異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
リェンくんがいじけてしまった。
「肌綺麗だし、顔整ってるし、言葉もすっごく綺麗な共通語だしさ。俺は訛ってるから」
慥かに、ちょっと変わった抑揚かもしれないが、気にする程でもない。
ウエイトレスさんがまわってきて、男の子たちはゴブレットをとる。俺は注文した。「蒸留酒に、糖蜜と、くだものの輪切りと、あったらバニラビーンズかシナモンいれて、ぬるま湯で割って」
「じょう……? すみません、もう一度……」
やっぱり、ウエイトレスが本職ではない感じだな。
俺は、きょとんとする男の子達と別れ、カウンタへ近付いていった。先程の注文をくりかえすが、バーテンのおねえさんは手際が悪く、もたついた上にオレンジを切ろうとして指をざっくりやった。
でも、癒しの力を持っているようで、恢復魔法ですぐに治していた。戦闘要員なんだろうなあ。
おつまみは、ビーフジャーキーとチーズのこま切れが載ったビスケット。
ひと垂らししたオリーブオイルと、アクセントのピンクペッパーが小憎らしい。しかし俺はオリーブオイルが得意ではない。
まあ食べるけど。ピンクペッパーのおかげでおいしかった。ほしいけど市場で見たことないぞ。どこで手にいれる訳?
ゴブレットと、おつまみのお皿を手に、賭けのテーブルへ着いた。まずはルーレットだ。
ルーレットは、下手なことをしなければ、少しは稼げる。何回か遊んだら次だ。
投扇興みたいなやつをやってみた。ヴィサリオーシャ、という名前のゲームらしい。
まったく解らんが、そこそこ勝てた。銀貨100枚分くらい。投げるだけだから楽だ。
勿論、次は一対一のやつをやって、きれいさっぱりすった。この調子だと一週間保たないかもな。
お酒のおかわりをつくってもらっていると、後ろから抱きつかれた。「かわいこちゃん、おいしそうなもの呑んでるねえ」
うなじに吐息がかかる。ひいい、気色悪い。
俺は気合で笑みを浮かべた。肌が粟立っているが、我慢だ我慢。
肩越しに見てみると、ディファーズ系らしいおにいさんだった。うーわ、酔ってる。
「うーん、甘い香りだ」
無遠慮に体を触ってくる手を押しのけた。すぐに戻ってくる。「冷たくしないでおくれよ」
「おにいさん。よいすぎだよ?」
「酔ってなんかない。ねえ君、幾らだい?」
首にキスされた。ぞわっとする。
おにいさんが倒れた。ウエイトレスさんがとんできて、担ぎ上げ、奥へと運んでいく。お仲間らしいおにいさんたちが囃し立てる。「ほら云ったろ。呑みすぎだぜシー」
「おじょうちゃんごめんな! あいつすぐ潰れっちまうんだ」
笑ってごまかし、ゴブレットを持ってその場を離れる。
いや正当防衛。気色悪かったんだもん。偸利くらいつかっちゃうって。