異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
「裁定者か?」
夕食時、まかないを食べているセロベルさんに訊いてみた。
クッキーを包む手を停め、ちらっと顔を上げる。「どういう能力なんですか?」
「決められた回数だけ、確実に答えの出る質問をできる」
……?
どういうこと?
俺はビミョーな顔になっていたらしく、セロベルさんは傍らの帳簿を取り上げる。
「今朝買ったほうれんそうは五把で幾らした?」
「エスター40個ですけど」
「じゃ、一昨日買ったベーコンは、100gあたり幾らだ?」
「……多分エスター20個」
「お前は買い出しをしたし、俺は帳簿をつけてるから、それを知ってる。ついでに、この帳簿を見れば、誰に訊くまでもなく答えが書いてある。だよな?」
当然だ。頷く。
セロベルさんは帳簿を置いて、パンを掴んだ。「じゃ、このパンの原料はどこ産の小麦だ? なんという名の人物がつくった? そいつの年齢、性別、能力値、特殊能力は?」
「そんなの解んないよ」
「裁定者なら解るんだよ。ま、勿体ねえからそんな質問しねえだろうけど」
??
ますますわからん。
テーブルに着いた。セロベルさんはパンをかじる。
「ねえセロベルさん、詳しく教えて」
「……旨いな、これ」
セロベルさんはごくんとパンを飲みこんだ。「裾野の味じゃねえ。どこでつくりかたを知った?」
「……」
「お前は、答えたくないか、答えられないか、だ。でも、俺が裁定者で、どうしてもその答えを知りたかったら、こう云えばいい。神さま、マオがどこでこの料理を学んだか、教えて下さい、ってな。そうすりゃ、回数上限に達してねえ限り、正しい答えが出る」
「……は?」
なんだそれ。チートじゃんか。
裁定者。神話では、文字通り、裁定をする神さま。
絶対に間違わない裁判官、みたいな感じかな。嘘を見抜き、すべてのことを知り、記憶している。
特殊能力の裁定者は、その神さまへの質問権。
ひとによって回数は異なるが、大体日に二回は神さまへ質問できる。そしてその答えは絶対に間違っていない。
いやチート。そんなんありかよ。
でも、メリットだけではない。
まず、裁定者は首長や裁判官になることが多いが、回数が限られている為質問を間違うと冤罪を生みかねない。常に極度のプレッシャとストレスにさらされ続ける。
ついでに、質問と答えは心のなかで完結するので、それが本当に神さまからの答えなのか、自分の願望なのか、が解らなくなり、気が狂れてしまう場合が多い。
さらに、開拓者は今どこに居ますか? など一部の質問は確定で発狂。どうやら神さまはきちんと答えをくれているようだが、うけとめきれなくて精神が崩壊するらしい。
「俺の何期か上の先輩に居たけど、素とはなんですか? って訊いて、直後に飛び降りて死んだ」
こっっっっっっわ!!