。知らないひとについていくな、と、大きな通りから外れるな、という約束を破ってしまったけれど、仕方ないよね。
「名前、マオだっけ?」
「はい。おにーさん、ありがと」
おにいさんの腕をとった。まー大丈夫大丈夫。このひともう酔ってるし、無理でしょ。
おにいさんはにやにやしている。笑みを返した。「いっしょにいく?」
「あ、……うん。君、か、可愛い耳してるね?」
「ごめんね」耳打ちする。「もうあしあらってるんだ」
「あ、そう……」
「ざーんねん。おにーさん可愛いのに」
耳を誉める、のは、符牒だそう。の。こないだ、メイラさんに訊いたら教えてくれた。