異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
俺が選んだのは、右だ。
まっすぐのびていると思った廊下は、すぐに曲がった。そして、傾斜がついていて、スロープみたいになっている。それを、転ばないよう注意して、くだった。
傾斜があるとただ歩くよりきつい。息が上がりそうになった頃、笑い声が聴こえてきた。
ふたごだ。俺は当たりをひいたらしい。
床が真っ直ぐに戻った。進行方向へ向かって左に、扉がある。なんかすーすーするけど……風?空気取りの窓かな。
扉はおもそうだし、ぴっちりしまっている。でも、その奥からふたごの笑い声がするのだ。つまり、居る。なら、リーニくんもここに居るのだろう。助けないといけない。
静かに開けようとした。けど、蝶番にまともに油をさしていないのか、きし、と小さく軋んだ。
だめだな。なら、先手必勝。当たらなければどうということはない!
けたたましく扉を軋ませて開ける。「ジュア、お前は来るなと……誰だっ?!」
俺は部屋へ滑るように這入りこむ。ふたごはチュニックとずぼんだけになって、髪を解いていた。かわりに趣味の悪い、顔の上部だけを覆う仮面をつけている。こいつまじ。こいつ。
飛びつこうとしたが失敗した。ふたごはされきやかみなりのようなうすのろではなく、機敏に俺を避けたのだ。開幕ぶっぱしか策のない俺は負けも同然である。やばい!
ふたごは持っている刃物を繰り出してきた。躊躇なくまっすぐついてくるのをのけぞってかわす。こいつはやい。くそ。
「ははは、食料のほうからやってきてくれたか!? お嬢ちゃん、ご馳走にしてやるよ!!」
うわー、俺が一番関わりたくないタイプの人間だ! 食人鬼じゃん!
両手をついて後転した。運動神経は死んでいるが、体のやわらかさはそれなりだ。反動つければ後転くらいできる。今なんてやらなきゃ死んでたんだぞ。死ぬ気でやりゃなんとかなるのだ!
ふたごは歯茎まで見せて笑った。「いきがいいじゃねえか! 生のままが旨そうだな!」
やべー、刺身にされる。踊り食いかも?
収納空間からとりだしたマントを投げつける。ふたごは魔法でそれを弾き飛ばした。くっそ。
ナイフ? メス? の攻撃を避けて後ろへ退る。偸利は目視だけでいい筈!
が、巧くいかない。「烙印!」火の塊がとんでくる。魔法をばんばん撃たれては、ふたごを目でとらえることも難しい。それに火の塊だから明るくて、目がくらんでしまう。
ナイフがとんできた。