異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない
あとはふたごだな。ふたごといってもひとりだし、なんとかなるだろ。
最悪、殺しちゃっても仕方ないってことにしよう。こちらが殺されかねない。
荒んでるなあ、と思いながら、フードを被り直し、部屋をでる。廊下をひたひたと進んで、雪だるまの頭の部屋へ這入る。
覗き込んだもう片方の通路は、すぐに四つ辻になっていた。
前、左、右。
どちらに進むにしてもまずい。間違えたら、ふたごと行き違いになって、されきとかみなりを解放されるおそれがある。一対一で不意打ちだから巧くいったのであって、三対一はいけない。無理だ。
と云っても、……。
「……あれ」
左へ延びる廊下は、微妙にカーブしていた。これだけほかと違うな。前はまっすぐだし、右もまっすぐだ。くそ、灯がついてたら見当もつくのに。
迷っている時間はない。リーニくんがふたごに食べられているかもしれないから、急がないと。
三対一になったら穢土しかねえな。ここ、一階だといいんだけど。
俺は息を吐いて、左の通路へ走りこんだ。
結果:失敗。
見付けたのは、階段。短いそれをのぼると、ふかふかのじゅうたんを敷いた、ホールに出た。左右にのびる廊下があって、どうも客室らしい部屋が幾つかある。
ひとつ、扉の閉まりきっていない部屋があって、覗くとヴェンゼくんがベッドに寝かされていた。ま、ヴェンゼくんを見付けただけでもいいか。
逃がすor隠れさせる。
逃がす、のは危ないかも。手下がいっぱいいたし、逃げる時はまとまってじゃないと、人質にとられたりしたら厄介だ。隠れさせよう。
と云っても、ヴェンゼくんも薬が効いていて、ぐっすりだ。うーん。
仕方ないので、ブランケットとクッションでヴェンゼくんが寝ているよう偽装し、ヴェンゼくんは衣装戸棚へ放り込んでおいた。うわぅ、えっちい下着がいっぱい吊ってある。これ着ろってこと? 冗談きついぜ。
商売柄仕方ないのかもだけど、サービスったって限度があるだろうよ。あんなん着なきゃなんないの? まじでメンタル鉄人じゃん。
チョコを口いっぱい頬張って、廊下へ出る。チョコの在庫がどんどん減っていく。はやくもとの世界に戻りたい!
廊下を駈け戻って、四つ辻まで来た。右? 前?
ふわっと風が頬にあたった。極くかすかで、一瞬だったけど、あたったのだ。
これに賭けよう。
風が吹いてきたほうへ、俺は走り出した。