異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
開拓者に見捨てられる?
一分くらい、意味が解らなくてかたまっていた。
「……あ」
思い至る。お酒は、開拓者が禁じたんだっけ。
グロッシェさん、俺がお酒を呑んだのに気付いたんだ。ああ、それを考えていなかった。
……今は仕方ない。グロッシェさんから冷たくされても、我慢して、計画を推し進めよう。
それでも、嫌われたことにショックを受けた。解っていたつもりだけど、開拓者に忠実なひと達はお酒が嫌いだ。
しょんぼり項垂れて、用を足し、井戸端で歯を磨いた。哀しくたって歯は磨かないと、虫歯になったらおいしいものを楽しめない。
部屋でベッドに横たわると、一瞬で眠りに落ちた。
翌朝の目覚めは爽快だ。ふつかよいはない。
身繕いして、欠伸を噛み殺しつつ裏庭へ行く。メイラさんが今朝も、中庭で素振りをしていた。「おはよーマオ」
「おはようございます」
「今朝はなに?」
「食べたいものあります?」
「ぴーまん。わたしあれ好きなの」
おお、メイラさんとは気が合いそう。俺もピーマン大好き。
緑色の食べものでおいしさTOP3は、ピーマン、セロリ、コリアンダーだよな! いや、グリーンピースも捨てがたいし、ふきのとうもおいしいし、つるむらさきとかどくだみも、かたばみもおいしいし、笹の若葉の……。
用を足し、手を洗って、パン種をつくった。小麦粉・ぬるま湯・元種・お塩をまぜて、ひと塊になったら打ち粉をして調理台でこねる。十分くらい頑張ったら丸めて放置。
手を洗ってから市場へ向かった。
もう朝のお祈りの時間が近い。市場はにぎわっていた。「あ」
エウゼくんに売上金をすられたひとだ!
ぽちゃっとお肉のついたおにいさん。荷車をひいて、くらい顔をしている。荷車にはお野菜とたまごが山と盛られていた。
「あの」
声をかける。おにいさんはたちどまってこちらを見、表情を和らげた。「あ。……いつかは、ありがとうございました。あの、おいしかったです」
「ああ、いえ、たいしたことでは。配達ですか?」
「はい。でも……もっといいものを、安く売ってくれるところがあるって……これ、も、持って帰るんです」
「え」
荷車を覗く。別に、品質悪くは見えないけど。
平たい木箱の緩衝材のわらの上に載っている、羽毛がくっついたたまご。形は不揃いだけど、気にはならない。お野菜は、小さめのバターナッツがひとやま。皮が青いプランテーン。小振りな蕪……は、慥かに葉がちょっとしなびているが、許容範囲内だ。あとは、パセリの束が沢山に、小さなピーマンが山ほど。
おいしそうじゃん。
「これ、売らないんですか?」
「あ。く。口下手で、そう云うの苦手で」
「じゃ、売って下さいよ、全部」
「え?」