異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
なんだろ。あの気持ち悪さは、なんとも表現しがたいなあ。
投扇興に参加しながら、考えている。さっき抱きつかれたの、凄ーくいやだったなあ、と。
リッターくんよりいやだったな。リッターくんはほら、体冷えてて、ちょっとかわいそうな感じしたから、その分を差し引いて。
その点ほーじくんは別格。全然やじゃない。寧ろ癒される。鳥さんだもん。ハグを拒む理由などない。
ほーじくんのあのふかふかほわほわは、あれはだめ。包みこまれたい。うー、会いたいなあ。
……事案。
ぼーっとしているうちに、勝ったり負けたりして、銀貨40枚くらい失っていた。賭けごとこわい。
「マオちゃんの番だよ」
「……はーい」
牙やら骨やらを選び、投げた。骨は羊の踝らしい。牙は、聴き取れない名前の生きものの。
黒いマットの上に、白い牙と骨が落ちた。おお、と、歓声が起こる。
「トゥアフェーノだ」
「めずらしいな」
「おじょうさんのひとり勝ちだよ」
おお。なんか凄い役を決めたみたいだ。
骨と牙が一部重なって、積みあがっていた。残りの配置もぴったりだそうで、その回に賭けられていたお金は総取りだ。貝貨30枚と、銀貨が150枚くらい。
さて、これをどうやってすろうかな、と考えていると、怒鳴り声が聴こえた。
目を遣る。
ちんちろりんのテーブルだ。ウエイトレスさんが、ふたりがかりでひとりの男性を押さえ込んでいる。「はなせ!」
「お客さま、落ち着いて下さい」
「こちらでお話を伺います」
ウエイトレスさん達は有無を云わせず、「休憩室」のある廊下へのドアとは別のドアを開け、男性をそちらへ引き摺りこんだ。
別のウエイトレスさんがぱちんと手を叩く。にっこり笑顔だ。「お騒がせいたしまして、申し訳ございません。皆さま引き続きお楽しみください」
誰もなにも云わない。すーっと目を逸らして、賭けやお酒に戻る。
俺はウエイトレスさん達を見ていた。険しい表情で言葉を交わし、三人出て行って、別のふたりがどこからかあらわれる。
いかさましてた……のかな?
壁際でグエンくんとリェンくんが気分悪げにしている。近寄ってみた。「どう? 首尾は」
「……ああ、マオ。まあまあだよ」
「可哀相に」リェンくんがささやく。「あいつ、まともな状態で出てこれないぜ」
グエンくんがリェンくんのせなかを軽く叩いた。「リェン」
「さっきのひと、どうしたの、いったい?」
グエンくんは唇を噛みしめる。
「いかさまだと思う。女給が、あいつの懐から、さいころをとりだしてたから」